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第68話『黒龍、来訪』

遅くなりました〜!!

ブクマ増やして下さりありがとうございます!!

今度は新しい種族がひょっこりと来訪しに来ましたよ…??

「もうお城だからこの子はいいわね〜!」


セレネさんが私に持たせてくださった鳥さんを回収なさる。あ、もふもふが…。

少し恋しいです。

ブレイズさんとシエルさんが開けてくださった扉を潜り、城へ戻ってきました。


「た、ただいま戻りまし」


「ユムルおかえり〜っ!!」


「わっ!!」


待っていてくださったのか目の前にいらっしゃったティリア様がお出迎えと同時に私を抱きしめてくださる。


「怪我が無くて良かったわ〜!!

本当はアタシも同行したかったのだけど!」


「坊ちゃんは仕事してもらわねば困りますので。」


バアルさんが溜息混じりに…


「お帰りなさいませ、お嬢様。

ご無事で何よりです。」


「ふぁふぃふぁふぉうふぉふぁいふぁふ」


「坊ちゃん。

お嬢様が喋れませんので解放を。」


「ちぇっ!」


と仰ったティリア様はくるりと私の背後へ。

バアルさんは眉間に皺を寄せて腕を組みます。


「坊ちゃん、我儘は聞きました。

では仕事を再開して下さい。」


「やだぁ!ユムルともっと一緒に居たい!」


「…」


バアルさんの後ろから黒いオーラが!!

大変お怒りです…。


「うっ…ユムル、また後でね…。」


しょぼんとなさったティリア様は離れ、

一瞬で姿を消してしまいました。


「はぁ…まったく。」


腕組みを解いたバアルさんは私達に背を向けました。

その直後


「バアルさんお待ちを!」


とブレイズさんがお声をかけます。


「何だ。」


怪訝そうに振り返るバアルさんに近づき、


「(こわ…。)お耳に入れたいことが。」


バアルさんの耳元で内緒話をなさっています。

お話を聞いたバアルさんは


「チッ!」


と大きく舌打ちを1つ。

私とブレイズさんはついビクリとしてしまいました。


「くそ…相当厄介な仕事が増えた。

セレネ、お嬢様を頼む。」


「はぁ〜い♡」


「ブレイズ、シエル、来い。」


「「は。」」


御三方はそのまま真っ直ぐ歩いて行かれました。

相当厄介な仕事…大変そうです。

私に関する事でしょうか。

それとも別のことなら私も何かお力添えを…

でも、私なんかが役に立てるとは到底思えません。


「ユムル様〜?

浮かないお顔ね〜?」


セレネさんの綺麗なお顔が私をのぞき込みます。


「い、いえ!」


「ん〜…あ!そうですわ〜!

見て見てユムル様〜!」


手をパンパンと叩いたセレネさん。

すると彼女の手に再びあのもふもふな鳥さんが。

少し大きくなっているような?


「ふふ、ユムル様この子と離れるの少し寂しそうだったから〜。」


その鳥さんを私に抱っこさせてくださる。

両手にすっぽりと収まる灰色の鳥さんは


『ぴょっ』


私の方を向いて鳴いてくれました。

ふふ、可愛いです。

改めて見ると…鳥さんの雛さん、ですよね。

おめめまん丸です。


「その子もユムルお嬢様を好きになったそうなの〜!

良かったらその子と私と、お外…はちょっと難しいからお城の周りをお散歩しませんか〜?」


「よ、良いのですか?」


「勿論よ〜!

寧ろ私がお願いさせて頂いているのよ〜!」


「で、ではお言葉に甘えて…!」


「わ〜い♡

良かったわね、ぴーちゃん♡」


『ぴっ!』


ぴーちゃんさん…お名前があったとは!



「ブレイズ=ベルゼブブ。」


「…アイ。」


ブレイズから筆盗難事件の話を聞いた後、一室に冷たく響くバアルの声。

呆れと怒りを混ぜたような低い声でバアルの怒りの原因が分かってしまったブレイズの足は産まれたての小鹿のように震えている。


「また仕出かしたな。」


「マコトニモウシワケゴザイマセン。

モウセイシテオリマス。」


「言い訳を聞こうか。」


「生かして返すとリゼットちゃんが何か仕出かすんじゃないかって…。

それと今回はイツァムが関わってたので…」


「返さなければ良い話だろう。

捕らえて拷問して勝手に死ぬ。」


「ハイ…仰る通りで…。」


「本当は?」


「……ッィ。」


「だろうな。ソイツは何処が遺っている?」


「多分…骨?くらいかなぁ…?」


「拾ってこい今すぐに。」


「畏まりましたッ!!」


妖精種の長であるオベロンをも凌駕する程の素早さでその場を去ったブレイズ。

その隣でニコニコと微笑む彼に視線を向ける。


「シエル、

貴様はリゼット=アザゼルの動向を少し見て来い。」


「は。」


「アイツは頭が弱い方だ。

何者かが入れ知恵した可能性が高い。」


「その近辺も探って参ります。」


「あぁ、頼むぞ。」


頷きを返答とし、

シエルは音も無くその場から消え去った。


「あのアマ…竜族に手を出しやがって…。」



竜族。


実際は竜種だが、その呼び名が気に食わないらしく、

他種族に竜族と呼ばせている。

悪魔種のように高い魔力と、妖種のように妖艶で、

妖精種のように幻想的な雰囲気を持つ。

人型で過ごし、標高を高いところを好む為に中々姿を見ることは無い。

普段は温厚だが逆鱗に触れると敵味方関係なく襲う者と周囲に認知されている。

先代魔王ヴェルメリドとは比較的仲が良かったものの、天使種との争いには中立の立場だった為に参加しなかった。

それ故に竜族をよく思わない者達も少なからず居る。

ただ、あの幻想的な雰囲気に気圧され誰しもが口を開かないだけ。

バアルはつい肘をつき眉間に指を寄せる。


「あの独特な雰囲気と噛み合わなくなる会話が嫌いで仕方ないというのに。」


そう呟いたその時、


「……。」


不意に後ろの窓を見やる。

刹那感じる不思議な感覚。

バアルは顔を顰め、水門へと急いで向かう。


「何故来た!

イツァム以外は普段全く顔どころか文すら届けないクセに!」



私はセレネさんとお城の周りをお散歩中です。

とても広くて街中の広場を貸切にしているような感覚です。

ウェパルさんが創っている水門はとても大きく、終わりがまだ見えません。

水の門、キラキラしててとても綺麗です。


「ふふ、お散歩楽しいわね〜♡」


「はい!」


『ぴっ』


「ぴーちゃんさんもふもふです。

温かくて気持ち良いです。」


「あら〜褒められちゃったわねぴーちゃん!」


『ぴぴぃっ!』


とても嬉しそうです。


「あら?この変な感じ…」


セレネさんとぴーちゃんさんが同時に同じ方向を向きました。


「ユムル様、

ちょ〜っと私から離れないで〜?」


「は、はい!」


『ぴぴぴぃ…』


どうされたのでしょうか。

ぴーちゃんさんのもふもふ度が倍増しています。


「う〜ん…イツァムちゃんじゃないこれはもしかして〜…」


「セレネ!」


バサッと白い上着をはためかせたバアルさんがいきなり現れました!


「バアルさん〜!」


「緊急事態だ。

お嬢様を連れて中へ、と言いたいが…」


バアルさんの視線は私の腕の中のぴーちゃんさんへ。


『びびびぃ…』


ぴーちゃんさん、威嚇しているのでしょうか?

バアルさんを嫌そうに見ています。

バアルさんは気にせず、


「正直、私から離れない方が助かる。

何としてもお守り致しますのでこちらへ。」


と私の手を引きます。

片手になったのでぴーちゃんさんを落とさないようにしないと。

バアルさんとセレネさんと歩いた先は水門の正面。


「此処って銅鑼とか無かったっけ?

だーれーかー!」


大きく手を振っているのが分かります。

どうやら男性のようです。


「ウェパル、開けろ。」


音も無く開かれた水の門の向こうに立っていたのは異国の雰囲気を放つ黒い服に、

黒く艷めく長い黒髪と横に流れた髪を三つ編みにされ、上には伸びて黒光りする太く捻れた角。

肌は白く陶器のようで、長い睫毛の下には爬虫類のような金色の瞳。

驚いたのか黙って立っている彼は暫くして、

我に返ったように目をぱちくりとさせてから


「あ、良かった!居てくれた!」


と人懐っこい笑顔を向けてくださいました。

色が雅若さんと似ていますが…


「突然の訪問は困ります。零蘭(れいらん)殿。」


「え、ごめぇん。」


性格は全く似ていません。

零蘭さん、というのですね。


「だって連絡方法わかんなかったし…」


「鳥に手紙括って飛ばせば良いでしょう。」


「食べちゃうもん。」


「手紙を?」


「鳥を。」


「誰が?」


「僕が。」


「………。」


バアルさん、

呆れて何も言えなくなってしまいました。


「だから直接来ちゃった!近かったし!」


「…用件は?」


「魔王様元気かなって!」


「建前は良い。」


バアルさんは紅い瞳で零蘭さんを睨みつけましたが、

零蘭さんは睨まれた恐怖ではなく、

建前だということがバレたことに苦笑しているようです。


「わ、怖いなぁ。分かったよ。

イツァムがお世話になった件、かな?」


「…唐突故に魔王様は公務中だ。

だからまず私が話を聞く。」


「分かったよ。」


「部屋を用意する。

レンブランジェ殿!フレリア殿!」


バアルさんの声に呼応し、


「ほいほい!」

「妾達じゃぞい!」


ぽふんっと音を鳴らしながら2人が空中に現れました。


「至急、談話室を使います。ご用意を。」


「「りょーかいっ」」


「シトリ=グラシャラボラス!」


「はい!」


次はシトリさんです。

バアルさんに呼ばれた嬉しさがお顔から滲み出ています。


「ブレイズが城下町にいるはずだ。

暫く戻ってくるなと伝えろ。」


「畏まりました!」


…?バアルさん、小声すぎて全く聞こえませんでした。


「チュチュ=フォルファクス!」


「はぁい!!」


チュチュさんまで!


「坊ちゃんの護衛を。

坊ちゃんが出るとお嬢様が危険に晒されるから出るなと伝えろ。至急テオ…いや、ダンタリオンにも呼びかけるように。」


「わっかりました!!」


チュチュさんまでいなくなってしまいました。


む、何やら視線が…


「じー。」


零蘭さんにすっごく見られています。


「不思議な子だね、君。」


「えっ?」


金色の目は全てを見透かしているかのような不思議な感覚になります。


「………ふふ、可愛いね!」


にぱっと笑って下さいましたが何なのでしょう先程の間は…

何かを隠された気がします。


「えーっと…」


「あら〜?私には何も無いの〜?」


「だってセレネちゃんはいつでも可愛いもん!」


「まぁ嬉しい〜!ねぇねぇ零蘭さん」


セレネさんが零蘭さんとお話を始めました。

お2人を見ているとバアルさんに腕を引かれます。


「わっ」


「御無礼をお許し下さい。

セレネが気を逸らしているうちにアイツの事をお伝えします。」


「は、はい。」


セレネさん、わざと零蘭さんとお話を…?


「まず、アイツは竜種。

ただ竜種は皆、何故かその名称を嫌う為、竜族と呼ばれております。

お間違いなきよう。」


「は、はい。」


「そしてアイツの名前は零蘭。

詳しい事は後ほど話しますが、

竜族にも序列はあり、結構上の部類です。」


「成程…」


上の人独特の雰囲気を感じ取っていたのは勘違いじゃなかったのですね。


「竜族は温厚ですが一度キレると手がつけられませんのでご注意を。」


「ひぇ。」


「貴女の正体が露呈すれば間違いなく大変なことになります。気をつけましょう。」


「わ、わかりました。」


私が人間だとバレていないのはぴーちゃんさんのおかげ。大丈夫でしょうか。

もしバレてしまったらぴーちゃんさんにも何か被害が…


『ぴっぴっ!』


ぴーちゃんさんが私の腕を小さな羽根でぺちぺちと叩きます。

大丈夫だよと言ってくれているみたいです。


「バアルよ!」

「準備出来たぞえ!」


レンブランジェさんとフレリアさんがぽふんとバアルさんと私の目の前に現れました!


「宜しい。零蘭殿!」


バアルさんの呼び掛けに応える零蘭さん。

なんと言うか、人懐っこいという笑顔です。


「あ、はぁい!

セレネちゃん、また後でお話しよーね!」


「えぇ!」


とても優しそうなお方ですが…

だからこそ、気を引き締めねば。



談話室、いつ入っても緊張しますね。

零蘭さんはここに来る途中、キョロキョロと辺りを見回して微笑ましい動作をしていました。談話室に入ってもそれは変わらず、赤いソファーにどすんと座り、セレネさんから差し出されたお紅茶の匂いをすんすんと嗅いでいます。


「わぁー!いい匂いのお茶〜!」


「うふふ、零蘭さん好みの茶葉を使ったのよ〜!」


「流石セレネちゃん!わかってるぅ!」


中々話さない零蘭さん。

私は分かります。後ろに立っていたとしても、顔が見えずとも、バアルさんがとても苛立ってらっしゃることに…。


「ねぇ!」


っ!いきなりお話されるとは…

びっくりしました。あれ?何故私を見て…


「何で君は…

えーと…メイドちゃん?は鳥君を手放さないの?」


ギクリと体が強ばってしまう。

どうしましょう、なんて言えば…


「彼女は魔王様に頼み配属させた言わば私のメイド。故に貴方に余計なことを喋らぬようストッパーとしてその鳥に命令している為ですが。」


え、バアルさんのメイドさん??

いけない、顔に出さないようにしないと。


「えっ君何でも出来るのにメイドさんがいるの??」


「如何せん手のかかる馬鹿が多くて。

私一人ではもう手が回りませんゆえ。

新米でも手が欲しかったのです。」


「ほぇー…大変だねぇ、魔王様も君も〜」


「えぇ本当に。

彼女は新米ゆえ、物事を教えてる最中です。

些細な御無礼はお許し願いたい。」


「モチロン!勝手に僕が来てるしさ。」


「(そうでないと困るわ蜥蜴め。)」


「うわ、今怖い顔した。」


「見間違いでしょう。さて、本題を。」


急かすバアルさんを見てティーカップを置く零蘭さんは

机に肘をつき、細長い指を絡ませて口元へ寄せます。

その為、笑みを絶やしているのか分かりません。


「僕、お散歩したくて城下町を歩いていたんだ。

そしたらイツァムと会ってね。」


イツァムさん…筆をブレイズさんが取り返してあげたあの宮廷画家さんですね。


「ブレイズ君が筆を取り返してくれたんだって笑顔で言ったんだ。」


「…」


「取り返してくれたブレイズ君にとても感謝していたよ〜!勿論僕も!ただ…」


「ただ?」


「取り返した、つまり取ってイツァムを泣かせた()()()が居るはずだよね?」


その目は酷く冷たく威圧的で、私の身体は固まったように動かなくなります。

息が苦しい…!

けれど威圧を感じないのか、バアルさんは普通に話します。


「それが取り返したブレイズ自身だと?」


「いいや?ただイツァムは宮廷画家だ。

君達が犯人探しに協力してくれる筋合いはあるだろうと思ってね。」


「筋合い、ね。

まるで我々を疑っているようだ。」


「いやいや流石に君達はそんなことしないでしょ。

良いことないだろうし。」


「となれば貴方がまず疑うのは

城の関係者以外の悪魔種の可能性。」


「あはぁ…そういうこと♪︎

僕は君たち以外の全てを疑う。

だからまずブレイズ君に話を聞きたくてね!」


「ブレイズは今」


「此処に居ないのも、

何処かでこの会話を聞いてるの知ってるよ。」


バアルさんの言葉を遮った零蘭さんは目を大きくし、

私を見ています。

怖い、怖いです…!私は何も分かりません!


「わ、わた…ッ!」


『ぴっぴっ』


「ぴーちゃんさん…」


途端にぴーちゃんさんがぼふっと羽毛を膨らませ、

スリスリとしてくれます。


「私のメイドがブレイズの盗聴器だと?」


バアルさんが低いお声で零蘭さんに仰ると、

零蘭さんはハッとして慌てて首を横に振ります。


「え!?あ、違う違う!!

その子じゃなくて!その子に付いてるやつ!

鳥君じゃない方!」


「…」


バアルさんは座ったまま振り返り、手招きします。

慌てて横に行くと、私に背中を向けさせ、腰のエプロンのリボンを解きました。何故??


「???」


「…」


結び直して下さり、顎で戻れと指示されたのでバアルさんの後ろへ。

彼は掌を見せています。

目を凝らすととても小さな羽虫さんが。


「おのれブレイズ…私にも黙っていたな…!」


お怒りの声です!!

まさか私に忍ばせていらっしゃるとは。


「食べていい?」


「ダメに決まってるでしょう。

腹壊しますよ。」


「えー!?こんな小さい虫なのに!?」


「あのブレイズ=ベルゼ…のだからですよ。」


「あー…ウン、やめとく。」


あの?疑問に思っていると、ドアがノックされました。


「何だ、今取り込み中だ。」


「シトリ=グラシャラボラスです!

ブレイズ殿から伝言を預かりました!」


「…入れ。」


許可されたシトリさんは狼の耳、尻尾を仕舞わず、ふわふわさせながら入室なさいました。もふもふな尻尾は不機嫌なバアルさんを見るや否や嬉しそうにブンブン振りました。

バアルさんは不機嫌にシトリさんへ問いかけます。


「ブレイズは何だって?」


「零蘭殿にまず謝罪を。

虫を忍ばせた事は既にお気づきだろうから、と。」


「うんうん、食べちゃダメだってね。」


「そして、筆の件ですが、

ブレイズ殿が名前を敢えて晒して探した為、

恐れた者を問い詰めたら自白したそうです。」


「ま〜ブレイズ君の名前聞いたらビビっちゃうよねぇ。

…特に悪魔種は。」


じとっとバアルさんを見ますが、彼は無視。

シトリさんも無視して言葉を続けます。


「頼まれただけだ、そう言っていたそうな。

だから真犯人を聞こうとしたら…

聞く前にその場で自害されたそうですよ。」


「えー!?なんてこったー!!」


「だから、自分も探したいのだと。

自分は先に行って情報を得ている最中なのだとのことです。」


「ふぅん!先回りしてたのか〜!!」


「そのようですね。私にも報告無しですが。ちなみに確認ですが…これは貴方個人の願いだろうか。竜族の依頼だろうか。」


「僕個人!あ、だめ?」


零蘭さんの疑問にふう、と溜息を吐いたバアルさんは

小さく首を横に振りました。


「いえ、貴方なら直ぐにあの御方から許可をふんだくるでしょうからどのみち。」


「えへへ!わかってるぅ!」


「良いでしょう。貴方個人なら協力するのはブレイズと

セレネ、そして私のメイドです。」


「えっ君は?」


「私は魔王様の側近です。

主の傍を貴方個人の願いでは離れられません。」


「そっかぁ…ねぇ、メイドちゃん。

お名前なぁに?」


えっ私のですか!?

ブレイズさんがくれたティリア様と同じような名前を!


「い、イヴと申します。」


「イヴちゃんかぁ!可愛い名前〜♡」


「あ、はは…ありがとうございます…。」


笑顔が怖いです。


「私はイヴに使い魔を連れていかせることで状況を把握します。何かあれば手伝いましょう。」


「おっけー!

じゃあ今からブレイズ君のとこへ行こ!」


「い、今からですか?」


私が聞くと、零蘭さんは首を傾げます。


「うん!じゃないと自殺しちゃうかもでしょ?

僕自ら手を出せなくなっちゃうのは嫌だからね!」


「そ、そうですか…。」


聞かなかったことにしましょう。


「言っておきますが零蘭殿。

私のメイドはあくまで新米。

必ずブレイズかセレネと行動させて下さい。」


「ん?分かったよ。」


「なんせ魔王様の大のお気に入りを借りましたのでね。

丁重に、くれぐれも無理させないようにして下さいね。」


「…君もこの子大事にしてるでしょ。

僕そんな薄情じゃないよん。さ、いこ!」


私の手を引っ張って零蘭さんは部屋から出ました。

とても楽しそうに。





「はぁ…坊ちゃんの願いを叶えねばならんな…

蜥蜴め、恨んでやるからな。」

バアルがぴーちゃんにも嫌われているのは動物に好かれないオーラを感じ取られたからです。

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