教会の人
「先生、どうしたんですか?」
私がオリバ先生に駆け寄ると、先生は震えていた。
「人が亡くなっています」
私達が中へ入ると、教会の白い服を着た男性がパイプオルガンの前に、血を流した状態で横たわっていた。先ほど私が話した男性に違いなかった。
「殿下?」
殿下は男性の様子を見て、近づいて脈を計っていたが、こちらへ振り返ると首を横に振っていた。
「だめだ。亡くなっている」
「そんな……」
「私は……」
「先生?」
「私は、レイラさんが言っていた音楽の話が気になって、様子を見に来たんです。そしたら、人が倒れていて……」
「オリバ先生が来た時には、亡くなっていたんですか?」
「分からないわ……」
私は亡くなった人の顔を見て、何とも言えない気分になった。顔はひどく青ざめているのに、口元は微笑んでいる。
「レイラ、私に話すことがあるよね?」
殿下の笑顔に、私は素直に謝罪した。
「ごめんなさい。私は気になって見に来ただけなんです。そしたら、教会が教員室に思ったよりも近かったから……」
「気になったって、あの暗号のこと?」
「ええ?」
「レイラは、どう思った?」
「潜在意識下で与えられるものが音楽ではないかと思ったんです」
「なるほど、音楽か。この人とは顔見知り?」
「さっき教会を覗いたときに、顔を合わせただけです。何故かため息をつかれましたけど……」
「レイラ様、何をして――って、殿下!」
ベイルは私の後をついてきて、息が上がっていた。
(若いのに情けない)
「若い?」
「レイラ?」
「その方って、お若いのでしょうか?」
「そうだね。そう見えるけど……。どうかしたの?」
「いえ、話していた時は50代くらいの人と話しているような感覚だったので」
「そういうこともあるんじゃない? 私もレイラと話している時は、年上の人と話しているみたいに感じる時があるよ」
「……」
(いや、前世から数えたら実際に年上だしね!)
「身元を確認しよう。この部屋の中に他に人はいるのかな?」
「いいえ、いないと思います。私が叫んでも来たのは殿下とレイラ様だけでしたし、基本的に教会には一人しかいません」
「一応、奥を確認してみよう。誰もいなかったら鍵をかけて、この部屋を閉めます。私から王宮警備隊に連絡しますので――オリバ先生、鍵をお願いできますか?」
「分かりました。教員室から鍵を取ってきます」
オリバ先生は教員室へ鍵を取りに行くと、戻ってきて教会の扉に鍵を掛けていた。
「レイラ、送って行きたいところなんだけど、城へ連絡しなければならない。一人で帰れる?」
「ええ。ベイルに送ってもらいます」
「ベイル、よろしく頼む」
「はっ、承知いたしました」
ベイルが殿下に敬礼すると、殿下は足早にその場を去って行った。
「フィリップは、一緒に来てないのかしら? 何か用があって教員室へ来ただろうに、殿下も大変ね」
「レイラ様、帰りますよ」
「分かったわ。お願い」
私はため息をつくと、鞄を持ってきてくれていたベイルに礼を言い、寮へ帰ったのだった。




