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1今世の私

(きゃあぁ__ 落ちるぅ__ 止まってぇ__)


 私こと上柳千代子は、家の二階の階段から一階に落ちている。しかもらせん階段。


 千代子は転がるよ~。どこまでも~。




 あまりの痛みに目が覚めました。


「せんーせーい__!お嬢様が、目を覚まされましたぁ__」


(誰なの? お願い、起こさないで。頭が痛いのよ。キンキン叫ばないで...)


 どかどかどか、すごい足音がしています。


「目が覚めたの? よかったわぁ」


「大丈夫か? 痛いところないか?」


「よかった!」



(どうやら私の耳元で、わんわん泣いている泣き声や大声が響いていますよ。うるさいです。余計痛みます。早く治してください)


 声を出そうとしましたが、どうにも出ないようです。目も開けられません。

 いや開いているらしいんですが、何かが邪魔して目が開けられません。


「ちょっと見せていただきますね。どこか痛いところは、ありますか?」


 すべてが痛いです! と言いたかったのですが声になりませんでした。

 しかし唇が動いたのかわかったのか、しかめっ面で理解したのか、その人は言いました。


「もうちょっとお休みになったほうがよさそうですね。ちょっとチクッとしますよ」

 

 腕にほんの少し刺激がありましたが、体すべての痛みがひどくて気になりませんでした。

 その人はたぶんお医者さんだと思いましたが、痛いと言葉に出す前に意識がなくなりました。




 次に目が覚めた時には、痛みがだいぶ治まっていました。


(ここは、どこ?)


「お嬢様! 目を覚ましたんですね。よかった! 三日も意識がお戻りにならないので、心配しました!」


 私のベッドの傍らで、泣いている女の人がいます。そうです。私のマネージャーさんで、大切な友人でもある朝月久美、通称久美ちゃんです。

 久美ちゃんは、目から鼻からみずがいっぱいです。かわいらしい顔もくしゃくしゃです。


「心゛配゛か゛け゛て゛ご゛め゛ん゛ね゛」

 

 やっとのことで声を出しますが、ガラガラ声です。水が飲みたいです。

 久美ちゃんは、上半身を起こしてくれます。


「お水どうぞ」


 久美ちゃんは、すかさずコップを口に当ててくれます。


(うまい!)


 一気に全部飲んでしまいました。


 先生を呼んできますねと言い、久美ちゃんは部屋を出ていきました。


 さあ、のども潤したし脳内で整理してみましょう!



 私は、上柳千代子。22歳。なんと日本最大、世界でも指折りのグループ会社上柳グループのお嬢様です。

 日本最大ですよ!(ここ大事) そこのお嬢様なんです!


 その日は、会社の入社式に行くところでした。と言っても自分の会社ではありません。

 同じく日本有数の(うちより小さい!)清徳グループ御曹司、清徳正樹さんがお勤めされている会社です。

 清徳正樹さんは、いいなずけです。

 家族、特に兄である上柳慎一郎の反対を押し切って、許嫁である彼の会社に入社する予定でした。


 まあそれはおいておいて、ここは家でもなさそうです。

 ここはどこか、周りを見回してみます。

 何やら私の横にいろいろな医療機器があります。腕には針が刺さっていて点滴をされています。


 どうやらここは、病院の病室のようです。


(私、階段を踏み外して転がり落ちたんだ)


 あまりの痛みでよく覚えていませんが、あっと思った時には落ちていた気がします。先ほどの久美ちゃんの話からすると、三日間眠っていたようです。


 事態を把握して、やれやれと思ったとたん、今度はビッグウェープのような記憶の波が、襲い掛かってきました。


(そうだ私、釣りをしていて足を滑らせておぼれて、それでどうなったんだっけ)


 最後に見たのは、水の底から見えたきらきら光る太陽でした。

 たぶん死んでしまったんでしょう。のどが息苦しくて、呼吸できなくなったことを思い出しました。



 どうやら私、生まれ変わったようです。

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