キースとの出会い
その日の夕方、私達は実家のある辺境伯爵領へ着いた。いつもはお迎えがあるはずなのに、何故か今日は誰もいなかった。
(誰もいないなんておかしい――また、何かあったのかしら?)
私が窓から顔を出すと、ベイルに止められた。
「レイラ様、私が見て参ります。レイラ様は馬車の中にいてください」
「私も行くわ。もし、見えざるものがいるのだとしたら、ベイルだけじゃ倒されてしまうもの」
「申し訳ありません」
「謝ることないわ。私だって、先生や殿下たちと一緒に戦って、やっと勝てた相手なんだもの。ベイルが気にする必要はないわ」
「そう言っていただけると――ですが、早くレイラ様をお守りできるように日々の研鑽は怠らないようにします」
「これ以上? 素晴らしいわね」
「恐れ入ります」
私のお世話をしながら、努力を続けるなんて私には出来ないと思った。ベイルの底知れない努力に私は驚きつつも、彼に見合う主人になれるだろうかと思った。
「私も頑張るわ」
「その意気です、レイラ様」
そんな話をしながら馬車を降りると、目の前には庭師の格好をした銀髪の青年が立っていた。青い瞳に吸い込まれそうだ。
「え?」
「おかえりなさいませ、お嬢様」
彼は私に対して一礼をすると、一歩下がった。
「誰なんだ、君は? 屋敷の使用人に君のような者はいなかったはずだ。もしかして、暗殺者か?」
「あの、えっとその――私は……」
「ちょ、ちょっとベイル……」
彼の容姿に既視感を抱いていたが、ふと思い出したことがあった。
「あなた、もしかして城にいた庭師の息子のキース?」
「はい……」
「レイラ様、知り合いですか?」
「いいえ。話に聞いただけよ」
その時、屋敷の正面玄関の扉が開いた。
「ユン兄!」
「レイラ、久しぶり。どうしてここに?」
「どうしてって……。手紙に帰省するって書いたと思うんだけど」
「手紙は届いてないよ。そう言えば、郵便が遅れてるって父上が言ってたな。ほら、この間の事件で検閲とか――色々と、取り締まりが強化されたんだよ」
「急に帰ってきて大丈夫だったかしら?」
「問題ないさ。おかえりレイラ」
「ただいま、ユン兄」
私はユン兄と挨拶の抱擁をしたのだった。




