ゲームの隠れキャラ
「あの人かしら?」
庭にオーバーオールを着て、腰まで伸ばした銀髪を一つに結わえて作業をしている人物がいた。女性のような容姿だが、実は男性で、主人公は男性だと知らずに近づき、いつの間にか相手と恋に落ちてしまうという設定だ。
(ミーアには秘密にしておかなくちゃ。というより、フラグを回避して、婚約破棄された後、ミーアが幸せになれる選択が出来るように、これはもう見守るしかないわよね)
私が窓の外を見ながら一人で頷いていると、窓と私の間に殿下の身体がすっと現れた。
「なっ……。びっくりした」
「何を見ているのかな?」
「何って――庭?」
「嘘は良くないね」
「嘘?」
そう言った殿下は、私の腕を掴むと自分の胸元へ引き寄せて、頬にキスをした。
「で、殿下!」
「なに?」
「殿下は療養中なんですから、ベッドで横になっていてください」
「ベッドに横になったら、優しくしてくれる?」
「する! します。しますから、戻って」
「はい」
ベッドに戻った殿下は、自分で自分の頬を指さしていた。どうやら、私はキスをおねだりをされているらしい。頬に熱が集まるのを感じながら、殿下の頬へキスをした。
「もう寝るよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
殿下の甘々な態度に驚いた私は、よろめきながら近くに置いてある椅子に座った。ゲームでは、好感度が上がってラブメータのメーターがいっぱいになり、メーターが振り切れた状態になると、攻略対象者は主人公に常に甘々な態度になるのだ。その代わり、少しでも浮気な態度をとると嫉妬に走り、束縛がひどくなったり、監禁されたりする。
キャラにもよるが、今の王子の態度はメーターが振り切れた態度に近かった。一体、いつの間にメーターが上がったのだろう? 治癒魔術を使ったせいだろうか? 疑問に思いながら部屋を出ると、城へ来ているはずのオリバ先生の元へ向かったのだった。




