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魔獣オキュロス

 翌週になって、私は再び殿下と二人で町へ視察へ来ていた。もはや、視察(イコール)デートみたいな雰囲気ではあったが、誰もツッコミを入れたりしない。


 今回の視察は、漁港で近くの港へ来ていた。埠頭の少し手前で、魚を売っているお店を覗いていると、船艇から悲鳴が上がった。


「オキュロスだ! みんな、逃げろ!」


「魔獣だ!」


「オキュロスだ!」


 蜘蛛の子散らすように逃げ惑う人々の合間をぬって、私は声の聞こえた方角へ向かった。殿下と手を繋ぎながら、声の聞こえた波止場に行き着くと、そこには海から這い出たと思われる大きめのタコがいた。


「タコ?!」


 オキュロスと呼ばれていた魔獣は、身体のヌメりを生かしながら、横滑りでこちらへやってくると、殿下へ顔と思われる部分を向けた。


「ウォーターバリケード!」


 オキュロスの口から出た黒い液体は、私が作った水壁に吸収されていった。水全体が黒く濁っていたが、私は黒い水を大きな水球にすると、オキュロスめがけて投げつけた。


「ウォーターショット!」


 魔獣オキュロスの黒い液体には毒素が含まれている。黒い自分の液体を浴びたオキュロスは、慌てて海へ飛び込んでいたが、先ほど漁師が海へ網を張っていたから、捕まるのは時間の問題だろう。


「ありがとう、レイラ」


 そういった殿下は私を抱きしめると震えていた。怖かったのだろうか――私は殿下の背中をそっと撫でると、落ち着かせるように言った。


「びっくりしましたね。今からセトカにでも行ってみますか? 甘い物でも食べれば、落ち着くかもしれません」


 セトカとは、視察の際によく行く喫茶店だ。月替わりで味が違うマドレーヌと美味しい紅茶を出していて、王都でも人気のある喫茶店だ。



 富裕層向けの喫茶店で料金が高めではあったが、2階に本が置いてあり、本を読みながらゆっくり出来ると町で評判のお店である。


「それなら、今日は予約を取ってあるんだ。後で誘うつもりだった」


「同じ場所に行きたいと考えているなんて、奇遇ですね」


「ああ、そうだな」


「殿下、本当に大丈夫ですか?」


 まだ気分が悪そうな殿下を支えて歩くと、私達は馬車に乗って喫茶セトカへ向かったのだった。




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