劣化防止の魔術
部屋へ戻ったコンラッドは、本や巻物の点検とした後に劣化防止の魔術を掛けていた。
「劣化防止の魔術なんて珍しいわね」
「この魔術は、代々コンラッド家に引き継がれる魔術で、王家にも秘匿されているんです。物に対してしか使えないんですけど」
「父上も知らないのか……」
「たぶん、陛下はご存じだと思います。エスターク家の掟では秘匿しなければならないとなっているのですが、父上が陛下は知っているって言ってました」
「そうなのか?」
「たぶん、そうだと思います」
戸惑いながらも、コンラッドは殿下の言葉に答えていた。
「今日は、もう締めますね。明日は、ここへいらっしゃいますか?」
「そのつもりだ」
「承知しました。父上にも、そのように伝えます」
「よろしく頼む」
コンラッドの作業が終わると、奥の扉を開けて階段を上り、階段の上にあるドアを開けた。そこは、中庭にある物置の中で、更にその奥の扉を開けると外へ出た。
「もしかして、ドア自体に転移の術式が掛けられているのか?」
殿下の呟きにコンラッドが答える。
「そうなんだと思います。私も驚きました。てっきり物置の先にある空間だと思っていましたので」
コンラッドの言っている意味はよく分かった。ドアには転移魔術が仕込まれているように見えなかったし、外からは物置の先に部屋があるように見えるので、その先の空間の地下にあるとコンラッドが思ってしまったというのも納得だった。
「レイラ、途中まで一緒に帰ろう」
「はい、殿下」
私達は挨拶を交わすと、寮へ戻ったのだった。




