潜在意識下
翌日は朝早くに目が覚めてしまい、私は部屋の中で殿下から借りた本のリストを眺めていた。
(何かあると考えるからいけないのかしら……)
「消去法で考えてみる――とか」
(あの部屋はエスターク家が管理していて、何か隠されていると思うからいけないのかもしれない)
「必要性を感じない本が置かれてる。でも、必要性がないと思っているのはわたしだけ? 何もないものに、意味を見い出そうとするからいけないのかしら?」
(何もない……。本当に?)
私は考えるのを諦めて、支度をして学校へ向かったのだった。
※※※※※
「おはようございます。レイラお嬢様」
「おはよう。ベイル」
最近、ベイルは校舎の入り口で待つようになっていた。以前は寮の前で待っていたのだが、女子生徒の視線に耐えかねて校舎で待つようになったのだ。
「レイラ様。大丈夫ですか?」
「どうして?」
「昨日の課外授業ですよ。ショックを受けたように見受けられたので……」
ショックを受けたのは本当だ。まさかオリバ先生が洗脳されていたとは思わなかったのだ。
「崩落事故でケガをした人がいるかもしれないと考えると、いたたまれない気分になるわ」
「そうですよね」
私は適当にごまかすと、校舎の中へ入り教室へ向かった。
『――全ての英知よ、集え。そして、全ての民の不安を取り除くために、潜在意識下で影響を与え続けよ。さすれば、この国の平和は保障されるだろう』
(潜在意識下で与えられるものって何?)
私は潜在意識下で与えられるもので、サブリミナル効果以外のものを考えていた。
(音楽とか、ふだん目にするものかしら?)
そこまで考えて、私は音楽室以外に音楽が聴ける場所を思い出した。
(教会!)
私は入学式で聞いたパイプオルガンを思い出していた。定期的に音楽を流しているというから、その音楽が原因の可能性もあるだろう。
「レイラ様、おはようございます」
「アイラ様、おはようございます」
机に座って考え込んでいると、隣にはいつの間にかアイラが立っていた。
「どうかしましたの? 難しい顔をして」
「いえ。この間の崩落事故のことを考えていましたの」
崩落事故のことを考えていたのは本当だ、私が曖昧な笑みを浮かべると、アイラはすぐさま同情するような顔つきで頷いていた。
「あの事故で大怪我をした人がいなくてよかったですわね。軽傷者は何人かいたようですけど……」
「そうでしたの。途中で帰ってしまったので気になっていたのです。教えていただき、ありがとうございます。アイラ様」
「また今度、お店へ偵察に行ってみましょう」
「そうですね、また街へ偵察に行きましょう」
私達は笑い合うと、それぞれ席に着いたのだった。




