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7系列会社の支店です

 私こと上柳千代子は、今系列会社の支店の前に立っています。ここの近くまでは、家の運転手さんに送ってもらいました。さすがに会社に出社するのに送り迎えはまずいですよね。ということで近くまでです。護衛を兼ねている運転手さんには申し訳ないことをしました。

 

 昨日ここに来るということを知って、少し会社を調べました。ここは、清徳グループの系列会社でも端の様です。ここは、市から委託された水道管理会社でした。この会社の本社は、もっと都心の近くにあるのですが、ここは支店です。

 もともと市の施設だっただけあって、建物はコンクリート三階建てのしっかりした作りですが、ずいぶん古い建物です。

 たぶんこんなに郊外で、系列会社の支店だったら絶対に来ないと踏んだんでしょうね。確かに以前の私だったら絶対に来ていないと思います。

 ですが、前世零細企業の町工場で働いていた私をなめてもらっては、困ります。コンクリート造り上等です。なんせ前世の家の工場ときたら、トタン屋根で雨漏りは日常茶飯事でした。台風の時には、家族総出で屋根にビニールシートで覆いをかけたものです。


 私は、意気揚々と会社に入っていきました。


「初めまして、柳千代子と申します。今日からこちらで働かせていただきます。よろしくお願いいたします」


「ああ、よろしくね」


 ここには、受付嬢という人はおらず、会社に入るとすぐにカウンターがあり、カウンターの向こうにはいくつか机が並んでいます。目があった人が、受付をする仕組みの様です。私の対応をしてくれたのは、人の好さそうなおじさんでした。

 

「ちょっと待っててね」


 おじさんは、すぐに自分の机に戻って何やら書類を探しています。


「ああ、これか。お待たせ」


「はい」


「柳さんだね、これからよろしくね。柳さんはっと、そうそう二階のメーター検針部門だったかな。今案内するからね」


「はい」


 そういっておじさんは、事務所の階段を上がっていきます。階段を見る限り、この建物はやはり年季が入っています。床なんて皆の靴ですり減っています。でもきれいに掃除されていて、ここの掃除のおばちゃんの腕の良さに感心しました。

 二階についてドアを開けると、そこは広い部屋が広がっていました。目の前には、折り畳み式の長テーブルが椅子とともにいくつも置いてあります。その奥には机が6個ぐらいありました。4人ほど座っています。


「ああ、鈴木君。ちょっと来て」


「はい」


 一人の男の人が、呼ばれてやってきました。私を案内してくれた人は50代に見えますが、呼ばれた人は40代に見えました。


「こちら今日から配属になった柳さん、よろしくね」


「柳と申します。よろしくお願いします」


 私は、その鈴木さんにピシッと挨拶をしました。最初が肝心ですからね。私を案内してくれた人は、そういって一人一階に戻っていきました。


「私は、ここの責任者の鈴木です。よろしく。今柳さんを連れてきてくれた人は、総務の安川部長。また給与やこまごましたことは総務に聞いてね」


「はい」


「じゃあ今いる人にだけまず紹介させてもらうかな。みんなちょっといいかな」


 鈴木さんのお言葉に皆パソコンに向かっていた人たちが、一斉にこちらを見ました。女性1人男性2人です。皆が席を立ちました。


「今日からこの部署に配属された柳さん。皆よろしくね」


「柳と申します。よろしくお願いいたします」


 そうして一人ひとり挨拶してくれました。女性はパートさんで既婚の方でした。男性は一人は三十代後半ぐらいで、もう一人は20代に見えました。挨拶が終わると、みなさんまたパソコンに向かい合って仕事を始めました。

 

「近藤さん、ちょっといいかな。柳さんに更衣室やいろいろ教えてあげてくれる?あと制服は更衣室かな」


 近藤さんと呼ばれた女性が椅子から立ち上がりやってきました。


「じゃあ案内しますね」


 そういわれて私は、近藤さんにまず更衣室に連れていかれました。更衣室は、一階の奥にありました。


「柳さんだったかしら。制服用意したんだけど、サイズ合わなかったらまたいってね」


 近藤さんは、優しそうな30代の方でした。もともとここに勤めていて、結婚で退職したのですが、子育てしながらまたパートとして働いているとのことでした。ちなみにご主人も同じ会社の人だそうですが、今は違う支店にいるそうです。制服の着替えは後にして、食事の場所やらこの支店内をすべて案内してくれました。昼食は、給食会社のお弁当を注文できるそうです。毎朝更衣室の外にあるタイムカードを押す場所の隣に、弁当注文票が置いてあるので、朝注文できるとのことでした。お弁当は半分会社負担なので、200円以内で食べられるそうです。


「ここは、働きやすいわよ。ただ若い人にはちょっと刺激がないんだけどね」


 ちなみに三階は、会議室と弁当を食べる食堂あとこの支店の支店長などの部屋がありました。私は、更衣室に言って制服に着替えました。サイズはちょうどよく、しっかりフィットしています。ただ制服は、昔ながらの紺のベストにスカートという制服でした。ブラウスは襟元が少しかわいらしくなっていて、そこは気に入りました。ブラウスは三着、ベストとスカートも二着ずつロッカーに入っています。

 私が更衣室を出ると、近藤さんはほかの女性と話していました。私を見ると、駆け寄ってきてくれました。


「サイズよさそうね。わあ~スタイルいいのね。うらやましいわ」


 近藤さんはそういって私をよいしょしてくれました。いやいや近藤さんもお子さんがいるとは思えないスタイルのよさですよ。


「こちら柳さん。こちらは私と同期だった桧垣さん」


「柳と申します。よろしくお願いいたします」


 私が挨拶すると、桧垣さんと紹介された女性は私を見てにこっと微笑んでくれた。


「桧垣です。よろしくね」


 桧垣さんもご結婚されているそうですが、正社員として働かれているそうです。


「総務なの。何かわからないことあったらいつでも聞いてね」


 本当に働きやすい職場の様です。これからが楽しみになりました。 

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