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「知っていると思うが、昨日の夕方に教会で人が殺された」


 殿下の第一声に、その場の空気が凍った。私は深呼吸をすると殿下へ聞いた。


「その件は、王宮警備隊の方々がお調べになっているんですよね?」


 王宮警備隊とは、前世の日本でいう警察官みたいなものだ。街や国のために働く警備隊である。


「そうだ。でも、今回の事件は私達が探している石に関係しているのではないかと思ってね」


「殿下、どういうことですか?」


 リトッシュが前のめりになりながら、殿下へ質問をしていた。


「石を探しに行こうとしたら、転移陣が動かなくなったんだ。常識的に考えて、転移陣を動かせる陛下か魔術師団長か、オリバ先生が何かをしたと思うだろう? でも、おそらくそうじゃない」


「私も父上が、転移陣に何か手を加えたとは思えません。父は曲がったことが何より嫌いですし――第一、そんなことをしたら魔術師団をクビになるじゃないですか。そんな馬鹿なことをしませんよ、あの人は」


「私もオリベール魔術師団長の人となりは知っているつもりだ。だから、違うのではないかと思っている。でも、それはそれで転移魔術陣が動かなくなったことへの説明がつかない」


「ラインハルト様、もしかして他に魔術陣を動かせた方がいらっしゃったのでしょうか?」


「そうだと思う。分かっていて、動かないようにしたんだ。レイラ、夢の話は話しても大丈夫?」


「ええ、構いませんわ」


「先日、レイラが賢者セルスのお告げを聞いたんだ。確か……」


「全ての英知よ、集え。そして、全ての民の不安を取り除くために、潜在意識下で影響を与え続けよ。さすれば、この国の平和は保障されるだろう――ですわ、殿下」


「ありがとう、レイラ」


「どういう意味ですか? 殿下」


 リトッシュの言葉に、殿下は首を横に振っていた。


「分からない。ただ、洞窟に何かあるんじゃないかって話になって、この間はあの場所へ行ったんだ。そしたら、コンラッドがいて……」


「そうだったんですね。確かに私もコンラッドが出てきた時は驚きました。まさか、あんなところにいるとは――そういえば、コンラッドは呼ばなかったんですね?」


「それなんだ。コンラッド、もしくは理事長が何かを隠していると思う。そもそも、あの場所を王家が把握してなかったことも問題なんだ」


「確か、エスターク家が管理していると言っていましたね」


「それに、私は洞窟に賢者セルスがいることや、忘れ草のことも知らなかった。あとから説明されて――よくよく考えると、それもおかしな話なんだよ」


「でも殿下のために結界を強化したとか、言ってませんでしたか?」


「本当に私の為だろうか? 何か別の理由とか……」


「殿下、考えすぎですよ。そういうのは、疑いだしたらきりがありません。他のことも考えてみましょう」


「そうだな、リトッシュの言う通りだ」


 殿下は居住まいを正すと言った。


「教会で亡くなっていた男性だが、身元不明だということが判明した」




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