第78話『竜族の長、王龍』
お久しぶりの投稿…話も期間も長くなりました…。
タイトルを変えようか考えたりシンプルに煮詰まったりとぐだぐだしておりました。
時間の流れは早いものですね!!くっ!!
ナイフを洗いに行った零蘭さんとそのお目付け役になったケルツァさんと別れ、西蘭さんの後をついて行き塔の中へ。
木造のような造りの大きな塔の中は筒状でステンドグラスのように色鮮やかな硝子が規則正しく並び、壁を彩っています。
「綺麗…」
思わず口に出すと西蘭さんは広間の中心で振り返りました。
「そう仰って頂けて何よりです。」
西蘭さんの綺麗なお顔はバアルさんを彷彿とさせる無表情です。
彼の周りを見るととある事に気付いてしまいました。
「階段が無い…。」
こんなに天井が遥か高い建物なのに螺旋階段が見当たりません。私の呟きを拾った西蘭さんは首を傾げました。
「階段?」
何故疑問に思われるのか、私と西蘭さんのお互いが別の意味としてそう思ったと思います。
私は“階段は在る物でないのか”
西蘭さんは“何故階段が無いことに疑問を持つのか。”という考えだと思います。
「必要ないでしょう?」
私の考えを確定付けるように問う西蘭さんはただ純粋にそう仰っているのだと思わせる瞳で私を見ていました。
「階段が必要な種族とは相容れません。
故に不必要と判断し、階段が無いのです。」
階段が必要な種族…
主に人間でしょうか。
魔界に人間は居てはならないはずなので数にはそもそも入っていないかもしれませんが。
どうしましょう。私は人間で、飛ぶ事すら出来ません。シエルさんも羽根が…
「のう、西蘭殿や。」
フレリアさんが西蘭さんに近づきます。
「はい。」
「王龍様の賓客としてうちの嬢ちゃんが世話になるんじゃが、その客の手を煩わせる気かえ?」
「…つまり?」
「この子に飛ぶ労力を割いてはくれんかと言っておる。」
フレリアさんは私が飛べない事を悟らせないようにして下さっているのですね。
西蘭さんはじっと私を見つめ、やがて頷きました。
「…そうですね、前回が随分昔のことで招く作法を失念しておりました。」
彼は数歩離れ、白く大きな龍へと姿を変えました。
硝子からの光が差して輝きが溢れています。
【どうぞこちらへ。私にお乗り下さい。】
ケルツァさんのようにぺしょりと伏せて下さるも、壁のように高い背中によじ登れる気がしません…!
「シエルさん…。」
小さな声で助けを求めると静かに頷いて私を抱えて乗せて下さいました。
「ありがとうございます。」
「こちらこそ。」
これでシエルさんも西蘭さんに乗れました。
しかし西蘭さんがふんすと鼻を鳴らすのが聞こえました。
【貴殿を乗せる覚えはないんだが。】
「おや?そう言わずに!
我が同僚に何かあれば処されるので!」
申し訳ない事にシエルさんの返答には間違いがありません…。
ケガしないようにしないとティリア様が怒ってしまいます。
西蘭さんは分かってくださったようで溜息を吐きました。
【………大変だな。
まぁ良い、掴まってて下さいね。】
「失礼致しますね。」
シエルさんは私が落ちないように私のお腹に手を回し、右手で鬣を持ってくださいました。
西蘭さんはふわりと優しく浮かび、上を目指して昇ります。
シエルさんの身体が背中に密着しているのに温かさを感じません。
「私、体温低くて冷たいでしょう。」
「えぁ!?い、いえ!」
「貴女は温かくて羨ましいです。
ずっとこうしていたいほど。」
耳元からのいつもより低い声に思わず顔が熱くなります…!
「わ〜温かいです。」
「…」
揶揄うようなお言葉に何と返せば良いか分からず、狐さんを抱きしめるしか出来ません。
するとお腹にまわされたシエルさんの腕の力が強くなりました。
「…?」
疑問に思ったのも束の間、西蘭さんが何処かを曲がった遠心力で右に傾き落ちそうにになるものの、シエルさんのお陰で転がらずに済みました。
「ありがとうございます、シエルさん。」
「いえいえ、お易い御用です。」
【此方です。お気をつけて降りて下さいね。】
ケルツァさんの時のようにシエルさんが先に降り、後に降りた私を受け止めてくださった。
私達の姿を確認してから人型に戻った西蘭さん。
龍のお姿は大きかったので人型に戻られた時、見えなかった周りが見えるようになりました。仄暗い廊下のような場所で同じ服を纏った方々が壁際に等間隔で並ばれていました。
その手には槍が握られているので護衛の方…でしょうか。
西蘭さんが前を通る際、異端な私達を見ることなく、槍を両手で握る動作を全員が同時に寸分の狂いもなく行いました。
凄い…!
「この者達は王龍様の賓客だ。
無礼の無いように。」
静かに告げる西蘭さんに声の返事ではなく、頭を下げて了承される。
しかし頭を誰1人上げることがありません。
彼等を気にすることなく、西蘭さんは廊下を歩んでいきます。
そして辿り着く大きな扉。
豪華な飾りなどは無く、シンプルで大きな凹凸のない木製の扉です。
2名の兵士さんが西蘭さんに頭を下げました。
「王龍様の賓客を連れて来た。」
彼の声に頭を上げて頷いた彼等は扉に向けて揃えた指を向けました。
それに合わせて扉がゆっくりと開かれます。
この先に居るのが王龍様…。
一体どのような御方なのでしょう。
向こうの景色が見えるようになって行くことに緊張して鼓動が速くなるのが分かります。
そして完全に開かれた扉の先に見えた景色に思わず息を飲んでしまいました。
「っ」
とても広い間、その奥にある長い階段。
その頂点に君臨する御方の神々しいお姿に。
とても遠くてお顔すら拝見出来ていないのにも関わらず圧を感じます。
王の風格という言葉が頭に浮かぶほどに。
お優しいティリア様とは全く違う雰囲気に身体が強ばってしまう。
しかし西蘭さんは中へ進んで行かれるので重く感じる足を無理やり動かす。
その時、背中を摩ってくれる感覚がありました。
振り返る前にフレリアさん、ブレイズさんがほんの少し私の前を歩き、目を合わせて下さいました。
そのお陰で強ばりが消え、足の重たさも消えました。
やっと広間の中心に辿り着いた時、西蘭さんは跪きました。御三方も同じようにされたので私も慌てて跪く。
床を見ているのに上からの威圧で息が詰まりそうになります。
「西蘭よ、御苦労だったな。
下がるが良い。」
バクさんから聞こえた低く艶のあるお声と一緒です。
やはりあのバクさんは王龍様で間違いなかったのですね。
「は。」
返事の後、西蘭さんの影は一瞬で無くなり彼が姿を消したのが分かります。
「立ち上がりおもてを上げよ。」
正直怖い。
しかし言われたことをしなければなりません。
ゆっくりと指示に従い、震える足に力を入れて顔を上げる。
遠くからでも感じた神々しさが近くなり、より一層オーラを感じます。
床に膝が着きそうになるのを堪え改めてお姿を把握させて頂く。
…とても綺麗なお顔…。
額に赤い模様、小さなお顔の上にある大きな白い龍の角。金糸のような長い御髪。
一つ一つの部位が全て完璧なお姿。
私なんかがお目にかかれるような御方ではありません…!
「よく来てくれた、イヴ。」
「え…」
瞬き1回。
重たそうな何重にもなった着物を纏っているのにいつの間にか音も無く玉座から離れ、私の目の前にいらっしゃいました。
「この姿で逢えるのを待っていた。」
右手を優しく掬われ、私なんかの視線を合わせて下さる。
目の前にある綺麗なお顔に目を瞑ってしまいそうになるのと同時に見ていたい気持ちが芽生えてしまい、中途半端に目を逸らしてしまう。王龍様から仄かに香る優しい香りも今は恐れてしまいそうです。
「改めて我が名は王龍。
竜族の長だ。」
細くしなやかな手が私の左頬を撫でる。
とても冷たい御手です。
「イヴ、顔をよく見せておくれ。」
顎を持たれ無理矢理目を合わせられてしまう。
透き通るような銀の瞳孔に怯えた顔の私が映る。
ダメ、このような顔をしては。
ティリア様の御名前に傷を付けてしまう。
「我が怖いか?」
「い、いえ!」
反射的に喋った口に感謝していると王龍様の視線は金に光る蜘蛛のブローチへ。
「ならば良い。
して、お主の特殊な気配についてだが。」
「ま、魔王様とバアルさんにおめかししてもらいましたっ!」
あれ!?言うタイミング合ってますか?!
「ふむ…成程。護る力に纏われているのはそういうことか。」
護る力…。
バアルさんもティリア様もこのブローチとイヤリングに魔力を込めてあると仰っていましたが、それは私を守ってくださる為…?
「だが魔王の勅命だ。
我等竜族もお主を護る故に安心するが良い。」
「は、はい。あ、ありが…ござ…ます…。」
一言話すのにも勇気がいるような圧に呼吸が荒くなっていくのを感じます。
王龍様はそんな私を呆れることなく、声をかけてくださる。
「…一旦休憩をしておいき。
また後ほど我の元へ来るが良い。」
「そんな!お、お待たせするなんて」
「お主は重要な客だ。
もてなさぬ長が何処に居る?」
「イヴ、此処は甘えるのじゃ。」
フレリアさんに促され、また後でお使いの方が迎えに来ると言われた為頭を下げたあと、私達は謁見の間を後にしました。
「イヴ…本当に似ているものだ。
彼奴の魂の形と。」
…
槍を持った1人の兵士さんに連れられ、塔を少し降りると言われました。西蘭さんも零蘭さんもケルツァさんも居ません。廊下の先を切り落とされたような足場からすぐ下のフロアへも落ちたら流石に死んでしまう高さです。これが“少し”の高さなのでしょうか。
「よいしょっと。」
「きゃ!」
ブレイズさんが優しく抱えて下さいました!
音が無かったのでつい声を上げてしまいました。
兵士さんは異様なこの光景を目を丸くして見ています。
「気にしないで?」
ブレイズさんがニコリと笑うと怯えたように背筋を伸ばした兵士さんが足早に降りました。
「行こっか。」
ブレイズさんに頷いた後、彼はふわりと浮かび兵士さんの後を追ってくださる。
長い廊下の先、沢山ある扉の1つの前に兵士さんは立ち止まりました。
「イヴ様はこちらのお部屋を。
皆様は残り右のお部屋を3つお使いください。
では後ほどお迎えに上がります。」
そう言って去ってしまいました。
一先ず全員で私に割り振ってくださったお部屋へ。
中はとても広くティリア様から賜ったお部屋とほぼ同じ広さです。
ベットも天蓋付きでまるで一緒…。
「下ろしますね。」
ブレイズさんは優しくベットへ下ろしてくださる。
「ありがとうございます。」
「まさか私にも部屋があるとは。
王龍様はお優しいですねぇ。」
シエルさんはクスクスと笑います。
それは何かおかしいことなのでしょうか?
「シエル君は部屋に居る気は無いんですよ。」
ブレイズさんが呆れながら私へ説明してくださります。視線はシエルさんの方ですが。
でもお部屋に居ないと寝れませんし休憩すらとれません。
「何故なのですか?」
私を見るシエルさんはニッコリと笑みを浮かべ、
「貴女の警護とバレない程度に探検を少々。」
そう仰った。後半の探検が少し楽しそうに聞こえます。
「妾はずっとお主と共に居る。
だから安心すると良い。」
フレリアさんは私の頭を撫でてくださる。
優しくて、この広いお部屋に私一人でない事が何より嬉しい。
「嬉しいです。」
「俺は日中一緒に居て、夜には別行動するよ。」
ブレイズさんは茶色の艷めく髪を結っている黒いリボンを結び直して私に微笑む。
「分かりました。」
「では使いの者が来るまでぐうたらしよう。
シエルはまだ探検禁止じゃ。」
「はぁい。」
ほんの少しだけ皆様とお話していたらドアがノックされます。
「イヴ様、お迎えに上がりました。」
「あ、ありがとうございます!」
皆様と目を合わせ、ドアを開ける。
先程の兵士さんが待っていました。
「王龍様がお待ちです。
こちらへ。」
兵士さんは1番下まで降りて行きました。
再びブレイズさんに抱えて頂き、床に足を付ける。
目の前には王龍様と西蘭さん、零蘭さんがいらっしゃいました。
零蘭さんが私を見て大きく手を振ります。
「イヴちゃーん!」
どう反応して良いか分からず咄嗟に笑みで返してしまう。失礼にあたりませんかね…私…。
「ふむ、零蘭は本当にイヴをひどく気に入ったのだな。」
「うん!」
うん!?
王龍“様”と仰っていたのに敬語では無いのですね…。
不思議な関係性です。
王龍様も気にする様子は無く、クスクスと笑う。
「ふ…お前にしては見る目があるようだ。」
「めっちゃくちゃ美味しいご飯作ってくれるんだよ!
ブレイズ君と同じくらい!ねー!」
零蘭さんは私に駆け寄り、手を握ってブンブンと上下に振ります。
「ほう?それは気になるな。」
興味深そうに私を見る王龍様の横から西蘭さんがツカツカと歩いて
「こら零蘭、イヴ殿を困らせるな。」
「いてっ」
ぺしっと零蘭さんの後頭部を叩く。
怒るところはそこですか?!
「さぁ、祭りの準備を見に行こう。
ついて来るが良い。」
王龍様はそのまま外へと赴く。
私は零蘭さんに手を握られながら行くことに。
入った扉と対面の扉から出た為、初めて見る景色。
僅かな通路のすぐ側にある成人男性の背丈程高い仕切りの様な壁の中心にある開かれた扉から奥を見ると、来た当初の町とはまた違う雰囲気の広場でした。
紺色の着物を召した人々が木材などの材料を持ち忙しなく動いていらっしゃいます。
一番目を引くのは広場の中心の櫓のような縦長の建造物です。
木材が網目のように入り組んだ造り…そこから小さな三角形の旗が沢山付いた紐が下の建物に繋がっています。旗の色がカラフルで可愛らしい。
「此処は我が塔の所有地。
祭典の為に解放する場所だ。」
所有地…って事はお城の中のお庭のような場所という事でしょうか。
随分と広いのですね…!
「この櫓はイツァムが祭りの都度設計図を描きあげている。」
「イツァムさんが…!」
私はあまりお話出来ませんでしたが流石は宮廷画家さんです。
お祭りという存在は聞いたことしかないので分かりませんが準備されている方々のお顔は何処か楽しそうでやりがいを感じているような気がします。
「もうすぐ祭典の日が来る。
お前も楽しめると良いが。」
王龍様が私を覗き込む。
少し不安の色があるように見えた私は大きく頷いた。
「準備されているこの瞬間から楽しそうなのが伝わります。」
無の表情である王龍様の口角が微かに上がったように見えます。
「そうか。」
「はい!」
隣の零蘭さんがにぱっと笑い
「実際楽しいよ!
あの屋台達みーんなに美味しい物がいーっぱい並ぶの!」
そう私に教えてくださる。
城下町のお店のような建物は実際そのような役割なのですね。
「素敵です。」
扉を潜ってすぐに準備中であろう一人が王龍様に気付き足を止め、深々と頭を下げる。
後に続くように全員が手を止め、頭を下げる。
「皆の者、御苦労。
この者達は我の客人だ。
無礼のないように。」
全員から「はっ」という短い返事の大きさについ身体が強ばってしまいます。
「万が一怪我を負わせるような動作を見せる事、実際負わせたならば即刻処刑だ。慈悲は無い。」
最大の圧が王龍様から放たれる。
初めて顔を合わせた時よりも“龍”を感じる強い圧にすぐ隣の私の身体が勝手に震えます。
「ちょっと王龍様、イヴちゃんプルプルだよぉ。」
「お控え下さいませ、王龍様。」
零蘭さんは私の肩に手を置いて落ち着かせて下さる。西蘭さんは王龍様へ注意を促すように仰った。
「む、すまない。そんなに震えるとは。」
よしよしと言いながら私の頭を撫でる王龍様は先程の圧が全く無くなっていて、それに気付いた私の身体が震えるのをやめました。
「ふふ…小動物みたいだな。」
貴方様からすれば人間は小動物なのでは…。
小さく笑う姿すら気品溢れる王龍様を見上げたその時、紫色の空に浮かぶ巨大な黄金に輝く金属の塊のような物が目に入ります。
中心に円形のガラスのような透明なレンズのようなモノが。
「…」
黙り込んだ私の視線を追う零蘭さん、西蘭さん、王龍様。
視線の先のモノに気付いた西蘭さんが教えてくださる。
「あれは天界との境目、ゲートです。」
あれがゲート…ルルさんが守ってる場所であり、その上はシエルさんが居た…。
シエルさんが気になってしまいチラリと見ると笑みを絶やしたシエルさんがほんの一瞬、そこに居ました。しかし私の視線に気付いたのか仮面の笑みを付けて首を傾げます。
一瞬のシエルさんが怖くなり、もう一度ゲートを見ると零蘭さんが上から私を覗き込み視界が塞がる。
「イヴちゃん、見るの初めてー?」
「は、はい。初めて見ました。
お城からは見えないので…。」
「此処は高いからねぇ。
よく見えるでしょ。」
「はい。」
「俺達がゲートを見ないのは魔王様が雲を操って見えないようにしてるんだよ。」
ブレイズさんがそう仰る。
「雲を下に集めて濃くしているからその雲の群勢より上にある此処はよく見えるわけじゃよ。」
ケルツァさんが抜けた雲海はティリア様の魔法で、普段見えないのはティリア様のお陰ということですよね。
「そっちにはゲート見るってだけでも嫌になる奴らいっぱいだもんね!」
零蘭さんが笑顔で仰るけれど少し挑発されているような気がします…。
「えぇ本当に!
胸糞悪いとはまさにこの事ですね!」
シエルさんが進んで口を開くとは思いませんでした。両隣のブレイズさんとフレリアさんも腕を組んで悪い笑顔を浮かべています。
「うむ!アレが爆発して巻き込まれんかのうとは思っておる!」
「うん!俺も死ねばいいのにって思うよ!」
天使種の方々に仰っているとは思いますが…
何故でしょう、言葉の先が若干零蘭さんにも向いているような…。
「アレ僕に言ってる?」
「い、いやぁ…あはは…。」
肯定は出来ませんが否定も出来ず中途半端な笑みを浮かべるしか出来ません。
ブレイズさんは零蘭さんに歩み寄り手を出します。
「そして零蘭、俺のナイフは?」
「ケルツァに渡した〜。」
「え、じゃあケルツァは?」
「イツァムの様子を見るとか何とか。
別棟のあの部屋にいると思う。」
零蘭さんが塔の対面にある煉瓦造りの大きな建物の一室を指さしました。沢山ある窓の中で指さし部分だけが開いています。
「も〜…じゃあ返してもらいに行」
ドォンッ!
「ッ!?」
ブレイズさんの言葉を遮るように辺りに響く爆発音。
発生源は先程のケルツァさん達が居るであろうお部屋。黒い煙がもくもくと外へ出ています。
「俺のナイフがッ!!」
銀食器が大切な命であるかのようにブレイズさんはとてつもない速さで部屋へ向かいます。
ケルツァさんとイツァムさんが心配です!
「お2人が心配ですっ早く行きましょう!!
シエルさん!フレリアさん!」
「はい!」
「あいわかった!」
私はノロマなのでシエルさんに抱えてもらい部屋を目指す事に。どうかご無事で…!
「うわぁシエル君達はや〜い!」
「ふむ…あっという間に行ってしまったな。」
「王龍様、如何致しましょう。」
「他種族をあんなに心配するなぞ…。
ふふ…嗚呼、イヴを暫く観察したいが故に我等も行くぞ。」
「は。」
「はぁい!」




