夢の中での賢者セルス
馬車を降りると、そのまま宿へ向かった。いつもの宿で手続きを済ませると、私達は宿の最上階にあるスイートルームへ泊った。
「この部屋が空いていて良かったです。ここなら、次の間に控えていることも可能ですし」
「私のことはいいから、ベイルも休んでよ」
「はい」
ベイルは満面の笑みで答えていたが、たぶん徹夜するのだろう。『次の間』とは、執事が控えていることの出来る小部屋で、大部屋と繋がっているがプライベート空間とは異なり、私に何かあった時にすぐに対応できる部屋になっている。
「レイラ様、おやすみなさい。何かあれば、遠慮なくお申し付けください」
「ありがとう、ベイル。おやすみなさい」
既に夜も更けており疲れていたので、私はそのまま寝ることにしたのだった。
※※※※※
その日の夜、私は夢を見た。賢者セルスの夢である。セルスの知能を持った洞窟の中にいるセルスは、私の近くへ来ると言った。
『――全ての英知よ、集え。そして、全ての民の不安を取り除くために、潜在意識下で影響を与え続けよ。さすれば、この国の平和は保障されるだろう』
「え? 何ですって?」
『洞窟の中に、答えの半分はあるじゃろう』
「答えの半分? どの答えかしら?」
『それは、自分自身の胸に聞くがよかろう』
「え?」
『さらばじゃ』
「どういうこと?」
そこで夢は終わり、目が覚めたのだった。ベッドから起き上がると、私はダイニングの隣にあるリビングへ向かった。
「おはようございます。レイラ様」
既にベイルは起きており、朝食の準備をしていた。テーブルに並んだ料理はどれも美味しそうだ。
「おはよう、ベイル」
日の光が窓から差し込んでいた。焼きたてのパンと淹れたての紅茶のいい匂いが部屋に満ちている。
「美味しそうね」
「ええ。準備が出来次第、宿を出ますのでレイラ様は召し上がっててください」
「ありがとう、いただくわ」
ベイルに椅子を引かれて腰を掛けると、私は数分でパンを平らげた。令嬢らしからぬ振る舞いに、ベイルは呆れつつも見て見ないふりをしていたのだった。




