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休学届

「殿下……」


「レイラ」


「私、休学届を出してしまいました」


「え?」


 殿下は驚いていた顔をしていたが、私は構わずに話を続けた。


「休学届が一度受理されてしまうと復学まで二週間かかるそうなんです」


「レイラ、もしかして旅をするから休学届を出したの? 早くない?」


「そうなのですが……。こういうものは早めに出した方がいいと思って、次の日の朝に提出してしまったんです。しばらく学校へ行けないので、一度実家へ帰ろうかと思ってるんですけど――この間、ゆっくり出来なかったので」


 私は実家に帰ってから村人たちが行方不明になり、村人達を救出したことを思い出した。


「レイラ、休学中でも学校には通えるんじゃないかな? 出席日数に数えられるかどうかは分からないけど」


「殿下、物理的に入れないんですよ……」


「え?」


「理事長が、殿下が結界の張ってある城でも襲われたという話を聞いて、殿下が入学する前に、更に校舎に結界を張ったみたいでして――校舎の一部は、二重三重の結界が張ってあるみたいなんです。ですので、休学している者や関係者以外は校舎に立ち入ることが出来なくなっているんですよ」


「嘘だろう……」


 殿下はそう言うと、私の手を握って見つめてきた。


「学園にいれば、安全なんだ。あの土地へレイラが行くなんて心配だよ」


「あの土地って言っても、私の実家ですし――みんなで封印しましたし、大丈夫ですよ。それは、殿下も見ていらしたではありませんか」


「そうだね。ただ、君が傍にいないと心配なんだ」


「学園の結界は、賢者セルスが作った強固な結界なので、心配ありません。私には魔術があるので、もしもの時でも大丈夫ですよ。殿下の傍には、フィリップ様がいらっしゃいますし……」


 ちなみにフィリップは、私達の三歩後ろで控えていた。何がおかしいのか、フィリップは俯いて笑いを堪えているようだった。


「そうだね。では、なるべく早く帰ってきて欲しい」


 殿下の懇願するようなライトブラウンの瞳に見つめられて、私は無意識のうちに頷いていた。


「よかった」


 殿下はそう言うと、私を抱きしめて頭を撫でていた。フィリップがいたので恥ずかしくて腕の中から抜け出そうとすると、殿下はさらに強く抱きしめてきた。


「だめ。もう少しこのままでいて」


 頬が熱くなるのを堪えて、私は殿下の腕の中で大人しくしていた。無理を言っている自覚があったので、私は殿下を慰めるように抱きしめ返した。


「早く帰ってきてね」


「分かりました」


 殿下は身体を離すと、私の額にキスをして微笑んでいた。




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