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バッドエンドを避けるためには

「え?」


「この間、仲良さそうに話してたよね。君達が知り合いだなんて知らなかった」


「いえ、その――あのときは、たまたま会っただけで」


「たまたま応接間で会ったの?」


「……」


 確かに言われてみれば変だ。誰かに聞いてやって来たのならともかく、使ってるかもしれない応接間に普通は入ろうと思わない。あのときは、話し声が廊下まで聞こえていたのかもしれないと思ったが、少し違ったのかもしれない。


「ごめん。こんなことを言うつもりは……」


 その時、殿下の後ろに見えていた入口の看板に書かれている文字が目に入った。そこには、『Setoka Books』と書かれていた。


 ――セトカブックス。その言葉は、前世で聞いたことがあった。


(大変! こんなことをしている場合じゃないわ。今すぐ、ここを出ないと)


 ゲームの世界が、だんだん現実味を帯びてきたと思って油断していた。セトカでは、殿下ルートで必ずと言っていいほどイベントが起きる。なぜ今まで気がつかなかったのだろうと、自分で自分を呪いたくなった。


「殿下は、少しお疲れ何だと思います。家に帰ってゆっくり休めば――」


 そう言いながら殿下の顔を見ていると、殿下の顔がゆっくりと近づいてきた。殿下に嫌われるにはどうしたらいいのか考えていたのに、すでに詰んでいる――ラブメでは、主人公が王太子殿下ルートを選択すると、選んだ答えによって、トゥルーエンドとノーマルエンドとバッドエンドに分かれる。


 私は主人公ではなかったが、どうも様子がおかしい。ブックカフェのセトカが出てきたということは、おそらくノーマルエンドのルートに入ったということなのだろう。


 今の状況から考えて、もし私がノーマルエンドのストリートで進んでいるのであれば、一つ問題があった。ここで殿下のキスを拒否すれば、殿下は必ずといっていいほど闇落ちしてバッドエンドに切り替わる。


 拒否しなくても、この後ちょっとした問題が起きてしまうので、この状況で拒否するという選択を思いつかなかった私は、悶絶した。


「んっ……」


 殿下の顔を避けることができなかった私は、気がつけばキスをしていた。前世と今世を合わせても、キスは初めてだった。キスをされて呆然としつつも、私は殿下のキスを受け入れていた。


 生まれて初めてのキスは、甘酸っぱいレモンの味ではなく、紅茶の味がしたのだった。




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