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第84話『黒龍暴走』

年末に投稿しようと思ったのですがあっという間に新年ですね!!

スローペースですが本年も作品共々よろしくお願いいたします!!

首無天使の大群を大きな口で飲み込む黒龍、零蘭を見て腕を組むフレリア。


「お〜お〜良い食いっぷりじゃのぉ黒龍よ。

小魚を飲み込む鯨のようじゃ。」


【あんま味しなぁい。美味しくなぁい。】


群れの最後を喰らい不満げに咀嚼する零蘭の頭の上に座り込むフレリアは辺りを見回した。

祭事の準備を行っていた場所は見る影もなく、

今も尚首無天使が飛行している。


「天使共め、やりたい放題じゃのう。」


【…。】


「どうした黒龍。」


首を左右に何回も傾ける為、落ちそうになるフレリアは黒光りする硬い鱗の額をペチペチと叩く。


【何か…変。

何か胸が気持ち悪いよ〜。】


「ふーむ、流石のお主でも首無天使は消化不良かのう?」


【そういうのじゃないんだよね。

胸がモヤモヤすると言うか。】


そんな零蘭の脳裏には何故かはにかむユムルが。

落下するユムルをケルツァが受け止めた時、彼女の纏う気配が歪だった事が今も気掛かりだからだろうか。


【(普段はこんなの気にならないのに。

何だろう、看過してはいけない気がする。

あの子を消さないといけない気がしてならない。)】


零蘭の事が気になりつつも、ユムルの居場所を感知する為、集中していたフレリアが真っ先に感知したもの。

それはいつの間にか目の前にいた純白の羽根を持つ真っ白な女性。


「ふん、スィーデ=ヴァイスか。」


フレリアの睨みに肩を震わせ涙目で頭を下げるスィーデ。


「す、すみません!

そこの黒龍さんに用がありましてぇ!」


「ほう、妾を無視するか。

貴様の分際で?偉くなったのう。」


「ひぃいっ!!

すみませんすみませんすみません!!

ひ、一言だけお伝えをさせてくださいっ!!」


ビクビクしている割にはやる事を熟すスィーデの事を多少理解している為、フレリアは零蘭の頭から飛びスィーデを切り捨てんと薙刀を振りかぶった。



ユムルの脳裏には先程の倒れていたブレイズの姿が離れない。


(やはりお1人にしない方が宜しかったでしょうか。

こうしている間に何かあったら私のせいです…。)


「お嬢ちゃん、おじょーちゃん。」


ケルツァに優しく肩を叩かれ我に返るユムルは勢いよく顔を上げた。


「大丈夫?顔色悪いよ。

ちょっと身を隠せる場所で休もう?」


「わ、私は大丈夫です。

…ブレイズさんが…」


俯くユムルの左手を一回り大きく少し硬い右手が優しく包み、歩を進ませる。


「彼なら問題無いよ。寝たら全快するさ。」


「…はい。」


ケルツァはそれ以上は語らず、瓦礫を超えながら目的地へ向かった。

ユムルも何か話そうと思ったが口の端を結び、

右手で抱える秘石に力を込める。

その時だった。


「ッ!」


弾かれたように顔を右へ向けたケルツァはユムルから手を離し、顔の前に両手を動かした。

その手には己を叩き伏せようと振り下ろされた巨大な銀のハンマーが収まった。

踏ん張っている両足が地面を滑るほどの力に汗が流れるケルツァは声を上げた。


「ちょっと死んじゃう所だったじゃん、天使さん。」


「ふぇえっ!?お気付きになるなんて!

すみませんすみませんッ!

せめて苦しまないようにと思ったんですぅ〜!!」


謝りながらもハンマーを下ろそうとするどころか力を込め続ける女天使、スィーデ=ヴァイス。


「お嬢ちゃんッ!このまま真っ直ぐ走ってッ!

西蘭が居る場所まで!!」


「あ、はっ…はい!」


迷惑をかけないように出来る限り早く言われた通りにするユムルにスィーデは慌てて声をかける。


「そっ!それはダメです!

私は貴女に用があるので…」


「うるっせぇなあ…!

お前がふっかけてきたクセに余所見すんなや!!」


ユムルの元へ向かおうとするスィーデに怒ったケルツァの手に力が加わり、スィーデのハンマーがまるで厚紙かのように捻じ曲げた。


「あーっ!!私のハンマーが!?」


「僕に殴りかかった挙句無視とか巫山戯やがってさぁ…殺される準備が出来てる証拠だよねぇ?」


「ひぃっ!?

お優しそうだったのに超怖いですぅ〜っ!!」


龍化して食らいつこうかと考えるケルツァの視界にスィーデの翼が入る。

自分とは違う翼だからではなく、気になったのはキラキラと黒く光る細粒が付いていた事だった。

ケルツァはその物質を直ぐに理解した。


「テメェ…零蘭をどうしたッ!!」


バキバキと鳴るスィーデのハンマー。

徐々にひしゃげていく力に震え、その手から引き抜こうと奮闘するも全く手を離さないケルツァ。


「れ、れぇらんさん!?

ぞ、存じ上げませぇんッ!!」


「お前の羽根に付いているのは砕けた零蘭の鱗だ!

知らねぇとは言わせねぇぞ…」


そう言うとスィーデの頭上で電球が光る。


「あっ!あの黒龍さん!

私が頑張って作った首無天使を平らげた御方ですね!」


「お前が作った…?」


緩まる手から素早くハンマーを抜いたスィーデはホッと一息つき、頷いた。


「はい。私なんかが作ったので他の首無天使とは違って私に似ちゃいましたが。」


「特徴を教えろ。」


殺気が増幅し、思わず肩を震わせてしまうスィーデは慌てて距離をとる。


「わ、分かりましたから怖いので離れてくださぁい!」


「…」


腰を落としていたケルツァが舌打ち後に足を伸ばし、構えを解いた事を確認してからスィーデは話し始めた。


「私の首無天使を食べたり吸収すると私の言うことを聞くようになって、私みたいなネガティブ思考が…というか負の感情が増幅する効果がありますぅ…。」


「つまりあの首無天使は零蘭を狙った罠だったのか!?」


「黒龍さんだけではありません。

竜族の方は強力な顎と強靭な胃袋が武器だと記憶しておりますので…」


零蘭の戦い方は確かに喰らう事。

魔法を使えない訳では無いが


「敵がご飯になってお腹が膨れるとか最高じゃない?」


と言い人間体でない限り使おうとしない。


(しかも食えって言ったの僕だっけ…)


「私のお願いを聞いてくださった黒龍さんと一緒に居た悪魔種のメイドさんが戦って砕けた鱗が私に降りかかったようです。」


「フレリアさんと戦っただって!?

(まずい、零蘭の馬鹿力は僕でも抑えるのが難しいというのに!)」


次の瞬間、


グルォオォオオォオ──────ッッ!!



龍の咆哮が全てを揺るがす。

蹌踉(よろ)めいてしまうも踏ん張るケルツァ。


「ッ零蘭か!」


「あわわ!あんな感じなので私の言うこと一言しか聞いて下さらず暴走状態ですぅ!」


「そもそも暴走状態じゃなくても言うこと聞く訳ねぇよ!」


零蘭を探しに踵を返した途端、勢いよく何かが目の前に落ちてきた。

落ちてきたのは満身創痍のフレリアだった。


「フレリアさんッ!?」


慌てて駆け寄り身体を起こすと、薄らと目を開け必死に口を動かした。


「ケル…お嬢が…っ!

れいらん…向かっ…げほっ」


「零蘭がお嬢ちゃんの元へ!?

くそっ西蘭に頼るしかねぇか!」


口から吐き出された血を自らの袖で優しく拭い、

ゆっくりと寝かし、スィーデに殺気を放つ。


「お前、余程死にたいようだ。」


「ひょえぇっ!?

な、何故そうなるのですぅ!?」


「分からない馬鹿に話しても分からないでしょ?

こう言うのを時間の無駄っていうのは分かるかなぁ?」


「わ、分かりますすみませぇん!」


フレリアを巻き込まないよう龍化し、スィーデと対峙する事を決意した。

緑色の鱗も、純白な羽根も、光が反射すると虹色に光って見えスィーデは思わず見蕩れていた。


「綺麗です…」


【遺言はそれだけなの?寂しいねぇ。】



ケルツァさんに言われた通り西蘭さんが居る場所まで走る。

1人で心細くても走らなければ。

ブレイズさんも、フレリアさんも、シエルさんも…王龍様も、零蘭さんも、ケルツァさんも、

皆様が戦いに身を投じなければならないなんて。

皆様が傷付いてしまっているのに、私だけ何も出来ないなんて。


“郷がこんなになってしまったのは…

この方のせいではありませんかっ!?”


竜族の方に言われた言葉が頭の中を永遠に巡り続ける。

仰る通りだからでしょう。

私が居なければこんな事にはならなかったかもしれない。


“何を根拠に?”


フレリアさんは仰ってくださった。

私のせいでは無いという意味で。

でも、私は天使種さんに狙われている身なのも揺るぎない事実。

だから私のせいという可能性はとても高いでしょう。

私がやれる事は何だろう。


あ、

この秘石を何方かに託して私が囮になれば…


それが最適解です。


西蘭さんの元へ走らねば。



「イヴ殿!」


「西蘭さん!」


洞穴のような場所の入口で西蘭さんが手を挙げていました。

彼は私を中へ入るよう促してくださる。


「こちらで身を隠しなさい。」


「ありがとうございます。

ですがこちらを」


「どうぞこちらへ。」


あわわ、差し出した秘石を掌で押され手を引かれて強制連行です!

どうにかしてお渡ししなければ!


「西蘭さん、あの!こちらを!」


「…」


無視!?

ちょっとショックです…。

長い通路をずんずんと進んで行き竜族の皆様が沢山いらっしゃる岩に囲まれた広い場所へ出ました。

バラバラな方向を向いていた全員の視線が一斉に刃物のように鋭く刺さります。

あの方と同じ、嫌悪の目…歓迎されていないことは明白です。


『ぷーっ!!』


「き、狐さん!」


息が詰まる場所でフレリアさんの狐さんが走って胸に飛び込んできてくださいました。


「狐は私が保護しました。

ブレイズ殿が物陰に潜めていたようで。」


顔をスリスリして涙目で私を見上げています。

怖い思いをさせてしまったのでしょう。


「ごめんなさい、怖かったですよね。」


『ぷっぷ!ぷー!』


首を横に振ってしまいました。


「どうやらイヴ殿が無事で安心したらしいですね。」


西蘭さんが狐さんの眉間を人差し指の腹で撫でて狐さんを安心させていました。


「お、お分かりなのですか?」


「はい。この子はそう言っています。」


無表情だった西蘭さんの口角が僅かに緩くなって雰囲気が少し和らいでいるような気がします。

そのお陰で周りの方の視線が少し気にならなくなった時でした。


グルォオォオオォオ──────ッッ!!


突如大地を揺るがす大きな咆哮。

鼓膜だけでなく全身がビリビリと痺れるほどに体が震え上がります。


「ッ…零蘭だな!!」


西蘭さんは即座に背を向け入口へと走って戻っていきます。

私も何かしないと、この秘石を何方かに。


振り向いた瞬間、顔の横を強風が通りました。

そして壁に激突する音。

岩場にめり込んでしまうほどの勢いで飛んできたはずです。

一体何が…


「せ、西蘭さんっ!?」


ぐらりと体が傾き、落下して倒れ込んでしまいました。

皆様が西蘭さんの元へ向かいます。

私も行きたいですが邪魔になってしまう。

私がやるべきことは…!


グルルルルルッ…


ゆっくりと唸り声が近づいてきます。

興奮しているのか荒い息遣いまで一緒に聞こえます。

もしや零蘭さんなのでしょうか。

西蘭さんを飛ばしたのも零蘭さんでしょうか。

だとしたら何故そんな事を…?


【何処だ…何処だァ…】


低く響くお声。

探しているのは秘石か、私の可能性が高い。


「あの、すみませんが秘石をお願いします。」


申し訳ありませんが近くに居た方に秘石を押し付けてしまいました。


「イ…ヴど…にげ…っ」


西蘭さんの絞り出したお声で私を止めてくださる。

でも、私が出来るのはこれくらいなので入口に向かわないと…


【グルルルルルッ…】


目の前に黒龍姿の零蘭のお顔が寸前まで迫りました。


「零蘭さん。」


【オマエ…!う…イヴちゃ…逃げ…グルォオッ!!】


零蘭さん、何か葛藤されているのでしょうか。

とても苦しそうです…!


「零蘭さん!私はどうなっても良いですが、

竜族の皆様を貴方が傷付けてはなりません!

貴方も皆様も傷付いてしまう!」


【グルォオォオオッッ!!

コロスッッ!!!】


「はい!私を貴方に捧げます!

その代わり、どうか皆様の安全を最優先してください!お願いいたし」


言い終わる前に開いた零蘭さんの大きなお口。

あぁ、どうか皆様の安全が守られますように。


そしてティリア様。

約束を守れず大変申し訳ございません。

許されるのなら貴方様のお隣にもう少し居たかったです。

貴方様の陽だまりのような暖かい笑顔が、優しさが、曇らぬよう願っております。


「ティリアさま…」




「ユムルッ!!!」

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