ゲームの内容
タイミングよく部屋へ現れたベイルは、用意されていた客室へ案内してくれた。
「なんか、お腹が空いたわね」
「何か食べる物がないか、調理場へ行って聞いてきます。あったら、サンドイッチと紅茶で構いませんか?」
「こき使って悪いわね、ベイル。いつもみたいに多めにお願い」
「承知いたしました」
ベイルが下がって行くと、私は窓際に置かれている机の椅子に腰掛けた。
「それにしても、なんで……」
なんで今、主人公である聖女が出てきたのだろう。見た目から判断して、彼女は私と同い年の8才である可能性が高い。ゲームでは同い年の設定だったし。
(さっきの様子からして、彼女も転生者の可能性がありそうね)
「失礼いたします。サンドイッチと紅茶をお持ちしました」
ベイルの持ってきた紅茶からは、いい匂いが漂ってきていた。
「ありがとう──これ、いつもの。悪いんだけど、今日は一人で食べたいの。隣の部屋を使ってもらえる?」
「かしこまりました。いつも、お気遣いいただき、ありがとうございます」
普通は主人の食べ残しを使用人へ分け与える習慣があるのだが、私は食べ終わったものを人にあげるのも変だと言って、食べるものを食べられる分だけ取ると、いつも使用人へ渡していた。これは、前世で私が過ごした環境が影響しているのかもしれない。食べ物を残すという事を考えられなかった私は、こんな事でこの先やっていけるのだろうかと、不安になった。
「何かございましたら、いつでもお声かけくださいませ」
「ありがとう、ベイル」
ベイルが部屋から去ると、再びゲームのことを考えていた私だったが、ふと思いだした事があった――本屋で出会った魔術師団長の息子のリトッシュ、病に冒された殿下を光魔術で治す。どちらも、ゲームの主人公が攻略対象者と行うゲームのイベント内容だ。
どうしてモブである私が、主人公のイベントをこなしているのか……。私は5年後に婚約破棄される予定なのだから、攻略対象者の好感度を上げても意味がない。
「うーん……」
もし、悪役令嬢のポジションと入れ替わっているのあれば、断罪されるのを全力で阻止しなければならないと思っていた。それもあって、今回の王都からの依頼を受けたのだ。
会わないという選択肢もあったが、それだと何かあった時に罪をなすりつけられ、断罪される可能性が高い。
貴族には狡猾な人間が多い。辺境地――つまり、田舎で暮らしている私達と王都では感覚が違う。田舎貴族が、王都に出てきて一日で干されたという話は珍しくなかった。
「考えても仕方ないか」
私は自称聖女のミーアを引き留めてもらっていた。農作物の収穫があるからと言って、すぐに村へ帰ろうとしていたミーアには、聞きたいことがあった――実は、転生者ではないかということを。




