陰の立役者
翌日。アイラが急に私の元へ訪ねてきた。おそらくはミーアについての話だろう。しかしながら、こちらはオリバ先生の授業の他に、刺繍やダンスの授業など、日に日にやることが増えているのだ。相手をしている場合でもない。
──場合でもないのだが、悪役令嬢を学ぶいい機会だと思い直し、無理を言ってダンスの授業はお休みにしてもらっていた。
午後になって、アイラが私の部屋へ訪ねてくると、話は自然と聖女ミーアの話になった。ティータイムの紅茶を飲みながら、私はアイラの話を聞いていた。
「レイラ様、お手紙は届きまして?」
「ええ。昨日の夜、王太子殿下経由でいただきましたわ」
「彼女の行動力には、驚かされましたわ」
「ええ。私もアイラ様がミーアが聖女だというので、王太子殿下の目が覚めるのを待っていましたの。それが、まさか村人と婚約とは……」
「私も驚きましたわ。まさか、こうも上手く事が運ぶとは……」
「へ?」
「アイラ様、それではレイラ様に話が伝わりませんよ」
「分かってるわ、ベイン。ごめんなさいね。少し話を端折ってしまったわ」
いや、端折るも何も全然話が見えないんだけど――私は嫌な予感がしつつも、レイラ様の次の言葉を待った。
「いえね。婚約者の立場を代わってもらったレイラ様には悪いから、ミーアに、気になる男の子はいないのか聞いてみましたの。そしたら――え~コホン、工房で見習いで働いているトムが可愛いと言っていましたのよ。だから私が、トムにミーアのことを、どう思っているか聞いてみましたの。そしたらもう、水を得た魚のように距離がグングングングン縮まって」
「水を得た魚って、ちょっと違うんじゃ……」
いつも間にか、お見合いおばさんみたいになっていたアイラに、どん引きしながらも、何とか堪えてアイラの話の続き聞いた。
「二人は、お互いを意識し始めて、婚約者になりハッピーエンド。レイラ様はラインハルト様と結婚できてハッピーエンド」
(いや、勝手にハッピーにされても困るけどね)
「私はアイラ様がラインハルト様のことが好きで、魔術を使えないから自信がなくて身を引いたと思っておりましたの。まさか、他人の幸せのために、周りの恋を上手くとりまとめていたとは──本当の聖女は、アイラ様なのでは?」
「そんなことありませんわ。せっかくフラグ回避出来たと喜んでおりましたのに、そんなことで人生を棒に振ったりしませんわ」
アイラ様は、私に聖女と言われて狼狽えていた。こういう姿を見ると、本当に転生者で、悪役令嬢としての性格は欠片もないんだな……。と思った──こんな手の込んだことをしなくても、彼女が望めば、幸せになれたのではないかと思う。
「せっかくなので、アイラ様の考える今後の人生プランについて、聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」




