3 魔女襲来
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「グラントリー殿下っ?グラントリー殿下っ?どこに?ああ、こちらでしたの?」
わあ、ピンクのドレスがひらひらが近づいて来る。レースとフリルがわっさわっさと揺れてる。ピンクのこれまた大きな宝石をこれでもかと身に付けた貴婦人が現れた!!彼女の後ろからはメイドさんと侍従さんが「お待ちくださーいっ!!」とか言いながら追って来てる。大変だなぁ……。
お城のお庭でグラントリーとお茶を飲んでた時の事だった。
「げっ!マージョリー王女殿下?何故ここへ?」
「あ、この方がグランの婚約者の」
けっこう若くて綺麗な方だというのが第一印象だ。六十六歳には見えないかも。
「違うって言ってるだろ、スイレン!俺の婚約者は君だ!」
「酷いわっ!グラントリー殿下!」
涙を浮かべてグランを見るマージョリー王女殿下。おしろいが流れ落ちてきているのにハラハラしてしまう。
マージョリー王女殿下は私をキッと睨みつけ指を差した。
「この泥棒猫っ!!」
えええ?まだ婚約して無かったんですよね?それは言いがかりなのでは?そう言おうと口を開こうとしたんだけど。
「私とグラントリー殿下をかけて勝負よ!」
え、面倒だなぁ……。
「ちょっとスイレンさん?そんな面倒そうな顔しないでくれます?」
グランが情けない顔で手を組んで見てくる。助けて欲しいってこと?仕方ないな。一宿一飯の恩だよね。
「どちらがより多くこの国の水源を復活されられるかの……」
「あ、それなら……」
私は立ち上がり祈りを捧げる。地下の水脈に。水の神様に。あ、これって……。原因分かったわー。
「はい。もう終わりました。もう大丈夫ですよ」
「へ?」
「スイレン?」
私は座り直すとまたお茶をいただいた。
「もう大丈夫だと思います」
グランは立ち上がり、控えていた侍従に確認するように命じた。
「そ、そんな馬鹿な……こんなこと起こるはずが……」
マージョリー王女殿下は何ごとかに気が付いたようにハッとした表情を浮かべた。
「どなたかが、術をかけてこの地の水の神様とのご縁を分断したみたいですねぇ。一体どなたでしょうか?」
私はチラリと、マージョリー王女殿下を見た。綺麗だったはずの肌にしわが浮かび、その表情は青ざめて脂汗が浮かんでる。
「呪いのような術ですね。まあ、私が跳ね返しておきましたのでそのうちに術者に戻っていくでしょうね」
慌てたようにこの場から逃走するマージョリー王女殿下。どんどん顔のしわが増えてってるようだ。水源の力をご自分の美貌の維持に使ってらしたのね。
「どういうことだ?スイレン」
私はグランに気が付いたことを説明した。
「自作自演ってことか。一体何のために」
「グランのこと凄く好きだったんじゃない?」
「え?」
「そこまで嫌そうな顔をしなくても……」
「じゃあ、君ならあの年齢の男に迫られてもいいのか?」
「……それは嫌だけど」
「だろ?そもそも俺には昔から好きな女の子がいるからな」
「え?そうなの?」
誰だろ?私達は幼い精霊で物心つく頃から一緒にいるけど、そんな様子は無かった気がする。あ、人間の女の子かも!そしたら知らないのも納得だわ。
「…………とにかく、ありがとうな」
グランは私の指にそっと口づけた。一瞬胸がドキンとしたけど、確か、指先へのキスは感謝とか賞賛だって本で読んだわ。思い出して私はちょっとだけがっかりした。
それから一週間程で国内すべての水源が復活したとの報告が揃った。はあ、これでお役御免ねって気楽に構えてたんだけど、グランが婚約は続行だって言った。
なんでよ?
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