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第43話『遊びついでに』

ユムルとお話したかったけど今はベルと話したい。

自室に戻り椅子に座って扉の横に居る彼を呼ぶ。


「ベル。」


「はい。」


「何でユムルを羅刹に渡したの?」


「申し訳御座いません。私は最善を尽くそうと致しましたが羅刹殿がそれを上回っていました。」


流石ベル、ずっと真顔ね。それに嘘は疎か想いが分からない。でもアタシは直感を信じる。


「アタシ知ってるんだから。

本当は守れたのに守らなかった事を。

どういうつもりなの?」


「…」


だんまり?どういう事?何を考えているの?

まだ詰めないとダメってこと?


「蜘蛛を這わせていたのなら連れ去られたユムルの場所が分かったはずよね。

何故伝えなかったの?答えなさい。」


ベルは光の無い紅い瞳でアタシを捉えた。


「…えぇ、分かっていましたよ。」


「じゃあ何で」


「坊ちゃんがどのように行動なさるのか気になりました。」


「は?」


何を言っているのコイツ…。


「前にお話ししたでしょう?毒の話を。」


興味が始まりの毒という話よね。


「えぇ、覚えているわ。

でもそれ、パパとママの話よね?」


「そうですね。その話はそうです。」


「はぁ?何を言って…」


「坊ちゃんは何故毒を1つだとお考えになられているのです?」


1つ?

ベルは口角を上げてゆっくりと手を広げる。


「毒は尽きない。物事1つ1つに毒はそれぞれ存在する。今回私は坊ちゃんに毒を盛られただけです。

それで好奇心を育てようとしただけ。」


「アンタ…

ユムルが危険な目に遭うかもしれなかったのよ?」


「ならばシエルの時みたく私に直接守れ、または探せと御命令なされば良かっただけ。私は命令に従順ですよ。」


「ユムルはアタシと対等に扱えと言ったはずよ。

アンタもその通りにして羅刹に言ってたじゃない。

それに、天使種の幻影が見えた時には命令でもないのに自分でユムルを守っていたし。」


「あれはまだ毒が無かったものですから。」


「自分の毒の為ならユムルが死んでも構わないわけ?」


「まさか!

坊ちゃんのフィアンセを見殺しになどしませんよ。」


フィア…違う違う、流されるなアタシ。

まだけ、け…っこん…約束出来てないんだから。

ベルのあの胡散臭い笑顔を見なさいな、とても腹立つわ。


「アンタさっきから言ってること滅茶苦茶よ。

分かってる?」


「おや、そうでしたか。

でも坊ちゃんは賢いのでお分かりでしょう?

貴方様が助けられない場合にはちゃんと亡くなる前にお救い致しますとも。」


「…」


あぁそうだ。ベルは、バアルはこういう奴だ。

アタシが幼い時からずっと。

直接命令しない限りあまり動かない奴だったわね。

なら命令するまでよ。


「じゃあベル、命令よ。ユムルに危険が及びそうになったらその時点で払い除けなさい。

まずユムルを守れ。」


「……御意。」


変な間があったわね。

頭下げたから良いけど。


「シエルにも言っておくわ。

けれどアタシはシエルを心から信用出来ない。」


「ヴェルメリド様の側近だったからです?」


「えぇ、それに何考えてるか分からないから。

アンタみたいにね。」


いっつも口角上げてる奴って信用出来ないでしょ。


「はぁ、左様でございますか。よく言われます。」


「自覚はしてんのね。

…はぁ、怒ったらお腹減った!来てブレイズ。」


彼の目と同じ深緑色をした呼び鈴を振る。

跪いて現れた彼を見て呼び鈴を机に置いた。


「ブレイズ=ベルゼブブ、此処に。」


「あら、名前隠さないの?」


いつもは偽る為にベルゼで止まっているのに。


「呼び鈴を使用なされた主様の御前ですしバアルさんもいらっしゃるので…」


苦笑で誤魔化すブレイズから恐怖の想いを感じる。

怒られた事あんのね。


「いつも美味しいご飯作ってくれるグルメな貴方に免じてユムルには黙っといてあげる。」


「お気遣い痛み入ります…。

してティリア様、俺に御用とは?」


あ、そうだったわ。


「軽く何か食べたいの。

料理は任せるからお願い出来る?」


「畏まりました、少々お待ち下さい!」


ブレイズは軽やかに退出した。


「ベル、アタシ明日の分の仕事をちょっと片付ける。」


「おや、仕事嫌いの貴方様が一体どういう風の吹き回しでしょう?」


「ユムルとお話する時間増やしたいの。

やる気がある内にやっておくから頂戴。」


「畏まりました。では…」


そう言ってベルは山盛りの書類をアタシの机の上に

置いた。何この量は…!


「アタシ、ちょっとって言ったわよね…?」


「貴方様が明日やる明日やると先延ばしにした書類でございますよ?治安やそれに対する意見などなど…

これでも“ちょっと”ですよ。」


く、黒い笑顔!!!

言うんじゃなかった!!!



チュチュさんと一緒にレンブランジェさんとフレリアさんを探すこととなりお城を散策中です。沢山のメイドさんや執事さんがお掃除なされています。

…ちょっと申し訳ないです…。


「お2人は何処でしょうねーユムル様!」


「み、見当たりませんね。」


チュチュさんは私と一緒で良いのでしょうか…?


「お部屋手当たり次第に見ていきましょう!」


チュチュさんは目の前の大きな扉を開けました。

お部屋の中は沢山の本がある書斎でした。

ティリア様の身長お2人分ほど高い本棚に本が詰まっています。1番上は高めの脚立が無いと届きませんね…。その本棚が規則正しく沢山並べられていると圧巻です。

もはや図書館ですね!

こんなに大きな図書館は入ったことありませんが…。


「ユムル様は左からお探し下さい!

チュチュは右から探します!」


「は、はい!」


パッと見た感じお2人がいらっしゃるようには見えませんが…本棚の間の通路を覗き込みながら進む。


「あれは…」


2つ目の本棚の間を覗き込んだ時、一冊の本が飛び出ているのに気付き近づいてみる。

こういうの気になってしまうのです。

押し込んで…ん?本から白い紙が出ています。

拝見して宜しいでしょうか。

でも……あぁダメです気になってしまう。

すみません見させていただきます!


紙を見るために分厚い本を開く。

白い紙はどうやらお写真のようです。

とても綺麗な、女性か男性か分からない中性的なお方…。御髪をハーフアップにしているこの方、どなたかに似ていらっしゃるような…

あ、ティリア様です。

ティリア様にそっくりな方です。

でもご兄弟のお話は聞いた事ありませんし、口角は上がっているのに寂しそうな…楽しくなさそうなお写真です。


「お!それ懐かしいのうフレリア!」

「む!これ懐かしいのうレンブランジェ!」


「きゃあっ!」


「「びっくりしたか?」」


両サイドにお2人が急に!

フワフワ浮いていらっしゃいます!


「それは昔のティリア様だぞ!」

「親2人に似てるから綺麗なのは変わりないのう!」


む、昔のティリア様…!


「で、ですがお写真のティリア様は辛そうです…」


「「…」」


レンブランジェさんとフレリアさんはお互い見つめあって写真に視線を戻された。


「その写真を撮った時のせいだな。なぁフレリア。」


「うむ、レンブランジェ。

その写真は随分弱ってしまっていたティリア様の母君が撮りたいと言って撮った写真なのだ。」


お母様に向けたお顔…。

ご病気だったのでしょうか。

ティリア様はお母様が大好きなはず。辛そうなお母様を見るのが辛いというお顔です。


「この写真があればティリアとずっと一緒に居られるから寂しくないと、死ぬその時までずっと大切に持っていた。」


「いくら同じ城内に居てもあの子が自分との時間を作る為に無理をしているから、写真を理由に毎日顔を出さなくて良いように。そう思っておったからな。」


写真があるから毎日来なくて良いよ、と言うことですよね…。でもティリア様もお母様も毎日お会いしたかったはず。

お母様もティリア様もさぞ辛かったはずです。


「ユムル様ー!」


チュチュさんの声です!


「おぉっとチュチュも来てしまっては捕まってしまう!」


「では我らは逃げるぞ!」


お2人が更に上へ!

ま、まだお話を聞きたいのですが…!


「あっあのティリア様の過去のお話を…」


「「ならば尚のこと我らを捕まえてみせよ!」」


クスクスと口に手を添えて笑うお2人は浮いたまま

書斎から出ていってしまった。


「あれっ!?今レンブランジェさんとフレリアさんが居たような気がしたのですが!

チュチュの勘違いでしたか??」


ティリア様の昔のお話…ティリア様御自身でないというのが申し訳ありませんがシエルさんとのお約束の為にもお聞きしておきたい。


「チュチュさん、お2人を探しましょう。」


「は、はい!」


頑張らないと…!

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