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第26話『嫌がらせが…』

久し振りにアイツであってアイツでない者が!!

久し振りだけど初めましてな彼をよろしくお願いします!

廊下を歩いていますが…

ネシャさん、次は何処をお掃除するのでしょう。


「うっ…うっ…ぐす…」


誰かの泣き声…?立ち止まって耳を澄ませてみても聞こえています。やっぱり聞き間違いじゃなさそうです。ほっとけません。


「あ、あのネシャさん。」


名を呼ぶとムスッとしながらも


「何よ。」


と足を止め返答して下さる。


「ど、どなたかの泣き声が聞こえたのです。」


「はぁ?そんなのあたしには……」


急に目を閉じたネシャさん。

数秒後にカッと目が開きました。


「聞こえるわね、思い当たる節があるから行くわよ。」


「はい!」


あ、ネシャさんの走りが速すぎて置いてかれてしまいますー…!!


 …


走っている最中、廊下の曲がり角が何回もありましたが彼女の後ろ姿を断片的に捉えてなんとか追いつけました…。


「うぅ〜…ぐすっ…」


この泣き声です。

白い石膏の柱と全体的に黒くて細かい金模様が描かれた大理石床の広場の真ん中でネシャさんが立ち止まっていらしたので隣に立つ。すると誰かが蹲って泣いていました。黄緑色の御髪、その御髪の中でも特徴的な長い4本の触角。白黒の靴。

確かケルベロスさんのお世話係の…


「カロさん?…それともテオさん?」


()()()()()()()わよ。」


私の言葉を否定したネシャさんは彼の横にしゃがんで背中を優しく撫で始めました。


「ほら、()()、ネシャちゃんが来たわよ。」


「うぅ…ねしゃちゃあん…」


涙でぐちゃぐちゃの彼はミコさん?

確かに触角が波打つようになってます。

テオさんはストレートで、カロさんはギザギザでした。


「ミコ、こんな場所でどうして泣いているの?」


私の時とはまるで違うとても優しい声でミコさんに

問いかける。ミコさんは涙を腕で拭い、嗚咽しつつも告げてくださる。


「あのね、ぼくのこときらいだっていわれたの…。

なにかんがえてるかわからないって…。

きもちわるいって…ふぇえっ」


なんて酷い…。私になら兎も角、使用人の方々のお仲間であるミコさんになんて…!


「ねしゃちゃんもぼくのこときらい?」


「そんな訳ないでしょ?ミコは好きよ。」


「ほんと?」


「嘘言ったってしょうがないじゃない。

他の奴が何を言ったってあたしは味方だから、ね?」


「…うんっ!!」


満面の笑み。良かった、ミコさんは元気になられたようです。そしてネシャさんはやっぱり良い人です!


「ねしゃちゃん。そのひとだあれ?」


ミコさんは私の事を覚えて居ないのですね。

私もネシャさんのように屈んで声と言葉を優しく、優しく。


「は、初めまして。ユムルと申します。

ティリア様に拾って頂いた者です。」


「ゆむる…さま?うぅ?ききおぼえがある。

ゆむるさま、ゆむるさま!

ぼく、みこ=だんたりおんです!」


もしかして朧気だけども記憶を共有しているのでしょうか?ふふ、パッと手を挙げる姿が幼く見えて可愛らしい。


「はい、ユムルです。

これから宜しくお願い致しますね、ミコさん。」


「はい!あ、そうだ。これあげます!おいてあったのをひろいました!なかはまだみてません!」


オレンジ色の小さな宝箱…?

ポーチくらいの大きさです。


「あ"っ」


ネシャさんの口から驚きの声が。


「ねしゃちゃん?」


「あ、え、えとそのあの」


壊れたロボットのようになっているネシャさんが気になりつつもこの箱の中身が特に気になります。


「ゆむるさま、あけてください!」


「良いのでしょうか、勝手に人の物を…」


「だいじょーぶです!ぼくがやったといえば!

はやくはやくー!」


「…」


ミコさんに促され開けようとしたその時、


「わーーーーーーっ!!」


蓋を押し開けないようにしたネシャさんに奪われました。


「ねしゃちゃん、どうしたの?」


「お、オモイダシタ!こ、これあたしのなの!

さ、探してたのっ!」


汗が凄いです!でもネシャさんのなら良かった。

持ち主の手元に戻って。


「ねしゃちゃんのだったんだぁ。なかから“かさかさ”っておとがきこえたけどなにがはいっていたの?」


「ひ、ひひひ秘密!誰にも言わないもん!

ほ、ほらさっさと掃除するわよ!!」


ミコさんにも秘密なんて余程の物が入っているのでしょうね。やっぱり少し気になります。


「ユムル行くわよ、ついてきなさい。」


通常運転に戻ったネシャさんは宝箱を持ったまま踵を返します。それを不思議に思ったミコさんが手を挙げました。


「ぼくもおそうじするー!」


「え"っ!?」


またネシャさんの口から驚きの声が。


「だってぼくきらいっていったひとたち、

にんずうおおいからおそうじおわってるはずだもん!ぼくもねしゃちゃんとゆむるさまのおてつだいのほうがいい!」


「良いですよ、掃除は人手が必要ですからね。

ね、ネシャさん。」


彼女をミコさんと共に見上げると何故か葛藤してるように見えます。


「ぐぬぬぬぬ……っ!!(ミコがいる事でユムルへの嫌がらせ作戦が失敗し始める気がする!!

実際設置したこの箱持ってきちゃったし中身の蜘蛛見られたらミコが泣いちゃう!ユムルを追い出したい、でもミコにキツイことは言いたくない!)」


「や、やっぱねしゃちゃんぼくのこときらいなの…?だから、だからそんなこわいかおしてるの?ふぇ…」


ま、またミコさんが泣いてしまいそうです!


「ね、ネシャさん!!」


「だーっもう分かったわよ!!

ミコも手伝いなさい!」


ヤケにも見える反応ですがミコさんは嬉しくて口角をつり上げました。


「もーーっ!!」


ネシャさんが怒っている理由が分からずミコさんと歩きながら顔を見合せてしまいました。


 …


此処はお城なだけあって本当に広い。

また廊下を歩いて、また広場に出てを繰り返しているのに不思議と同じ場所ではありません。

私1人では絶対に迷うでしょう。

ミコさんに手を繋いで欲しいと言われて繋いでいますが、やはり男の人。

私よりも一回り大きくて手が包まれてます。

ネシャさんは階段を登って豪華な扉の前に。


「この客室を掃除するわよ。」


呟くように言ってから扉を開けた。

あ、ここは羅刹様とお話したお部屋ですね。

あれ、以前あの道を通ってましたっけ。


「何ボサっとしてんのよノロマ。

さっさと窓拭いて。」


「は、はい!」


「ミコは本棚整頓して。」


「はぁい!」


宝箱を机の上に置いたネシャさんから魔法で出したであろう水の入ったバケツと乾いた雑巾2枚を受け取りました。その時のネシャさんは少しお顔が暗く見えるような気が…。


「(此処は本当のあたしの掃除場所。流石に此処で水をぶちまけるわけにはいかないもんね…。蜘蛛もそう。ミコも居るし、普通に頑張ろ。)」


彼女は部屋の隅で見えないように立て掛けられていた細長い機械を取り出しました。あれはもしかして掃除機?予想は正しく、小さな吸引の音が辺りに響きます。凄い、この世界にも掃除機はあるのですね。

しかも音は割と小さいし細長くて軽そうです!

私も窓拭き頑張りましょう!


 …


頑張ると言った窓拭き…どうしましょう。

手の届く場所は磨けましたがこの窓はとても大きくて私の身長じゃ1番上が拭けません。

ネシャさんもまだ掃除機動かしてますし…


「ゆむるさま、どうしたのー?」


声を掛けて下さったのは本棚の整頓が終わったらしいミコさん。


「ま、窓の高い所に手が届かず拭けないのです。」


「あー…じゃあぼくがてつだいます!よいしょっ!」


背中に黒い蝙蝠の羽根を生やしたミコさんは片腕を椅子のようにして私を座らせるように抱えて下さった。


「とどきますかー??」


「は、はい!すみません、急ぎますね!」


「ううん、かるいからだいじょうぶです!」


ひぇ…満面の笑みで言われると恥ずかしさが倍です…急ぎましょう!


「おっしゃっていただければそのとおりにうごきますからね!」


「は、はい!では左へお願いします。」


「ひだりー。」


「ありがとうございます。」


羽ばたきで少し上下するもののとてもお掃除がしやすくなりました。これもミコさんのお陰ですね。

よし、あと右に動いていただければ終わります!


「ゆ、ユムル!?何してるの!?」


この声はティリア様?

ネシャさんの声も聞こえなかったのに…

下から聞こえた為、見下げるとティリア様が驚いたお顔で此方を見上げていました。

ティリア様の手には口を塞がれたネシャさんが。


「危ないでしょう!降りてきなさい!」


「は、はい!すみませんミコさん。

降ろしていただけますか?」


「はぁい!」


ミコさんはゆっくり降ろして下さり、ティリア様と向き合う。ティリア様は少しムッとなさりました。

お、怒られる…!


「んもう、危ないことはやめてよね。ミコを疑うつもりは無いけれど落ちたらと思うと心配よ。」


「す、すみません…。」


「アタシは怒ってんじゃないのよ。本当に心配なの。なるべく怪我しそうな場所はやめてちょうだい。

アタシの心臓がもたないわ。」


そう仰っていただけるのはとても嬉しい。

けれどまだ終わってないのがどうしても許せません。


「すみません…。で、でもあと少しだけ…!

これで終わらせますので…!」


ティリア様は視線をお掃除した窓に移し、すぐ私に戻します。そしてネシャさんから手を離すと私をミコさんのように抱えてくださいました。


「きゃっ!!」


「じゃあアタシが手伝ってあげる。

それなら心配無いわ。ふふっアタシ天才かも!」


ティリア様にお掃除を手伝わせるなんて!!


「だ、ダメですよ!

ティリア様はお仕事でお疲れでは…」


「そうね、疲れたわ。だからこそユムルに会いたかった。そして会えたから今は元気過ぎて困っちゃうくらいよ!さ、何処を拭きたいの?」


断るのが逆に失礼でしょうか。

…お願いしましょうか。


「……上の方のみ、右です。」


「よしきた!」


ミコさんとは違い羽ばたきが無く、上下に全く揺れません。あれ、ティリア様は羽根を出してません。

そう言えば一昨日のパーティー前も…


「なぁにそんなじっと見て。

貴女だと流石に照れちゃうわ。」


「あっす、すみません!!

てぃ、ティリア様は羽を出さずに飛べるのだなと思いまして……お掃除に戻りますっ!」


お掃除中に見つめるなんて失礼過ぎますよ私!

不敬です!戒めの為に、恥ずかしさを紛らわせる為に、これでもかというくらい早く窓を拭く。


「っふふふふ…!

そんな必死に磨かなくても良いわよ面白いわね。

アタシは羽根が無くても飛べるのよ。

その分何故かキラキラしちゃうのだけど。」


「ほら」と言って左右に揺れるティリア様の足元は紫色の空に浮かんでいるあまり輝かない月のような太陽によって照らされて明るいこの部屋でも分かるほど、金色に輝く何かが舞っていました。

あの時も確かに舞っていましたね。

この明るさがより一層輝きを与えていてとても綺麗です。


「綺麗…」


思わず口からも言葉を漏らすとティリア様が悪戯っぽく笑って


「アタシの顔よりも?」


とお聞きになる。


「お顔もキラキラもとてもお綺麗です!」


思ったことを告げるとティリア様は優しく微笑まれた。


「ま、お上手ね。…窓、まだ拭く場所あるかしら?」


「い、いえ!大丈夫です!ありがとうございます!」


「おっけ。」


フワリと着地なさったティリア様ですが、私を降ろしてくださらない。


「あれ、ティリア様?」


「…ネシャ、ミコ。話があるのだけれど。」


「「は、はい。」」


ティリア様はお顔を真っ赤にされていたネシャさんとその隣に立っていたミコさんにお声を掛けましたがその声は少し怒っているように聞こえます。


「ユムルの服から乾いた水の匂いがするの。

ヘッドドレスからもね。…何でかしら。」


まさか…大浴場での事でしょうか。

ネシャさんの事がバレてしまったらティリア様はお怒りになる…?ネシャさんも無事じゃ済まない…?

ど、どうしましょう…。


「ぼ、ぼくはしらないです…ずっとないてて…。

ゆむるさまともねしゃちゃんともさっきであって、

いまはじめていっしょにおそうじしてました…。」


ミコさんは泣きそうになりながら真実を告げます。

彼を見たティリア様はネシャさんに視線を移しました。


「そう。ならネシャはどうなの。」


「あ、あたし…は…」


ネシャさんに正直に答えさせてはダメ、直感がそう

言った。


「ティリア様!!わ、私自身が原因なんです!」


「…どういうことかしら?」


「ネシャさんと共に最初、大浴場をお掃除する事になりまして…それでバケツを運んだら足を滑らせて全て被ってしまったんです。」


「なんですって?なら何で隠したの?」


あぁ、お怒りだ。嘘を吐いた処罰を受ける覚悟は出来ています。でも今は欺かなければ…!

全ては自分のせいなんだと伝えなければネシャさんが危ないかもしれないのです!


「ティリア様に頂いたお洋服を水で濡らしたなんて

申し訳なさすぎてお伝え出来なくて…!」


「……。驚いたわね…」


静かに呟いたティリア様は私を降ろした。

そして私の頬に手を伸ばし


「まさかユムルがアタシに嘘を吐くなんてね。」


悲しそうなお顔で仰った。

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