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第60話『蜘蛛の気遣い』

もう60話です!

早いなぁ…遅筆なのですけど。

お優しい評価、見てくださる皆様のおかげです!

本当にありがとうございます!!

カメラが…もう無い?


「え!?何でぇ!?」


驚嘆する私達にレンブランジェさんとフレリアさんは説明してくださる。


「何でって…リフェル様の火葬の際に好きな物を棺に入れたであろう。」


「その中にカメラを入れたんじゃよ。」


魔界でも弔いは火葬なのですね…!


「えぇ!?そうだったんすか!?」


「うむ、そうだった。」

「あぁ、そうだった。」


何方かがカメラを…

あれ、カメラってきちんと…


「ユムル様、火葬を知っている様だな。」

「カメラは最後まで燃えるのかという顔だな。」


バレてました。


「人間の使う焔と一緒にしたらいけない。」


「魔界の焔は何でも燃やす。

しかし骨は溶かさん。骨に触れたら焔は自然に消えるんじゃ。」


自然に…凄いです、魔界の焔…。


「そっかぁ…リフェル様からお借りしようかと考えてたんだけどなぁ。」


「何故じゃ?」

「何でじゃ?」


「いや、ユムル様撮りたいなって。」


アズィールさんの言葉に目を輝かせるお2人。


「それは良い案じゃのうフレリア!」

「これは良い案じゃレンブランジェ!」


「でっしょー?」


にししと笑い手を頭の後ろで組むアズィールさん。

御三方は自分を撮るわけではないのにどうして楽しそうなのでしょう?


「…っ!」


楽しそうと思った矢先、アズィールさんから突然笑顔が消えました。


「おや…」

「ふむ…」


レンブランジェさんとフレリアさんもです。

何でしょう、私全く分かりません。


「ユムル様、どうやらブレイズが探しているようじゃ。」

「悪魔の力を使うほどブレイズが探しているようじゃ。」


悪魔の力?

首を傾げると同時にふわりとバターの良い匂いが鼻を擽りました。


「ユムル様みーっつけた!」


声が聞こえた後ろを振り向くとブレイズさんが籠を持って立っていました。


「ブレイズさん!」


「お部屋にお伺いしたのですがいらっしゃらなくて。良かった見つけれて。」


「悪魔の力を使ってまでとお伺いしました。

どうなさったのですか?」


「エッ!?」


驚いた顔でブレイズさんは御三方を見ました。


「「「(サッ)」」」


皆さん同時に顔を逸らしました。


「や、やだなぁ、悪魔の力なんて使ってませんよ〜?

気の所為でしょう?」


そうなのでしょうか。御三方が嘘を()いているようには思えなかったのですが…


「ゆ、ユムル様にコレを渡したくて!

出来たてなので特に美味しいですよ!」


そう言って籠を渡して下さいました。

中には様々な種類の焼き菓子が。

ふぁあ…とても良い匂いです!


「ふふ…目を輝かせて下さるとは。

作ったかいがありましたよ〜!」


「嬉しいです…!」


するとフレリアさんがふわりと浮かび、籠の中のクッキーを手に取ると私に笑顔で差し出してくださった。


「ユムル様あーん、じゃ!」


今ここで!?


「あ、あー…むっ」


「ど、どうです…?」


ホロホロ崩れるのにサクサクしてて…上品な甘さ…


「とっても美味しいです!」


「やった!!」


ブレイズさん、ガッツポーズしました。


「俺の願いは叶いました。

美味しいって言って頂けて満足です!」


「本当に美味しいです!

ありがとうございます、ブレイズさん!」


「いえ!では俺はこれで!」


ブレイズさんは小さく手を振ったあと、

音もなくそこからいなくなってしまいました。


「そういえば今日は羅刹が来るそうな。」

「彼奴も人間界で着物などを揃えておる。

カメラのこと聞くのも良いかもな。」


羅刹様が見えるのですね!

アズィールさんと目を合わせ頷いた。


「分かりました!

お話出来る機会があればお伺いします!」


「うむ、そうするが良い!」

「うむ、そうすると良い!」


「ま、ユムル様がお願いって言えば若様はいつでも何でも二つ返事でOKでしょうけどね。」


「そんなことは…」


「あら、当たり前じゃない。

ユムルのお願いは何だって叶えてあげる。」


いつの間にかティリア様がアズィールさんの真後ろに!!


「ほわあ若様っ」


「「おぉ、噂をすれば!」」


「ユムルぅ〜会いたかったわぁ〜!」


「ひょえっ」


ティリア様が私をむぎゅっとなさいました!

嬉しいのですがく、苦しい…


「ユムル〜!

ベルったらね、鬼の形相でアタシを睨みつけるの!

アタシちゃんとやってるのに!」


「「バアルはちゃんとやってたら怒らんて。」」


レンブランジェさんとフレリアさんの言葉にティリア様は肩を震わせます。


「ち、ちゃんとやってたわよ!」


「過去形じゃないですか。」


「アズお黙り!ベルから逃げてる内に足りなくなったユムル補給してんのよ!!

至福の時を邪魔しないで!!」


「うぃっす。(あ、これガチのヤツだ。)」


「あーー離れたくない〜!!

ユムルとずっとこうしていたぁい!!」


『あぁそう。

それならば我が蜘蛛の糸で御二人を動けないほどキツく巻き付けて差し上げましょうか。』


バアルさんのお声です!


「ベル!いったい何処か…ら…」


次の瞬間、ティリア様が私から離れました。

しかし私の右手とお腹を優しく押さえ、引き寄せて下さいました。

すると私の視界にはレンブランジェさんとフレリアさん。そして、天井から糸を垂らして降りている蜘蛛さんが。手のひらくらいの大きさです。


「狡いわベル!蜘蛛の姿で現れるなんて!」


『私の別の姿なだけで狡くないでしょう。

嘘吐いて逃げる貴方の方がよっぽどです。』


「うぐっ…」


ティリア様は嘘を吐いてお逃げに…

ですがティリア様は嘘を吐くのが苦手では…


『ほんっと、嘘が下手なのによくもまぁ嘘を吐こうと思いますね。』


バアルさん、結構怒っていらっしゃる…。


『羅刹殿がそろそろ見えます。

早く部屋へ向かってください。』


「ユムルと一緒にちゃんと行くもーん。」


え、私もですか!?


『貴方はまたそうやってお嬢様を…はぁああ…っ』


大きな溜息です…。


「バアルよ、好きにさせたれ。」

「バアルよ、勝手にさせたれ。」


レンブランジェさんとフレリアさんがバアルさんの周りをくるくる回ります。


『ですが…』


「バアルさん珍しいっすね!

若様がバアルさんの言う事聞かないのしょっちゅうなのに今日は追いかけるなんて。」


「ちょっとアズ!

ユムルの前で変なこと言わないで!」


『羅刹殿がいらっしゃると何度言わせる気ですか、我儘も大概になさい。』


……バアルさんが怒っているのはいつもの事ですが…

何故か今日は一段と不機嫌な気がします。


「お主何故そんなにもカリカリしておる?」

「お主何故そんなにもイライラしておる?」


私の代わりにお2人がお聞きになる。

バアルさんは再び溜息を吐きました。


『さっさと終わらせたいからです。

あの(かた)は何仕出かすか分かったもんじゃありませんから。お嬢様を置くなら尚のこと。』


私のせいでしたか…。

申し訳ないです、本当に。


「あの〜ユムル様?

バアルさんはユムル様にじゃなくて羅刹様に怒ってるんですよ?」


アズィールさんが心配そうに私を見てくださる。


「でも間接的には私が…居るから…

バアルさんが大変に…」


『お嬢様、やはり貴女は部屋に居なさい。』


「ベル…」


「はい、分かりました。」


『坊ちゃん、行きますよ。』


「分かったわよ…

ユムルを危険な目に遭わせたくないしね。

良い子にしててね。可愛いユムル。」


ティリア様は手を離し、

私のおでこに優しくキスしてくださる。


「はわ…。」


驚いているとバアルさんは人型に戻り、手を振って

背を向けたティリア様の少し後ろを歩き始めました。

しかし、バアルさんだけ足を止めました。

そして振り返らず


「お嬢様。」


私を呼びます。


「は、はい。」


「我儘で暴君な坊ちゃんのお世話よりも大変なものなぞありませんから。」


「え」


そしてすぐにティリア様のお傍へ行かれた。


「おやおや珍しい。

あのバアルが態々言うとは!」


フレリアさんの仰る意味が少し分からず、


「あの、どういう…」


とつい伺うと、レンブランジェさんがにぱっと笑い説明してくださった。


「ユムル様は自分のせいでバアルが大変だ、

そう言ったであろう?」


「は、はい…本当ですし…」


「それは違うぞ、と言ったのじゃよ。」


「あ…」


「にししっ…素直じゃないですよねぇ。

それ言おうとしてタイミング逃したから。

ユムル様が心配って思って言葉の順序間違えたんでしょーね!」


アズィールさんがケラケラ笑う。

バアルさん…私の心配してくださってたのですか…。


嬉しいです…。


「ひぃっ!!?」


急にアズィールさんが肩を震わせました!


「くははっ!バアルが殺気を放っておる!」

「くふふっ!バアルが悪意を持っておる!」


殺気と悪意…もしかしてアズィールさんが笑ってらっしゃったのにお気づきで…


「さ、ユムル様。

我等と共に部屋へ戻ろうぞ。」


レンブランジェさんが私の手を握って下さり、横にはブレイズさんが作ってくださった焼き菓子の籠を抱えているフレリアさん。


「は、早く行きましょ!ねっ!ねっ!」


顔面蒼白なアズィールさんに背中を押され、

私はカメラの事を今度の機会とし部屋へ戻りました。



「…」


「坊ちゃん?」


「……」


っあーーーー!!

ユムルのおでこにナチュラルなキスしちゃった!!

恥ずかしい!!けど嬉しい!!

これで少しは意識してくれるかしら?


「(絶対お嬢様の事を考えているな。

めんどくせ、話しかけないでおこう。)」

家に居た少し大きめのハエトリグモちゃんが家の猫たんに鼻でツンッてされたり、手でそーっとパフパフしてちょっかいかけられてました。

バアルも苦労してるなとしみじみ思います…。

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