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第57話『幸せの自覚』

随分と更新が遅くなってしまいました。


見切り発車の為、お話に詰まりが出てきたのです!


でもこんな遅いながらもこの作品を見てくださった皆様には感謝感謝です。


よろしければこれからもよろしくお願い致します!

「ねーえ!!ユムルが!

あのユムルがやきもちですってぇー!!

ひゃーっ!!」


ティリア様は呼び出したシエルさんの背中をバシバシと叩きます。


「ははは、痛いですー。」


シエルさん、笑った表情のままです。


「ユムルーっ!ぎゅーってしてー!」


「えっ?わぁっ!」


急に私へ!?

ティリア様に抱きしめられる直前、シエルさんが真っ黒な翼の無事を確認している姿は見えました。


「ふふ…ユムルってばあったかいわぁ。」


「ティリア様も温かいです。」


「そう?」


「はい!」


「おやおや、随分とお熱いものを見せて下さる。

微笑ましいですねぇ!」


シエルさんがいつの間にか真横に来ており、びっくりした私達はすぐさま離れます!


「おや?もうやめてしまうのです?

王子との甘いひとときは大切ですよユムル様。」


「えっ」


「見世物じゃないっての!」


「おや?

私はてっきり見せつける為に呼ばれたのかと。」


「違うわよ!」


「そうでしたか!ではご報告をば。」


「?」


報告?


「またカロ殿がケルベロス殿に喰われたそうですよ。」


「あんのお馬鹿ッ!!」


ティリア様は杖を出してその場から消えてしまいました。あっという間でした…。


「流石は使用人思いの王子様だ。」


うんうんと頷くシエルさんに聞きたい。


「シエルさん、カロさんは無事なのですか?」


「さぁ?ただ日常茶飯事なので。

テオ殿やミコ殿なら問題は無いのですが、カロ殿だとどうも喰われるようでしてねぇ。」


「えぇ…?」


何故…??


「ケルベロス殿は王子とテオ殿の言う事じゃないと聞きませんのでね。私じゃ何も出来ないのです。」


「そんなこと…」


「私は殺す事しか能の無い者ですから!

皆さん周知の事実です。」


「そんなことないと思います。」


「やはりお優しいですね、ユムル様は。」


そう呟いて、廊下の大きな窓の1枚をふいに見るシエルさん。私も視線を追いますが特に何もありません。


「…」


「シエルさん?」


「失礼しました、気のせいです。

ユムル様はこれからどちらへ?」


「どちら…」


ティリア様もご不在ですし特に無いですね…。


「私は王子の元へ向かおうと思うのですが宜しければご一緒にどうですか?」


「あ、はい!是非!」


「では向かいましょう!」


「はいっ!」


笑顔で差し出された手を取り、ティリア様が居るはずのケルベロスさんの元へ行くことにしました。


「…」


またシエルさんがちらりと外を見た気がしましたが


「如何なさいました?」


と、微笑んでくださる。


「あ、いえ!何も!」


それこそ私の気のせいですかね。



「羅刹様。

やはり覗き見は良くないのでは?」


「何を言う雅若!ユムルちゃんと小童のらぶらぶで

あちゅーい時間が見えるのは今しか無いかもしれんのだぞ!」


「いや遠すぎて見るの私じゃないですか。

興味無いのですけれど。」


「ユムルちゃんが気になってるクセに。」


「…それは貴方様もじゃないですか。」


「何せ息子と娘みたいなものだからな。

応援したくなるというものさ。」


「はぁ…。

ま、お嬢の事は肆季も珍しく気になっていたようですし。やはり不思議です、人間って。」


「人間が不思議というよりもユムルちゃんが異常なのだ。お前も数多の百鬼夜行で分かったろう。」


「嗚呼、他者の蹴落とし合いですね。

自分だけは助かりたいという。」


「不味かったなぁ…アイツらの肉は。」


「そうですねぇ実に不味かった。」


「となればユムルちゃんは実に、最高に美味だろうなぁ…!」


「羅刹様、涎垂れてますよ。」


「はっ!

…小童め、早うせんとウチが取って喰っちまうぞ?」


「娘みたいなものだと仰ってたのに。」


「脅しだ。それに…喰うのが怖いと言っただけで喰わないとは言ってない。」


「うわぁ…あ、今シエル殿と目が合いました。

潮時ですよ。」


「ちぇー。

また後でお邪魔してやろう!」


「私はお供致しませんので。」


「けちっ!」



シエルさん、私の歩幅と速度に合わせてくださってる…。い、急がねば!


「おや。」


「ひえっ」


繋いだ手をきゅっと握られました!!

気に障ったのでしょうか!?


「私が貴女とゆっくり歩きたいのです。

どうか焦らないで。」


「はわ…す、すみません…。」


シエルさんはお優しいです。

そんな彼は私に問いかけます。


「気になったのですが…

何故ユムル様はすぐ謝るのです?」


「え…?これはもう癖というか…ほぼ私が悪いので…。」


「はて、そのような事ありましたかね?」


「?」


どういう事でしょう?


「ユムル様が悪かったこと、ですよ。

王子からはユムル様が愛らしくて堪らないと惚気られておりますが。」


「ティリア様はお優しいので、

私が悪くても許してくださるからですよ。」


「ふむ…チュチュ殿も“ユムル様ってば悪くないのに謝っちゃうんですよー!”と申してましたよ。」


あれ?い、今の…


「もしかしてチュチュさんの真似ですか?」


「えぇ!我ながら似ているかと!」


「はい!そっくりでした!」


「私、声帯模写は得意なのですよ!」


「そうなのですか!

宜しければもっと聞かせてください!」


「畏まりました!ではですね…」


それからシエルさんの声帯模写を聞かせて頂きました。凄く似ていて本人がいらっしゃるのかと錯覚、つい振り返ってしまうほどに。

バアルさんの真似をなさる時は周囲をキョロキョロ数回見回してしまいました。

でも聞かせていただいたもの全てが…


「本当に凄いです!」


「お褒めに預かり光栄です。

ヴェルメリド様の側近だった頃から皆さんを観察していたのが良いデータを生み出しました!」


「へぇ…!」


「若かりし王子の真似も出来ますよ!」


若かりしティリア様?


「聞きたいです!」


「アタシ今でも(悪魔種の中じゃ)若いんだけど。」



シエルさん、腹話術でしょうか。

お口を動かしてないのにティリア様のお声が後ろから…後ろ?


シエルさんと一緒に振り向くと、ティリア様のお姿が。


「ティリア様!」


「ユムルー!此処に居たのね!探したのよ!」


「ご、ごめんなさっ…ひゃっ!」


シエルさんが私からパッと手を離し、私はティリア様に抱きしめられる。


「今のアタシ、少しでもユムルと離れたら胸が苦しくなる病気になってるわ。

シエル、ユムルと歩いてくれていてありがとう。」


「いえ!」


「さ、ユムル。部屋に戻るわよ!」


「で、でもカロさんは…」


「もう助けたわ!行くわよユムル!」


「え?あ、あのっ」


シエルさんにお礼を伝えねばと思い視線を向けようとしましたが、ティリア様の転移が先になりお礼を言えずにティリア様のお部屋に戻ってしまいました。


「あ…」


「…」


ティリア様から少しピリピリした空気を感じます…。


「ティリアさま…?」


「シエルと随分楽しそうだったわね。」


「え」


「ユムルと手を繋いでいたシエルを見てたら何かモヤモヤして…引き離しちゃった。」


「あ…」


こういう時、なんて言えば良いのでしょう。


「ごめんねユムル。アタシ、また…」


ティリア様、泣きそうなお顔です。

私は、私は…


「ティリア様。」


「ん…?」


「私は勿論、皆さんとご一緒させてもらえるととても嬉しいです。

けれど、1番嬉しいのはティリア様とご一緒の時…だと思います。」


口にして初めて自覚しました。

私は嬉しいと思えるようになっていた事。

皆さんとお話する機会が増えていた事。

そして、ティリア様とご一緒だと幸せな気持ちが溢れてくることを。


「ゆむるぅ〜っ!!」


「えへへ…」


急に抱きつかれても今は驚きません。

ティリア様にぎゅってして頂くと身体だけでなく、心までポカポカしてきます。


「アタシね、貴女に名前を呼んでもらえるのがとても嬉しいの!笑顔だと尚更ね!」


「私もです!」


「だからもっともーっと名前を呼んで!

アタシの為に笑って頂戴!」


「ぜ、善処します…!」


「ユムルだぁいすきよ!」


「私もです!」


「え」


「え?」


あれ?私何か変な事言いました?

説明せねば。


「優しい皆さんが大好きです。

1番はティリア様です!」


「あ、友好の方ね…

でも、アタシもユムルが1番よ!」


赤面なさってすぐ項垂れてしまったティリア様ですが、私をぎゅーっとして下さる。


いつまでも続いて欲しい。

ずっとこうしていて欲しい。


ですがティリア様は魔王様。

こんな事、望んではいけないのに。

高望みにも程がありますね、私。


「ねぇ、ユムル。お願いがあるの。」


「はい、何でしょう。」


「今日さ、あのー…ユムルが良ければ…」


「?」


「アタシのベッドで一緒に寝てくれない?」


ティリア様のベッドで?

ティリア様とご一緒に寝たのはいつの間にかティリア様が私に与えてくださったベッドにいらっしゃった時ですっけ…。

突き飛ばしてしまいましたが…。


「わ、私でよければ!」


「ユムルしか嫌よ。」


「ぁ、ぅ…」


面と向かって言われると恥ずかしいですね…!


「ユムルと出来るだけずぅっと居たいの。」


「う、嬉しいです…!」


「ふふ、アタシもよ。

さ、もうすぐ夕食よ!

それまで着せ替え人形になって欲しいの!」


「喜んで!」


ティリア様の魔法で服がポンポン変わって、

着替える工程が無く全く苦ではありませんでした。


嗚呼、この2人きりの時間がとても幸せです。


嬉しさを噛み締めているとドアが3回ノックされました。


「坊ちゃん、バアルです。」


バアルさんです!


「入りなさい。」


「は、失礼致します。…おや。」


バアルさんと目が合いました。


「お嬢様もいらしたとは。

これで手間が省けましたね。

夕食の準備が整いましたのでいらしてください。」


「は、はい!」


「よし、じゃあその服着て行きましょ!」


「分かりました。」


今身に纏っているのはワインレッドのワンピース。

黒いフリルが可愛い逸品。

頂いたメイド服と同じ色合いで嬉しいです。

お食事の時に気を付けないと…!



「あれ?ティリア様ご機嫌ですね。」


ブレイズさんがお料理を運びながらティリア様をご覧になります。


「んふー♪わかるぅ〜?」


「えぇ、笑顔が眩しいので。」


「んっふふ〜♪」


本当にご機嫌です。


「ユムル様関係だとは思うのですがね?」


悪戯っぽく笑って私を見るブレイズさんはどこか楽しんでいるように見えます。


「わ、私ですか…」


「ティリア様がこんなにご機嫌なご飯はいつぶりでしょうかねぇ。」


お料理が全て出され、いただきますと挨拶してから口に運ぶ。いつ何を食べてもとても美味しい…!


「今日も美味しいです!」


壁際に立っているブレイズさんに告げると、微笑みを返してくださった。


「それは良かった。」


ティリア様も沢山面白いお話をしてくださって、とても楽しいお食事となりました。



その後、チュチュさんとお風呂に入って歯を磨き、枕を持ってティリア様のお部屋へ。



ドアを3回ノックっと…


あれ?何故でしょう。

急に緊張してきました…!

しかし聞こえるドアが開く音。


ま、待ってください心の準備がっ!!

シエルは王子と言うのが癖になってしまい、


「言い方を直して!」


と言われれば


「はい、承知しました!(直す気は無い)」


という奴です。

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