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神様の存在

「誰って──アウラ神?」


「お父様、お父様はアウラ神が言うのなら何でも信じるの? 世の中には、結婚しても幸せじゃない夫婦とか、好き同士でも身分差があって、結婚できない恋人とか、たくさんいるのよ。夫婦の数だけ、その愛の形があっていいと思うし、恋人の数だけ、それぞれの恋愛があっていいと思うの。私は貴族だから、すべて思い通りになるなんて、これっぽちも思ってないけど、私の幸せは私が決めるわ。自分が正しいと思う方へ進ませてもらいます」


「あ、うん。ごめん、ごめんな。余計なこと言って。そうだよな、レイラの幸せが一番だよな」


「そうだぞ、父上」


「王太子殿下でも、浮気したらぶん殴ってやる」


「フェル兄様、不敬罪になるから。お願いだから、それだけはやめて」


「レイラ、あなたのお父様が困っているわ。それくらいにしてあげて」


「お母様」


 病気がちで、普段あまり顔を見せないお母様も今日は出てきていた。今日は顔色がいいと思っていたが、お父様が泣きそうになっているのを見て青ざめていた。お母様のためにも、この話はこれくらいにしておいたほうがいいだろう。


「そうだわ、ちょっと早いけどティータイムにしない? 今、王都で流行っているお菓子のレシピを手に入れたのよ。料理人につくってもらいましょう」


「やった! お菓子」


「王都の、お菓子!」


 兄様達は、もともと食べるのが好きで、お菓子の話をしたら、随分と喜んでいた。だから浮かれていて気がつかなかったのだ──一台の馬車が、伯爵邸のロータリーに増えていたことに。屋敷へ入ろうとして、馬車から人が降りてきたことに私は驚いた。何故なら、その馬車には、ここにはいないはずの人間が乗っていた。


「で、でんか……」


 私は殿下が満面の笑みを浮かべてこちらへ歩いてくるのを見て、石のように固まり、そのまま崩れ落ち、自分を取り戻すのに暫く時間が掛かってしまったのだった。




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