第61話『天使対策』
前話からいつの間にか1ヶ月が経ったとは…!
時間が…早すぎる…。
読んでくださる皆様が楽しめますように!
「おぉー?
今日は特に立派な水門があるではないか。」
「おやおや、本当ですねぇ。
ウェパル殿がやる気を出してるご様子。」
「言っておきますが矢文は放ちませんからね。
私が殺されかねない。」
「雅若はケチだなぁ。
ま、此処で突っ立っておれば…」
『羅刹さまぁ〜
ティリアさまが入りなさいですってぇ〜。』
「あいわかった。
行くぞ肆季、雅若。」
「「は。」」
…
「…(イライライライラ)」
「坊ちゃん、貧乏ゆすりしない。」
「っさいわね!
こちとらユムルに会えないこの時間を耐えるのに必死なの!!」
客室へ先に入るんじゃなかった!
あーーやだやだ早く終わらせてユムルに会いたい!
「バアルさん。
何かティリア様いつも以上に不機嫌では?」
「お嬢様と引き剥がした反動だ。
気になるなら貴様が何とかしろ、私は知らん。」
「えぇー…?
(つまりバアルさんのせいじゃん…。)」
「ブレイズ、言いたいことがあるなら」
「はっきりと、でしょう?
やだなー言いたいことなんて(沢山は)有るわけないじゃないですかー!でも少しだけ…」
ベルとブレイズが何か話してる。
コソコソ話されると気分が悪い。
「ティリア様。」
ブレイズが話しかけてきた。
「何よ。」
「これはユムル様をお護りする為のお話ですよね。
冷静さを失ってはなりませんよ。」
お小言かしら。
「言われなくてもわぁってるわよ。」
「…杞憂でしたね。(こっっっわ。)」
ブレイズを睨みつけると扉の向こうから声がした。
「えっとぉ〜ノック3回してぇ…」
ガンガンガンッ
ノックの音かしら…?
「ティリアさまぁ、羅刹様とぉ、
肆季さんとぉ、雅若さん連れて来ましたぁ」
ウェパル…
今回は水浸しじゃないでしょうね。
「…入りなさい。」
ブレイズがドアを開けると珍しく濡れていないウェパルが先頭にいた。
「…」
「…」
何で動かずアタシを見つめてんのよ…。
「ウェパル突っ立ってないで。
羅刹達が入れないわ。」
「あ、そうでしたねぇ。
どぞ、御三方。」
羅刹だからとはいえ少し失礼よウェパル。
後で言っておくようにベルに視線を送った。
彼も目を閉じ、眉間に皺を寄せて頷いた。
「ははは、相変わらずだなクラゲさんは。」
羅刹は笑ってくれた。良かった、羅刹で。
「座って。」
「失礼する。」
羅刹が座り、肆季と雅若はソファーの後ろに立つ。
ベルもアタシの後ろに立った。
ブレイズは紅茶を入れてアタシ達の前に置いてから後ろに立つ。
羅刹はキョロキョロと辺りを見回している。
「何だユムルちゃんが居らぬではないか。」
「貴方の手が届かないとこに居るわよ。」
「別に喰いやしないが!」
「何かされても困るんでね。」
……羅刹が黙ってアタシを見ている。
「何よ。」
「いや?いつにも増して不機嫌だなぁと。
さてはユムルちゃんと引き剥がされたな。」
うぐ…何故分かるのかしら…。
「べ、別にアタシはいつも通りよ。」
「そういう事にしておいてやろう。」
ニヤニヤ顔うっっっざ!!
「じゃあ配慮も遠慮も無く話せる訳だ。」
「えぇ、天使種について話がしたいの。」
「急に動きが見えたな。
まず、それに関しての心当たりは?」
心当たり…。
「ユムルと出会ったこと。」
「彼女は間違いなく生身の人間だ。
だが人間たったの1人だ。」
「でも人間を手駒にする種族よ。
ユムルも手駒にする気なんじゃないの?
アタシを殺す為に。」
アタシがそう言うと羅刹は腕を組む。
「…それは有り得るな。
しかしどうも引っかかる。」
「どういう事?」
「それだけでは無い気がするという事さ。
あのレウ=ブランシュが来たんだぞ。
蜘蛛さん、レウは戦う前提だったか?」
「いいえ。
“喧嘩をしに来たわけじゃない”
“お嬢様を今度迎えに来る”
と言ってました。」
は?何それ。
「アタシそれ聞いてないわよ!?」
「言ってませんから。」
「はぁー!?」
何で黙ってたのよ!!
「まぁまぁ…あのレウを向かわせたくせに戦うつもりがないとはこれ如何に。」
「不測の事態に備えて〜とかじゃないの?
こっちにはベルとかシエルが居るんだし。」
「それだけなら良いのだがな。
…まだ分からぬことばかりだ。」
「羅刹様。」
羅刹の後ろに居た雅若が徐に口を挟んできた。
「何だ?」
「お嬢を見た天使種ならばラスト=アルヴィムもかと。」
「ラスト…妖精の森で会ったとか言っておったな。
まさか、この調子で1人ずつ来るのではなかろうか?」
「…有り得るわね。
ベル、ラストもレウと同じこと言ってた?」
ベルは首を傾げた。
「…いえ、そう言えばレウ=ブランシュが勝手にお邪魔したと言ってました。
レウはイレギュラーだったかと。」
「「う〜ん…」」
ほんと、考えが読めない。
そもそも何でユムルを見に来るだけなのかしら。
城も壊されることは無いしまだマシだけどさ。
「バアル殿、ブレイズ殿。」
あら、肆季もいきなり口を開いたわ。
振り返るとベルもブレイズも呆れ顔になっていた。
「おや、肆季殿も感じましたか。」
「嫌ですねホント。
この話をしている最中なのに。」
外から…何この感じ。
ゾワッと嫌な気配のようなものが身体にまとわりつく感じがする。
「坊ちゃんもお気付きですか。」
「この感じ、天使種だな。
無断で立ち入ろうとは礼儀がなっとらんな。」
と羅刹は言う。そうだ天使種だ。
レウが来た時と似ている気配。
となると…!!
「ユムルが危ない!ベル!」
「は。ブレイズ、坊ちゃんを頼んだぞ。」
「はい!」
「肆季、お主も向かえ。」
「畏まりました。」
「羅刹、アタシ達も」
「いや、ダメだ。
今は情報も得ねばならん。
我等が近づけばすぐさま逃げられる。」
「でもベルと肆季は向かったわよ!
結局一緒じゃない!」
立ち上がろうとするとブレイズが口を開いてアタシを止める。
「ティリア様。
恐らくお2人が此処に居るから天使種は来たのです。
ですから、大丈夫。
向かったお2人ならば尚のこと。」
「っ…」
何もしないで此処に居ろってこと?
「ユムルちゃんの為だ。我慢しろ、小童。
ウチだって行きたいのだ。」
「………分かったわよ。
でも天使種が居なくなったらユムルの元へ行くから。」
ユムル、ベルと肆季に任せてごめんね。
でも、何かある前にアタシがこの手で護ってあげる。絶対に、絶対に。
信頼していない訳じゃないけど少しでも無事で居て欲しいから…。
「シエル。」
「シエル=エリゴマルコシアス、此処に。」
「ユムルを護って。
ベルと肆季が向かってる。」
「畏まりました。」
お願い、早く天使種を追い出して。
「次の話は何故天使種がこちらに来れるか、になるな。小童。」
「えぇそうね。」
…
「羅刹様来ましたね。
ユムル様、部屋の外には出ないようにしましょう!
俺も居るんで!」
アズィールさんが私に微笑んでくださる。
「はい。
お邪魔しないようにしないとですね!」
「うーん…
お邪魔というかユムル様を守る為ですね。」
「そうじゃの。
では我は見回りしてくるでおじゃー。」
「そうじゃの。
では妾もついて行くのでおじゃー。」
レンブランジェさんとフレリアさんはお出掛けに
なられるのですね!
「あ、い、いってらっしゃいませ!」
「うむ、行ってくるぞい!」
「あぁ、行ってくるぞい!」
手を振るとぽふんっと音を立てて消えてしまいました。
「…」
アズィールさん、笑みを絶やして窓を見ています。
「アズィールさん?」
「ユムル様、何か胸騒ぎするんスよ。
やー…気のせいならいいんですけど。」
「そうなのですか…。
ティリア様、ご無事でしょうか。」
「んまぁ羅刹様が変な事するとは思いません。」
確かに…。
「何も無いと良いんだけどなぁ…。」
「私なら大丈夫ですよ。」
「若様、仰ってましたよ。
ユムル様は死ぬかもしれないって告げても驚かなかったって。」
「いえ…驚きましたよ。
皆様とお会いして…初めて死に恐怖を覚えました。
それに驚きましたから…。」
「…(驚くとこがそこかよ…。)」
「この身に余る幸せを頂いて贅沢すぎるかもしれませんが…許されるのなら、皆様とまだ御一緒したいです。」
「ユムル様…」
「お嬢様!バアルです、開けてください!」
急に扉からお声が!!
「ばっバアルさん!?」
「ッこの嫌な感じ…!
早速予感が当たっちまったか!?
バアルさん今開けます!!」
咄嗟のことで動けなかった私の代わりにアズィールさんが扉を開けてくださる。
開けた直後、バアルさんが私の元へ駆け寄って下さいました。
「お嬢様、お身体に異変等は何もありませんか。」
「な、何もありません…!」
「失礼致します。」
肆季さんです…!
肆季さんもいらっしゃってたのですね!
「ユムル様。
私も貴女様をお護りすること、お許し下さいまし。」
私を護る…?
「今から何が起こるか分かりません。
坊ちゃんの御命令により、貴女様をお護り致します。」
ティリア様…。
「は、はい。
お、お願い致します…。」
何が起こるか分からないとは…
な、何事なのでしょうか…!




