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第63話『逆に吃驚』

新年あけましておめでとうございます!!

年内に話を書き上げようと思っていたのですが安定の間に合わなさでした!!!

まだまだティリア様とユムルちゃんを

見守って頂けると嬉しいです!!

今年も貴方の暇つぶしになれますように!!


バアルから見回りを一任されたレンブランジェとフレリアは未だにある天使の梯子を睨みつけていた。


「のうフレリア。

流石に何かあった時の為ちびっ子の姿は解いた方が良いかのう?」


「あぁレンブランジェ。

流石に何かあった時の為ちびっ子の姿は解いた方が良いだろう。」


「ふむむ…あ、そうじゃ!

本来の姿でユムル様を驚かそうぞ!」


「むむむ!それは名案じゃな!」


「「どんな顔をするか楽しみじゃ!!」」


そう言って双子は空中で一回転をすると、金色の長髪姿の男性と女性の姿になった。


「おぉ!

やはり本来のフレリアは愛いのう〜!」


「おぉ!

本来のレンブランジェは男前じゃのう〜!」


「「では、梯子が消え次第お楽しみじゃ!」」



同時刻、ユムルの部屋にて。

肆季が静かに口を開く。


「静かですね。」


「そっすね。

ユムル様に害が無きゃ良いんすけど。」


アズィールは話しながら窓を覗く。


「あ、あれは…天使の梯子?!」


「「!」」


天使の梯子と聞き、肆季とシトリも覗き込む。


「また随分堂々としてますね。」


「グルルルル…ッ

こちらは条約に従っていると言うのに…!」


「て、てんしのはしご…?」


ついユムルと離れたシトリは光の速さで傍に戻り、説明をする。


「ご主人様、天使の梯子はですね。

忌々しい天使種の中の希少種が放つ威圧の光です。」


「天使種さんの中の希少種の光…ですか。」


「はい。

希少種とは天使種上位クラスの奴の事です。

威圧の光と言うだけで本当にそれだけなのですが…

並大抵の者は威圧に負け、頭を垂れます。」


「わ、私…怖いですけど…へ、平気です。」


「それは恐らく、ティリア様のお力ですね。」


「ティリア様の?」


「えぇ。魔法をかけているのですよ。

近くにおらずとも、貴女様を守れるように。」


「ティリア様…」


胸の辺りで手を押さえ、心做しか嬉しそうに下を向くユムル。

シトリは少し複雑な思いを持ちながらも傍を離れない。


「流石若様だなぁ。」


複雑な思いを持っていたのはシトリだけではなく、

アズィールもだった。

しかしユムルは再び首を傾げた。


「あ、あの…条約とは…何ですか?」


シトリはユムルの手を取り、説明をする。


「条約はですね、天使種対悪魔種の戦争が起こり…お互い1歩も譲らなかった結果です。

所謂引き分け、ですね。」


「引き分け…」


「えぇ。

天使種は空という領土を貰った代わりに、

二度と他種族には関わらず干渉しないという条約を結んだのです。言わば不可侵条約ですね。」


「なるほど…」


納得しているユムルにアズィールは言葉を追加する。


「ちなみに、天使種が手を出してこないか監視するためにゲートというものが空と此方の境目にあるのですよ!」


「ゲート…あ、ルルさんがいらっしゃる…」


「そうです!

ルルさんは強いから監視しながらもし天使種が攻撃を仕掛けてきた場合ティリア様に知らせ、その間に食い止めるという役割を担っています。」


説明役を奪ったアズィールを睨みつけるシトリ。

ユムルはアズィールがそんな視線を受けているとは知らず質問を続ける。


「あ、あの…天使種さんは幻影さんや本物さんがいらっしゃいましたが…」


「そこなのです。

何故天使種が此方へ潜入出来たのか…ルルさんの目を掻い潜る方法…」


「あの海竜殿はサボり癖がありますからね。

よく食べ物を口にしてましたし、彼は。

ボクはご主人様のお傍に居られるなら空腹でも構いませんけど!」


「い、いけません。

ちゃんと食べましょう。」


「はぁい!

嗚呼ご主人様はなんとお優しいのか!!」


そんなやり取りを肆季は微笑みながらも黙って見ていた。


(ただ、確かに不思議なのですよね。

何故天使種がゲートを抜けれるのか…

そも、改めると条約が不平等ではないか?)


肆季は窓に触れ、薄くなり始めた梯子を見ながら思考を巡らせる。


(深くは知らないが天使種には領土と条約を。

対する此方は条約のみ。

負けたのなら兎も角、引き分けのはず。

天使種が随分と利益的だ。)


「そーいえばシエルさんってルルさんの相棒ですよね?ルルさんの状況とか知ってるかも!」


「ボクらが知ってどうする。

ボクらがそれを知る時、既に王はご存知だ。

貴様に何かやる事があるのか。」


シトリの言葉に何も返せないアズィール。


「うっ…それは…確かに…」


「少しは考えろバカ猫が。」


「ぐぬぬぅっ!」


「シトリさんお口が悪いですよ…!

そんなお口は、めっ!です。」


「はぁいっ♡

ボク、事実を言った迄なのですけどね!」


「なーんでこの狗がユムル様のお世話係になってんだか!」


「なら私と変わるかい?アズィール。」


突如聞こえた謎の声。

声質から男性なその声の主は姿が見えない。


「この声…」


シトリが気づいたように呟くと、

目の前に金髪の燕尾服姿の男性が現れた。


「くふふ、お久しぶりです、皆の衆。」


「あ!レン…」


男性はアズィールを鋭い視線で睨みつけユムルには分からないよう威圧を掛ける。


「ッスゥーーー…(こっっっえぇええッ!!!!)」


無表情に見えて目を丸くしているユムルを見据える彼はにっこりと微笑む。


「ユムル嬢、ご機嫌いかがですか?」


「あっえっと…はい、げ、元気です…?」


「それは何より。

お噂は予予(かねがね)。可愛らしい御方ですね。」


「お、お噂?」


「えぇ、皆が噂してましたよ。

我等が王が見初めた可愛らしい人間だと。」


「ぁぅ…それは違…」


俯いて否定をするユムルに耳を近づける。

その顔は酷くにやけている。


「ん〜?

何か言いましたかえ〜?

私こう見えて結構な歳でして。」


「うぅ…あのぅ…し、シトリさぁん…」


「はいご主人様!お任せ下さい!

レン…」


「伏せろ駄犬が。」


「あぁっ!!さ、逆らえませぇん!!」


氷のような視線と圧を受け至極嬉しそうに床へ倒れ込むシトリ。


「えぇえ…っ!?」


「悲しいですねぇ。

このような狗に助けを請おうとは。

私の何がいけないのです?」


彼は1歩1歩ゆっくりとユムルに近づいていく。

ユムルは後ずさり、口篭る。


「えっとぉ…(そ、その笑顔が怖いです…!)」


「貴女はティリア様の何処が好きなのです?」


「えっ!?」


驚きの質問を受け、ユムルは思わず足を止める。


「彼はそれはもう美人ですからね。

黄色い声が凄い凄い。」


「……。」


「それに、縁談が沢山ありました。」


「…!」


ユムルの脳内にリゼットが思い浮かんだ。


「しかしそれを断り続けた。

そんな彼が人間の貴女を選んだ。」


「…」


「彼は貴女の良いところを沢山、飽きるほど使用人にお話ししてますよ。

例を挙げましょうか。まずは…」


「だっだだだ大丈夫でしゅ!!」


ブンブンと頭を横に振るユムルの頬に手を添えて顔を近づける彼は楽しそうな笑みを浮かべる。


「そう仰らずに。えっとですね…」


「お、お待ちください!!



レンブランジェさん!!」



「んっ!?」


自分の名に思わず驚き、手を止めてしまった彼をユムルは怯えながら見つめる。


「れ、レンブランジェさんですよね…?」


「……驚いた。

見た目も声も違うと言うのに…

よく気付いたのうユムル様や。」


話しても良いのだろうか、と言うような顔でカーペットを見たあと、レンブランジェに目を向けた。


「御髪の色味と、口調、雰囲気が何となく

レンブランジェさんだと思いましたので…」


「髪の色も変えるべきじゃったか…。

いや、口調はおかしくないか?

儂ブレイズみたいに話したもん。」


「た、たまにあった今のレンブランジェさんのような口調で…」


「それに、くふふって笑うのレンブランジェさんかフレリアさんですし。」


アズィールの一言に手を口元に添える

レンブランジェ。


「ぐぬ…

知らぬうちに癖が出てしまっていたのか。

それに雰囲気とな。少し圧を掛けて分からんようにしとったのじゃが。」


「それです…小さな姿でもそれがありましたから、

覚えていたというか…なんと言うか…」


「なんとバレバレじゃったか…。

フレリア〜!中止でおじゃる〜!!

バレたぞよ〜!!」


レンブランジェが天井に向かって手を振るとメイド服姿の大人になったフレリアがぽふんと音を立てて現れた。


「なんじゃと!

何をしておるレンブランジェ!

お主が驚いてどうする!!」


「いやぁ面目ない!」


「お二人共、

ユムル様に何しようとしたんです?」


アズィールの質問に双子は顔を見合せ、フレリアに肘で脇腹を小突かれたレンブランジェが説明した。


「我等本来の姿を見せて驚かそうかと…

他人のフリをしてあんなことやこんなことを聞いて

ニヤニヤしようぞって話しとった。」


続けてフレリアも窓を見ながら口を開く。


「天使の梯子も消え失せたしの。

ユムル様の驚く顔が見たかったのじゃ。」


「ついでに坊ちゃんのことも聞きたかった。」


「うざったい野次飛ばしたかった。」


「いや何してんすか。」


「はわわ…」


怯えるユムルを横目にレンブランジェは肆季を見る。


「それはそうと。

お主ら、ゲートの話をしておったな。」


「えぇ。

天使種が何故入れるのか、

ルルメル=レヴィアタン殿の目を掻い潜る方法は

何かと。」


「1つ、我等の考えがあるのじゃが。

のうフレリア。」


「そうじゃの、レンブランジェ。

あくまで我等双子の推測じゃがの。」


「そ、それって…」


アズィールに頷いた双子は声を揃え


「「元人間が天使側に付いた可能性。」」


と言った。彼らは続けて話す。


「ゲートにはルルメル以外にも居る。

元人間だってな。」


「バアルの報告も考えると…」


「元人間が裏切った可能性が高い、ですか。」


結論を言った肆季に頷く双子。

ユムル、アズィール、シトリは各々目線を

各所に向ける。


「…」


「グルルルル…これだから人間は…!」


「おいシトリ!

ユムル様だって人間なんだぞ!!」


アズィールに言われてハッとしたシトリは慌ててユムルの正面で頭を下げる。


「っ!も、申し訳御座いませんご主人様!

決してご主人様の事を悪く言った訳では」


「だ、大丈夫です。

慣れてますので!」


「ご主人様…」


無理して笑みを浮かべたユムルを見て傷心したシトリの前に出たフレリアは、ユムルの両肩に手を置き、目線を合わせる。


「良いか、ユムル様。人間は醜い。

私利私欲の為に同族をも殺す。」


「はい。」


「しかし、たっっっっくさんの人間を見てきた我等はよぉく分かる。

お主がとても優しい子だと。」


「優しい子…?」


「うむ!

ユムル様の良い所は沢山あるが特に!

そんな優しさがティリア坊ちゃんの気に召したのかもしれぬな!」


「そんな事は…」


「あるのじゃ!

これからティリア坊ちゃんとはっぴいらいふが待っているのじゃ!

故にユムル様は安心して過ごすが良い。」


フレリアはユムルから離れ、両手を広げる。


「お主が安寧に過ごせるよう動くのは妾達じゃ。

ドンと任せよ!」


「は、はい。」


「えぇ!このシトリ、

ご主人様の盾に成れるのなら本望です!」


「妖種も微力ながらお手伝い致しますよ。

羅刹様はユムル様を御守りしろと仰るでしょうし。」


「シトリさん…肆季さん…」


少し安心したように見えるユムルにフレリアは念を押す。


「ただ、油断はするなよユムル様。

お主は誰が元人間か分からぬだろう。」


「は、はい…分かりません。」


「故に、部屋以外は我等の内1人以上を連れること。

何処かへ移動するのなら呼び鈴をちゃんと鳴らすこと。宜しいか?」


「わ、分かりました…。」


「ユムル様、俺らはいつ呼び出されても絶対飛んできます。

迷惑じゃないかとか考えないで下さいね!」


「頼られるのは本望じゃよ。」


笑顔を向けるアズィールとレンブランジェに頷くユムル。

肆季も笑みを浮かべ頭を下げる。


「では私は羅刹様の元へ戻ります。

お邪魔しました。」


「あ、ありがとうございました!」


「いいえ。

貴女とお話出来て良かったです。」


そう言った肆季はドアから退出した。


「天使種さんが来なくて良かったです。」


「大丈夫です!来やがったらボクの鋏で粉々に潰しますよ!」


「けど若様これからどうするんだろうな。」


「…どうか争いが起こりませんように…。」


ユムルの静かな願いは微かにティリアへ届いた。

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