本のリスト
「殿下?」
「すまない。レイラに意見を聞きたくて、こちらへ来てしまった」
次の日の放課後。殿下は私の教室へ来ていた。フィリップも一緒にいる。
「いいえ、大丈夫ですわ」
「レイラ様、私はこれで失礼いたします」
「アイラ様、また明日」
「ごきげんよう、レイラ様」
「ごきげんよう」
教室に残ってアイラ様の新しい事業の話を聞いていたが、私達に遠慮したのか、アイラは寮へ帰っていった。アイラが帰ると、殿下は教室へ入ってきて私の前の席に座った。
「すまない。話し中だったね」
「大丈夫です。とりとめのない話でしたし、また明日話せますわ」
アイラが新しく開くブランドショップの話をしていたのだ。一日や、そこらじゃ話は終わらないだろう。
「殿下。手にしている書類はなんですの?」
「ああ、これについてレイラに意見を聞きたくて、ここへ来たんだ。フィリップ、頼めるか?」
「承知いたいしました」
フィリップは教室の扉を閉めると、扉の前に立っていた。殿下が懐から四角い魔術具を出して防御結界を張っていた。
「内密な話なんですね?」
「いや――そうでもないんだが、誰かに聞かれても困ると思ってね。この書類は、洞窟にあった本のタイトルをリスト化したものなんだ。コンラッドに聞いたら理事長室にあるものを持ってきてくれてね」
「タイトルをリスト化? あの洞窟に、どんな本が置かれているのか確認ができるのですか?」
「そうなんだ。そうなんだけど……」
「見せていただけますか?」
私は殿下から書類の束を受け取ると、タイトルを確認した。
「この国成り立ちとか――歴史書が多いんですかね? あとは伝記でしょうか? 各地を回った紀行の本とか……」
「レイラ、これを見てどう思う?」
「どうって――洞窟を荒らした人は、目当ての物を見つけられずに立ち去ったということでしょうか?」
「本当に、そうだろうか? あの場所で本を探していたのなら、荒らす必要はなかったんじゃないかな?」
「あ……」
確かにそうだ。盗むつもりなら、目当ての本だけ取り出せばいいだけだ。荒らす必要はない。しかも、あれだけ本があるのだから、一つくらいなくなっていても、しばらくは気がつかないだろう。
「意味が分からないですね」
「でも、洞窟の中にいるセルスは、私達に本の存在を気づかれたくなさそうだった」
「そうかもしれません。夢の中のセルスは、答えの半分があると言っていましたが……」
「夢の中で、セルスの言っていた言葉って覚えてる?」
「ええ。確か――全ての英知よ、集え。そして、全ての民の不安を取り除くために、潜在意識下で影響を与え続けよ。さすれば、この国の平和は保障されるだろう。だったと思います」
「全ての英知よ、集え――か。そんなに賢い人を集めて、セルスはどうするつもりなのかな?」
「ラインハルト様、英知とは賢い人とは限らないのではないでしょうか?」
「え? どういうこと?」




