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らしい生き方

3話目です。ありがとうございます。

 今日の依頼は大して難易度の高いものではなかった。だからだろうか、連携が取れていなかった気がする。


 否、今日に限った話ではない。

 最近皆からは、心ここにあらずといった感じが伝わってくる。


 前回から1年以上、『追い出し』が無いのと何か関係があるのだろうか。いや、そんなもの普通は無いはずなのだけれどね。

 とはいえ無ければ無いで少し寂しいものである。


 私の考えすぎか?


「ジゼル、この後良いか?」

「うん?あぁ、構わないよ」


 遂にきたか?と僅かに心躍らせたものだが──これがどれだけ愚かだったのか、私はそれをすぐに知ることになったのである。


「済まないが、ジゼル。パーティはお終いだ」


 いつもと違い、物腰が低い。

 狼狽える私を置いてオッサムは話を進める。


「今回はちゃんとした理由もある。君はこんな田舎街にいるべき人間ではない。これは、俺たち3人の総意だ」


 待て待て、いや待て、待ってくれ。


「そ、んな。私は望んでここにいる、だけだぞ」


 いつもの本心ではないような雰囲気とは違う。

 その事実に動揺を抑えられないが、なんとか言葉を振り絞って抵抗する。


「この際だからわたし達も腹を割って話すわ。ジゼル、これは3年前から考えてたことよ」

「な……」

「本当に覚悟ができたのはつい最近だけどね。あなたには王都のような大きな場所で生きて欲しいの。こと魔法に関してはエキスパート……こんな場所で終わってはいけない」


 確かに私は特1級戦闘魔法資格を持っているが、そんなものは趣味で取っただけのものだ。

 必要ないならそれで構わない。端から活かそうなんて思っちゃいない。


「あんなもの!私にとってはただの紙切れだ!それ以上の価値は、無い」

「その紙切れを取得できる人が1年に1人居ないのも、王都の組合から移籍依頼が来てるのも、わたし達は知ってるわ」

「やめてくれ」


 私にとって価値のあるものは、資格でも、組合からの評価でもなんでもない。ただ一つ、この面白おかしい、冒険者としての生活だ。


 私の幼い頃、家出をしてその先で出会ったのが彼らだ。結局連れ戻されてしまったが、私はただ一つ、その時にした約束を一度も忘れたことはない。

 4人共に冒険者になること。


 そのためだけに私は魔法を学んだ。役に立つかもしれないと資格を取った。

 そして6年前、再び家を出た。今度は家名も捨て、ただの『ジゼル』としてここに戻ってきた。


「皮肉なことだ。約束を果たすための努力が、ようやく掴んだ夢を壊すことになるなんて」


 何のために生きてきたのか。

 彼らは私のことを思って言っているのだろう。

 それはよく分かる。だからこそ、恨むことはできない。そして悲しく、苦しい。


「3年前から、か」


 その時に言われていたら、心置きなく行けただろうか?

 無論、否である。10年の準備を経て、ようやく掴んだ3年だった。その1日1秒は、重く尊い。

 そしてその上に積み重なった残りの3年も、より重くのしかかる。


「そうなのか」


 本当に覚悟ができたのは最近、か。私が断る度、安心したような表情をしていたのはそういうことだったのか。


「今、なんだな」


 分かっていたさ。

 気づいていたさ。

 彼らには彼らの、この街での役割がある。


 オッサムにはこの街の工房、その跡取りとしての役割。

 カーパには商人の夫を補佐する役割。

 フレイルには、この街に唯一ある診療所の跡取りとしての役割。


 そしては私にはなにもない。

 この街に、私の居場所はもとより無い。


 知っていたさ。


 そこから勝手に目を背け、自分に付き合わせ続けたのは自分自身だ。

 感謝こそすれど、彼らを恨むことなどできるはずもない。


 幼い夢は、今ここで終わるのだ。

 そう、諦め──


「──嘘つき」


 カーパだった。


「頭きた。本心なんて、オッサムもフレイルも、どっちも話してないじゃん。何であんなに回りくどいやり方をしたのか、とか色々と。それじゃ狡いって話だったでしょ!」


 もう良いんだよ。

 私が出て行く行かないの話で3人が険悪になる方が、よほど苦しい。


「……フレイルだって、特級冒険者薬学資格取ってるよね?前にオッサムが、妹をダシにしてジゼルを留めようとしてたのは?ジゼルも言いたいことあるんでしょ?だったらこの際、全部話していけよ!」


 清々しいほど全部バラしてしまう女だ。


「……俺から話すよ。ああやって追い出してしまおうとしたのは俺の意見だった。多分、ジゼルは全部素直に話しても残っただろうし、そうじゃなくても死ぬほど負い目とか感じるタイプだろ?それならいっそ嫌われて、恨みでもなんでも抱えて行って貰ったほうが、向こうでも楽しめると本気でそう思ってた」


 恨みなど、抱えるものか。

 16年前のあの時から全て、私の大切な思い出。


「それでも、ここで楽しかった思い出を、最後に壊しちまうのは忍びなくて大事で仕方なかった。それで本気になれなくて、いっそ無理矢理にでも場所を作れば、とか余計なこともしちまった。……済まなかった」


 この1年、何もないと思っていたが、恐らく裏ではずっとこの件について話し合っていた結果がこれなのだろう。いや、正確には3年以上前からか。


 不器用だと思う。

 気が付かないふりをしていた自分も、そんなやり方を通そうとした3人も。


「次!フレイル」


 そしていちいち君は雰囲気をリセットしてくるね。

 集合時間に3分遅刻したときくらい怒っている。


「わたしは、無いよ」

「嘘つけーい。特級冒険者薬学資格は必要ないよね?ここに居続けるつもりだったなら冒険者は辞めなきゃいけない。それに、この1年で妹に治癒魔法を叩き込んだのは何のためだったの?」

「ぅ……」

「隣に立つ努力を、やれるだけ全部やったなら堂々としたら良い」


 話が掴めない。

 が、フレイルはこちらへ近付くと、真っ直ぐ私の目を見て一言。


「好きです。」

「………………っ?」


 何を……言っているのだろう?この子は。

 いや、これに関しては気が付かないフリとかではない。大マジのマジで知らなかった。

 だからカーパは目で「なんか言ってやれよ」とか「こっち見んな、フレイルの方見ろ」とか訴えてくるのは勘弁してほしい、本当に困惑が止まらないのだ。


「16年前のあの日から好きでした。ジゼルがわたしのことそういう目で見てないのも知ってるけど、付いていくから」

「っはい」


 おいそこ2人、甲斐性が無いとか言うな。

 主にオッサム、お前にだけは言われたくない案件だぞ。


「だが、既婚者だ」

「やめろ」


 だが、3人とも満足気だ。

 最初からこれで良かったのだろう。


「私からは一つ、2人共!たまに帰ってくること!以上!」

「短っ」

「ここで全部話したら、次帰ってきたとき話すこと無くなるでしょ、そういうこと」


 完全にオカンである。

 そして私たちは王都行が決定しているらしい。

 だが、まぁなんというか……。


「うん。こっちのほうが面白おかしいや」


 端から、悲観する必要などなかったのだ。

 疲れたならまた戻ってきたらいい。毎日顔を合わせていたのが、少し伸びるだけ。

 何より、私たちらしいと、そう思うのだ。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。これにて完結となります。

思い付きで書き始めたため今のところ、この先を投稿する考えはございません。ありがとうございました。

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