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盗難騒ぎ

 次の日の放課後。私と殿下、コンラッドとフィリップ、それからリトッシュとベイルは再び洞窟の先にある部屋へ来ていた。もちろん井戸からではなく、物置の扉と階段を使ってである。


「なんだこれは……」


 洞窟の部屋に繋がる扉を開けると、そこには本が散乱していた。コンラッドが扉を開けた状態で立ち止まっていると、リトッシュが前へ出て床に散らばった本を眺めていた。


「コンラッド、昨日帰る時は何もなかったよな?」


「ええ、何も――おかしなことはありませんでした。何が盗まれたのでしょう。盗まれるような資料は、なかったと思われるのですが……」


「でも、貴重なんじゃないか? エスターク家がずっと管理していただろう?」


 殿下の質問にコンラッドは眉を顰めていた。


「はい。ここに置かれている巻物や本は、国の指定文化財に登録されています。ですが、半分以上が城に保管されている本と同じものです。古い物も、珍しいのは家系図と昔使われていた表記ぐらいで、転写されたものが王立図書館に保管されています」


「ますます意味が分からないな。ここを荒らしたのは誰なんだ?」


「殿下。昨日はそのまま帰ってしまいましたが、井戸から入って来れるようになってしまっていたので、学園の生徒なら誰でもここへ入ることが出来たと思われます」


「全校生徒が容疑者か――それはそれで問題だな」


「とりあえず、片付けよう」


 リトッシュの言葉に、考え込んでいた殿下以外の人達は本を棚へ戻していった。


「やはり意味が分からない」


「ラインハルト様……」


 考え込んでいる殿下へ声を掛けると、殿下は顔を上げて微笑んだ。


「すまない。少し考え込んでいた。それで、何かなくなっていたものは?」


「何もありませんでした」


「え?」


「殿下、小動物か何かが部屋の中へ入った可能性はないでしょうか?」


「それは、ないと思う。結界が張られているから、誰かが持ち込まない限り、中へは入って来れないはずだ」


「……」


「もしかして、答えを知られたくなかったセルスの仕業?」


「セルスはホログラムだろう? そんなこと出来るはずがない」


「もしかして、困っている私達を見て、陰で嘲笑ってるとか? もしくは私達を陰で笑うために、わざとこんなことをした?」


「そいつは性格悪いな」


「もしもの話よ」


 リトッシュの合いの手にため息をつくと、殿下が言った。


「コンラッド、何か思いつかない?」


「すみません。私には何も……」


「いや、いいんだ。困らせて悪かったね。いったん校舎へ戻ろうか」


 その後。私は壁画があった場所に土壁を作り、井戸側から侵入できないようにして部屋を出た。元気のないコンラッドの様子が気になったが、その日はそれでお開きになったのだった。




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