第52話『妖精王オベロン』
また心がポカポカになる程の優しい評価を頂きました!本当にありがとうございます!とてつもなく嬉しくて猫をわしゃわしゃしました。殴られました。
皆様が見てくださっている、それが何より嬉しいです。皆様の心に、ティリア様やユムルちゃん達みんなが存在出来たことを大変嬉しく思います。
(この子好きだなぁと思って頂けたら飛び跳ねます)
皆様が見てくださるおかげでまだまだお話は続きますのでこれからも見守って頂けると嬉しいです!
末永くよろしくお願いします!
ティリア様と手を繋ぎ、お城の外へ出ました。
後ろにはバアルさんと雅若さん、シトリさんがいらっしゃいます。
ティリア様は変装なさらずそのままで、杖を構えました。
「さ、森の目の前まで一気に行くわよ。」
皆さんはティリア様を囲むように立ちます。
「それっ!」
杖が振られ、一瞬の内に辺りの景色が長閑な森へと変わりました。
この森、不思議です…植物さん達がキラキラしていてお昼のように明るいです。
木漏れ日も気持ちが良い…。
「うーん…相変わらず戦意が欠ける綺麗な場所だこと。ユムル、どう?」
「凄く素敵な場所ですね!」
「私は落ち着きませんね。」
「眩しくて目が痛いです。」
「花の匂いでクラクラします。」
バアルさん、雅若さん、シトリさんも口を開かれるとティリア様は
「アンタらには聞いてないわよ!」
と怒ります。はわわ…。
【おや、この気配はティリア王子…
いや、魔王ティリア様かな?】
「えっ!?」
森一面に響くような声…。
とても優しそうな男性のお声です。
ティリア様は上に向かって笑いかけます。
「やっほーオベロン!久し振りね!」
【えぇ、お久しゅうございます。
突然の訪問に驚きましたよ。】
「ごめんね。
どうしても話したいことがあってさ!
今いいかしら?」
【おや、それならば直ぐにでも。】
すると茂みだった場所が一瞬にして拓け、ピンクや黄色の小さなお花が集まった可愛らしい階段へと姿を変えました。
【どうぞ此方へ。それと人間のお嬢さん。】
わ、私ですよね…!
ティリア様が何も仰らないのでバレても大丈夫なのですよね…?
「は、はい!」
【いらっしゃい。私達妖精種は貴女を歓迎致します。花の階段を歩く間は決して、魔王様の手を離さぬようにね。】
「はい、分かりました!」
【では、お待ちしています。】
少ししても声が聞こえなくなったのでティリア様をちらりと見てしまう。
私の視線に気付いたティリア様はにこりと微笑み、
ぎゅっと手を握ってくださった。
「いきましょ、ユムル!」
「はい!」
お花の階段は踏むのが申し訳なくなります。
が、1歩踏む事に花びらがフワリと舞って楽しくなってしまう自分も居ます…。
「ユムル、オベロンも注意してたけどさ。」
「はい。」
「妖精の森はね、妖精種が作った道じゃないと永遠と迷い込んでしまう怖い森でもあるの。」
「ひぇ…。」
「だから絶対、アタシから離れないでね。」
「は、はひっ!」
きゅ、急に怖くなってきました!
絶対ティリア様と離れません…!
「見えてきましたね。」
私達よりも数歩先に進んでいたバアルさんと雅若さんがそう仰いました。
もうすぐ、オベロン様に…
緊張してきたその時、目の前にお花で出来た豪華な扉が現れました。
扉の前には門番さんが。
門番さん達は武装をし、薄い蝶々のような綺麗な羽根と鋭い槍をお持ちです。
【御仁を通して。】
「は。」
再び聞こえたオベロン様のお声に反応した門番さんは扉を開いて下さり、頭を下げられました。
バアルさんと雅若さんも数歩横へ移動し、
私とティリア様を先に通して下さった。
「わぁ…っ!」
森の中なのに…とても神聖な雰囲気です…。
とてつもなく大きな蔓、お花、葉っぱ…それぞれが装飾や柱を造って存在しているこの場所は正に妖精種の頂点の間に相応しい。
そう思えます。
「御足労をおかけしまして恐縮です。」
先程まで聞こえていたお声…!
辺りを見ていた視線を目の前に向けると、とても儚い雰囲気を纏った綺麗な男性が立っていらっしゃいました。
床に付きそうなほど長く、色素の薄い御髪。
その頭には葉や花、蔓などをモチーフにした青い雫状の宝石が輝く金のティアラ。
左右で違うお色の瞳。
王様と呼ばれるに相応しい気品のある白と金の配色が素敵なお洋服。
そして、先程の門番さんよりも大きく、美しい模様の入った輝く6枚の羽根。
羽の周りには金色の粉が舞っているようにみえます。
男性は微笑み、頭を下げられました。
「ティリア様、皆さん、ようこそいらっしゃいました。」
再び上げた綺麗なお顔…
「!」
先程と目のお色が違います…!
先程は黄色と水色でしたのに、今は紫と黄緑です…!
異色の瞳は私を捉えます。
「初めまして、人間のお嬢さん。
私は妖精王オベロン。
オベロン=フェアリーチェと言う者です。」
「はっ初めましてオベロン様!
ゆ、ユムルと申します!」
ティリア様とはまた異なった雰囲気に緊張してしまいますっ!
「ユムル様…可愛らしいお名前だ。
どうか肩の力を抜いて。」
「ちょっとオベロン!ユムルはアタシの子よ!
変な気起こさないでよね!」
ティリア様に抱きしめられ安心するはずが逆に緊張が増して来ました!何故でしょう!?
「子…?
ハッもしや私の知らぬ間に御結婚を!?」
「は?」
「お話とはまさかその事です!?
あぁ、何故お教えして下さらなかったのです!
妖精種が全力でお祝いさせて頂きたかったのに!」
オベロン様…何故か盛大な勘違いをなさっています…。
「ちょっとアタシまだ結婚してないわよ!
アンタ言ってたじゃない、ユムルを人間のお嬢さんって。」
「…ん?」
オベロン様、首を傾げました。
「何で魔王のアタシの子供が純粋な人間なのよ。」
「あ。」
「相変わらずの天然なのかしら、ホント。」
オベロン様、慌てふためく時も瞳のお色が変わっていらした。不思議なお目目です。
後ろからバアルさんと雅若さんの笑いを堪えきれていない吐息が聞こえます。
「いやぁ…お、お恥ずかしい…。」
気品の中に可愛らしい一面が見えて緊張が解れた気がします。
オベロン様ははにかんだ笑顔から戻り、ティリア様へ問いかけます。
「では一体何のお話を?」
「物騒な話よ。死体とかそんな感じのね。」
オベロン様は私を困ったお顔でご覧になります。
もしや…失礼な事をしてしまったのでしょうか!?
「私は構いませんが…ユムル様は大丈夫なのですか?」
心配して下さっていました。
やはりお優しい御方です。
「ユムルには既に話してあるわ。」
「左様で。」
私に微笑まれた後、指を鳴らしたオベロン様。
広いこの場所の中心に白くて長い机と人数分の椅子が現れました。
「立ち話も何ですから、どうぞ。」
「悪いわね。」
ティリア様に手を引かれ、お隣の席へ座ります。私とティリア様が座った後、オベロン様が目の前に座られます。
しかしバアルさんはティリア様の、シトリさんは私の隣に居るものの立っていらっしゃいます。雅若さんも扉の近くで腕を組んでいました。
使用人さんだから、ですよね。
御一緒に座って頂きたかったです…。
あれ、そういえばオベロン様のお付の方が見えません。
「ティリア様、ユムル様に私の事をお話するお時間を下さいな。」
「…良いわよ。」
「ありがとうございます。では、ユムル様。」
名を呼ばれ、また違うお色になった目と視線を合わせます。
「私のこの目、気になっていらっしゃるかと。」
「はい、気になります…!」
「私の目は角度によって色が異なるみたいで。
自分では分からないのですけれどね。」
「角度…」
何処かで聞いた構造色と言うものでしょうか。
宝石みたいで綺麗です。
「そんな熱心に見つめられると照れちゃいます。」
「はわっすみません!」
「ふふ、構いませんよ。」
私に微笑みながら指を鳴らすオベロン様。
するとキラキラした光が机の上で渦を描き、目の前に紅茶とクッキーが現れました。
「宜しければどうぞ。お口に合うと良いのですが…勿論、客人に毒は入れませんよ。」
ちらりとバアルさん、シトリさんを見ていらっしゃる…。お二人共、クッキーを1つ口に入れました。
「他種族の客人用にと仕入れておいて良かったです。美味しいでしょう?」
バアルさんはクッキーを飲み込んだ後、白コートの胸ポケットから銀製の小さな板を取り出しました。
それをシルクの布で拭いたあと、ティリア様の紅茶の中へ入れました。
「2つとも毒はありませんね。」
板を紅茶から取り出し、拭いてからシトリさんへ投げます。彼も私の紅茶に板を入れ確認して下さる。
「…変色無し。
こちらも問題ありません。」
堂々とした毒味にも気分を害したようなお顔をしないオベロン様。
「ご確認、感謝致します。
私には貴方達を殺す理由も術も持ってないのですけれどね。」
「森のシステムはオベロンの力のくせに。」
「アレは身を守る術です。」
「聞こえが良い方取ったわね。」
「はて、そうですかね?ふふ。」
確信犯です。
「もう話していい?」
クッキーを頬張って飲み込んだティリア様がお聞きになると、オベロン様は笑顔を消しました。
「えぇ、お待たせ致しました。死体の話ですよね。」
「そう、アタシも雅若から聞いたのだけどね。
妖種の門…羅生門の目の前に切断遺体が置かれていたみたいなの。」
「切断遺体?」
「遺体は悪魔種だったみたい。
置いた奴は確認できていないの。」
「成程、姿が見えなかった。
その理由で素早い私達が疑われている、と。」
「えぇ。天使種か妖精種、どちらかだと思うって雅若が言ってた。」
「ふむ…」
オベロン様は少し考えるように黙ってしまいました。そして雅若さんを見ながらお話を再開なさった。
「切断遺体を置いた所で我々にメリットはありませんよね。」
「羅刹に嫌がらせが出来る〜とかは?」
「羅刹殿に?はははっあの方は遺体を置かれたからと嫌がるようには見えませんがね。」
「…(実際仰る通り嫌がって無かったですしね。寧ろ」
『うーわマジか!
悪魔種は不味いんだよなぁ〜ちぇっ』
「(と、喰う前提だった訳ですからね。
流石に止めましたが。)」
「うぅーん…確かにそうね。」
納得し始めたティリア様へオベロン様は説得を続けます。
「それに身を守る術が少ない私達が敵を作ってどうします。私達妖精種は平和を望みますよ。」
優しく微笑むオベロン様を見てティリア様は申し訳なさそうに眉を下げました。
「…疑ってごめんね、オベロン。」
「いえいえ。こちらこそ犯人探しのお役に立てず申し訳ありません。」
「オベロン、アタシ達に力を貸してくれる?」
「えぇ、勿論ですとも。
私達に出来る事があれば何でも仰っ」
「ッ誰か此方を見ています!」
「「!?」」
いきなり雅若さんが声を荒らげて私の後ろまで移動して弓を構えました!
雅若さんの視線の先は植物が円を描き窓のように外の景色が見える場所ですが何も居ません。
「ベル。」
「無理です。私には目視出来ません。」
「し、シトリさん。」
「ご期待に添えず申し訳御座いませんご主人様。
腹立つ事にボクも見えないです。」
シトリさん、お外に向かって中指立てて舌を出しました。
雅若さんは何をご覧になっているのでしょう。
「あの見た目…天使種ですね。」
閉じられていた瞳が開眼しています!
光は大丈夫なのでしょうか。
いえ、まずは天使種さんですね。
「仕留めれるか…?」
雅若さんは小さく呟き、矢を放ちました。
放たれた矢は直線と化して一瞬で見えなくなりました。
「チッ」
そして舌打ちを1つ。
ティリア様は紅茶を啜り、雅若さんを横目に見ます。
「速い2本の矢でも仕留め損なったのね。」
2本?1本じゃなかったのですか…!
「えぇ、当たる直前に2本共砕かれました。」
「天使種…どなただったのです?」
オベロン様がお聞きになると雅若さんは目を閉じて
「あの長髪と姿勢の良さからして
ラスト=アルヴィムでしょうね。」
おめめが特殊な人物が多いなぁ…(遠い目)




