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第45話『お初にお目にかかります』

英語表記って難しい…!

レンブランジェさんに連れられた場所…

それはお外でした。


レンブランジェさんが言うにお城の敷地内だから安全だそうです。

辺りは視界いっぱいな野原で踝ほどの背丈の草が風に靡いて波を作っています。


「目的地に辿り着くまでの間、使用人の秘密を教えてやろーう!」


私と手を繋いでいるレンブランジェさんが突然仰る。それを聞いたアズィールさんの肩がビクリと震えました。


「えっ!?何言い出すんですかレンブランジェさん!勘弁して下さいよ!」


「やだ♡だがアズィールの事は言わんよ。」


「なら良いっすよ!俺も聞きたい!」


良いのでしょうか…。


「では手始めにバアルだな!」


「よっ!!」


煌びやかな笑顔で拍手していますアズィールさん…。

ご本人に怒られないと良いですが…。


「バアルはな、本当にパニックになると言葉のボキャブラリーが“馬鹿”しかなくなる。」


えっあのバアルさんが?


「あぁ…そう言えば昔、幼い若様が自らの水魔法で溺れかけて助けた時に言ってました!


この馬鹿ッ!!

だぁーっも、もうほんっとに馬鹿ッ!!って。」


あのバアルさんから想像出来ません…!


「くふふっあの慌てようは昨日の事のように思い出すわい。 誰よりも早く助けに走っていったっけのう。」


「あの方たまに若様の事をクソガキって言ってるの聞くんですけどね。やっぱ素直じゃないなー。」


「自分の感情を表に出さないのは人間の魂を好んで喰ってる奴の中で珍しいタイプだしなぁ。」


人間の魂を…喰う?


レンブランジェさんは私を見上げて疑問に思ったのを見透かしたかのような大人な笑みを浮かべていらした。


「そうかそうか、ユムル様は知らぬ話だったかのう。では教えてやろう。」


「(ユムル様に教えちゃうのか。

俺達が怖いと思いそうだけど…。)」


アズィールさんは手を頭の後ろに組んで何か言いたげな目をレンブランジェさんに向けるも、彼は気付いていらっしゃらない。


「我等は魔族の中の悪魔種という部類だ。

その力は強大で魔族の中で1、2を争うほど。

皆、自分に絶対的な誇りや自信を持っている。」


絶対的な自信、羨ましいです。

あれ、でもミコさんやブレイズさんはあまりそんな

感じがしませんが…。


「勿論チュチュやセレネのような例外も居る。

が、兎に角みーんな我儘なのじゃ!

害の無さそうな奴ほど自分を隠している証拠じゃよ。」


「そーそ。優しそうとか思ったらソイツはやべぇやつですよ。…まさかシトリにそう思わされてる訳じゃありませんよね!?」


いきなりアズィールさんが私の肩を掴む。

ビックリしました…っ!


「えとっ皆さん私に優しくて…!」


「ふふっ…そうじゃの。

ユムル様は我等悪魔種にとって珍しい人間じゃから。」


やはり人間は珍しいのですね…。

そう思うとレンブランジェさんは私を指さしました。


「儂は人間が珍しいと言っているのではなく、

ユムル様のように人間のくせに欲が無い者が珍しいと言っているのだぞ。」


「え…?」


「使用人の殆どがユムル様の事をそう思っておる。

面白い人間だとな。」


私が面白い、ですか…?


「殆どの人間は自分が堕落したいが為に醜く、邪悪な欲で塗れている。」


レンブランジェさんは私から手を離し、ふわりと浮かび上がりました。


「悪魔種とは、儀式で自らを呼んだ者の願いを契約による代償と引き換えに絶対的な力で叶える者達。」


彼はそう言ってアズィールさんの近くで止まる。


「願いが大きいものほど代償も高くつくんすよね。」


「左様。」


アズィールさんに頷いた後、レンブランジェさんは可愛らしいお顔からとても怖い悪魔のようなお顔をなさいます。


「儂の場合、地位が欲しいのなら手に入れた後に絶望を約束させる。人を1人殺したいのなら両目を頂く。

人を大量に殺したいのなら魂を頂く。

ま、どれもこれも気分次第で変えるが案外優しいじゃろ?」


どこがでしょう…。でもそうまでして他人の力で手に入れようとする人がいるということですよね。


「人を貶めたいと願う、殺しを願う魂ほど美味なのじゃよ。それが我等は大好物での。」


「上手く口車に乗せて盛った契約にして魂取るとかしてる奴居ますしね。(バアルさんとかシトリとか。)」


願いを叶えるには犠牲が伴う。

人間界の何処かで聞いたことがあります。

まさにこの事なのでしょうか。


「しかしユムル様、この話をした後だと不快かも知れぬがどうか1つ、信じて欲しい。」


アズィールさんの横に降りたレンブランジェさんは右手を心臓の位置に添えて頭を下げられました。

アズィールさんもご一緒に…。


「えっ?ど、どうなさったのですか…?」


「我等ヴィランローズ王家使用人は我が主の命によりユムル様を命賭けて御守り致します。

どうか信用なさって下さいませ。」


そ、そんなの…


「あ、当たり前です…!あんなにお優しいティリア様の使用人さんを信用しない訳がありません!」


「「!」」


お二人共、目を丸くなさいました!

暫く私を見た後、レンブランジェさんが吹き出しました!!


「ふっ…ふははははっ!!」


私何か変なこと言いましたかね…!?


「ふふふ…(嗚呼やはりそうだ。この人間(ユムル様)魔界ここに向いてない。殺されそうにないが魔族の玩具になるだろう。)」


アズィールさんも目を丸くして言葉を無くしています。笑い終わったレンブランジェさんは


「だからこそ、守らねばの。」


と言って微笑みました。

私とアズィールさんは分からず首を傾げる。


「「??」」


レンブランジェさんは私を指さしました。


「ほれ、見てみ。」


どうやら私ではなく、私の後ろを指していました。

言われた通り振り向くと、2つの隣合った立派な白い墓石(ぼせき)が並んでいました。


「これは…」


墓石にはVelmelid=Eve=Villanroseと書いてある墓石とRifell=Eve=Villanroseと書いてある墓石がありました。どちらにも綺麗なお花が沢山供えてあります。


「ティリア坊ちゃんの父君と母君の墓だぞ。」


あ、挨拶しなければ!


「お初にお目にかかります、ユムルと申します。

ティリア様に救われた者です。えっと…」


言葉が詰まるとレンブランジェさんが


「坊ちゃん、嬢ちゃん。儂が連れてきた!

とても良い子での!尽くしがいがあると言うもの!」


と、私と手を繋ぎました。


「若様もユムル様を愛しております。

どうか2人の行く末を見守り下さい。」


アズィールさんは私の肩に手を置きます。


「私がティリア様のお傍に居ても宜しいでしょうか。支えても宜しいでしょうか。」


人間の私なんかが…。


「あ!ユムル様ご覧下さい!」


アズィールさんがリフェル様の墓石を指さしました。何とリフェル様の墓石に供えられているピンクのお花から花弁が1枚抜け落ちて私の元へフワフワと飛んできました。


「おぉ…嬢ちゃんがティリア坊ちゃんを宜しくと言っておるようじゃの。嬢ちゃんらしい。」


ヴェルメリド様のお花に変化はありません。

リフェル様だけ…。


「リフェル様、ありがとうございます。

ヴェルメリド様、認めていただけるよう精一杯頑張ります!」


「んふふ。儂らも支えよう!

さて、女性が身体を冷やしてはならん。

もう帰ろう。」


レンブランジェさんに手を引かれ、私達はお墓を後にしました。またお花を持ってお掃除させて頂こう。



「ふん…。」


「え…?」


アズィールさんが後ろを向いて立ち止まりました。


「どうした?アズィール。」


「レンブランジェさん聞こえませんでした?

ユムル様も。」


何の事か分からずレンブランジェさんと首を傾げる。


「ん〜?俺の気のせいかなぁ?」


「気のせいじゃろ。ほれほれ行くぞよ。」


「へぇーい。(ヴェルメリド様が鼻を鳴らした気がしたんだけどなぁ。)」


アズィールさん、何を聞いたのでしょうか?





「ご主人様っ!!」


「きゃあっ!」


レンブランジェさんがお城へ続く扉を開けて下さった直後、シトリさんが私に抱きつきました!


「このシトリ、寂しゅう御座いました!

一体どちらへ……ん?この匂い、懐かしい…?」


まさか私の頭を嗅いでいらっしゃる!??

恥ずかしくて顔が火照って来た時、シトリさんがパッと離れる。


「185cmがユムル様にいきなり飛びつくな!!

危ないだろ!!」


アズィールさんが彼を私から引き剥がして下さったようです!


「くっ…折角ご主人様に触れていたのに邪魔するなクソ猫!!」


「あんだとクソ犬!!表出ろや!!」


「グルルルッ…上等だ!!」


睨み合って何処かへ行ってしまいました…。


「むふふっ若いもんは元気じゃのう。」


そう言えばシトリさん、懐かしい匂いと仰ってました。あのお墓のお花の事でしょうか。

また後で聞きましょう。

レンブランジェさんは懐中時計を取り出し


「お?そろそろ夕餉の時間のようだ!」


と仰った。あれ、もうそんな時間でしたか。

お外はまだ明るいので時間の流れが分かりませんでした…!


「お嬢様。」


「ひっ」


背後から急に声が!!

振り返ると無表情のバアルさんが立っていました。


「坊ちゃんからの手紙です。」


差し出された白い紙を受け取り中を見ると字が書いてありました。内容は分かりませんが1番最後にTilia=Eve=Villanroseと書いてあるのは分かりました。

レンブランジェさんに代わりに読んで頂くと、


“実はお仕事が全然終わらなくて夜ご飯一緒に食べられないの!!寂しい思いさせてほんっとにごめんね!

明日は絶対一緒に食べるから!

今日だけ許してほしいの!”


と書いてあったようで私は大丈夫なのでお仕事頑張って下さいと伝えて欲しいとレンブランジェさんにお願いしました。


「分かった!伝えてくるぞい!」


ぽふんっと可愛らしい音を立ててその場から居なくなるレンブランジェさん。


私は1人で黙々とブレイズさんのご飯を食べました。

いつもよりも早く食べ終わってしまい少し、

いえ、大分寂しいです。

顔に出したつもりはありませんがブレイズさんが心配そうなお顔で私を覗き込みます。


「ユムル様、まだ気分が優れませんか?」


「えっあっいえ!元気です!」


「そうですか…?完食して下さって嬉しいですが決してご無理なさらぬよう。」


「ご心配をお掛けしてすみません!」


頭を下げてゆっくり顔を上げるとブレイズさんはムスッとしておりました。


「謝るのではなく〜?」


あ、これはお礼を言えということですね…!


「あ、ありがとうございます!」


ブレイズさんはニコッと笑ってくださいました。


「はい!ではお部屋でチュチュちゃんが待っておりますのでお風呂へどうぞ!」


「は、はい!ありがとうございます!

ご馳走様でした!」


言われるがまま部屋に向かいチュチュさんとお風呂へ向かいました。


「ユムル様、湯加減どうですかぁ〜?」


「き、気持ち良いです…!」


「良かったです!フレリアさん捕まえられませんでしたぁ〜!すみません!」


あ。そうでした!わ、忘れていました…。


「大丈夫ですよ。

次に捕まえさせて頂きましょう!」


「はいっ!チュチュ頑張ります!」


眩しい笑顔です。

でもチュチュさんも悪魔種…。

チュチュさんは他の人間と契約して魂を食べたのでしょうか。

今は皆さん使用人をなさっていますが、もし今儀式を行った人が居れば其方へ向かうのでしょうか。


「ユムル様?どうされました?」


「あ、いえ!」


チュチュさんの口からは聞きたくない自分がいます。アズィールさんかシトリさんに聞きましょう…。


お風呂から上がり、髪を乾かしてティリア様から頂いた薬を塗り、部屋に戻って歯を磨きました。


隣にティリア様はいらっしゃいません。

少し寂しいです。でもチュチュさんが笑顔を見せてくれるので大丈夫です。


「ではチュチュはこれで失礼致します!

御用の際はいつでもお呼びくださいね!」


とにこやかに退出なさった。

今なら良いでしょうか…。

呼び鈴を並べてある机に手を伸ばすと、1つ見覚えのない呼び鈴が置いてありました。

銀色…?鳥の羽根を広げたような模様があります。

…鳴らしてみましょう。


手に取り2回振る。すると


「シエル=エリゴマルコシアス、此処に。」


とシエルさんが目の前に跪き現れました。


「し、シエルさんの呼び鈴でしたか…!」


「はい!バアル殿に許可は頂いております故に置かせて頂きました。このシエルになんなりと!

美しいユムル様!」


シエルさんになら聞いても良いでしょうか…!


「あ、あの、聞きたいことがあって…!」


「はい!」


「あ、悪魔種の方々は儀式に呼ばれ契約を結ぶとお聞きしました。今も儀式で呼ばれるのですか?」


聞くとシエルさんは「あぁ!」と理解なされた声をあげ、


「ユムル様は答えを求める人物を間違えていらっしゃる!」


と笑顔で仰った。


シエルさんは悪魔種なのに…

ど、どういう事でしょう?

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