表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/90

第18話『お掃除したい』

今回、アズィールに少しの異変が…。

「お嬢様のお願い、ですか?」


「は、はい…あの…」


うぅ…こ、怖いです…。


「(ユムル様頑張れ…っ!!)」


アズィールさんの応援の眼差しを背に受けている気がします。頑張れユムル!


「わ、私を…働かせて下さいっ!」


「お嬢様を?何故ですか?」


「わ、私…家事とかして動かないと落ち着かなくて…。

えっとその…置いていただいている身なので皆さんのお役に立ちとうございますです!」


「「(ございますです…。)」」


あれ?私変なこと言いましたか?

あぁぁ緊張しすぎて覚えていませんっ!

そんな私にバアルさんは溜息を吐かれました。


「はぁ…私は一向に構いませんよ。」


「!!」


「ですが、それは坊ちゃんの願いに背くこととなります。お嬢様はそれでよろしいのですか?」


「う…」


そ、それは………。

私の事を心配して下さっているティリア様を悲しませてしまうのでしょうか。

けれどこのままお世話になるのに何もしない訳には

いきません。


「ティリア様にみ、認めていただきます…!」


「ふむ…そうですか、分かりました。ならばお嬢様、チュチュの呼び鈴を鳴らしてください。」


「え、私がですか?」


「はい。私ではなく貴女でなければなりません。」


「わ、分かりました。」


疑問に思いつつオレンジの呼び鈴を手に取り小さく

小刻みに鳴らす。それから数秒後…


「ゆっむるっさまー!初めて鳴らして下さいましたね!!チュチュ=フォルファクス、ここに!」


にこやかに何も無いところから目の前に現れる

チュチュさん。本当に来てくださった…!


「鳴らしてくださってチュチュは嬉し……」


チュチュさんがバアルさんと目が合いました。


「ば、ばあるしゃん…」


「おやチュチュ。

主の前で膝をつかぬとは…何事でしょう?」


眉を下げていやらしく笑うバアルさんに絶望した表情でチュチュさんは悲鳴をあげます。


「いぃぃやぁああぁっっ!!!」


「私の顔を見て悲鳴をあげるな馬鹿者が。

…お嬢様、先程のチュチュの顔を記憶なさってください。」


「え?」


「坊ちゃんとチュチュはリアクションが似ていることが偶にありまして。お嬢様が働くとお聞きになった坊ちゃんもあのようなお顔になりますゆえ予想しておいた方が良いかと思いましてね。」


「うわ…。(いつも無表情なバアルさんの今の表情は絶対にチュチュで遊んで楽しんでる顔だ。

あぁいうところがあるから尚のこと怖ぇんだよなぁ。)」


「アズィール、文句があるなら口で言え。」


「ナイデスナイデス。」


「ふん…。(自ら働いてくださるのは助かりますし何より坊ちゃんの阿呆みたいな驚き顔が見たいことですし、お嬢様を止める理由がありません。)」


な、何でしょう。

心做しかバアルさんが楽しそうです。


「ちゅ、チュチュは…

なぜお呼ばれされたのでしょう…。」


完全に震え上がっているチュチュさんの疑問はご最もです。疑問はバアルさんがお答えするそうで。


「昔、貴女に支給された謎に大きめの仕事着を持ってきなさい。それならお嬢様も着れるでしょう。」


「か、かしこまりましたです!取ってきます!」


パタパタと慌ただしく部屋を退出したチュチュさんを見てまた溜息を吐くバアルさん。


「はぁ…全く騒々しい。そしてアズィール。」


「へいっ!!」


「お嬢様のやりたい事をチュチュと共に見守りなさい。無茶ややり過ぎは厳禁です。

お嬢様の性格上平気で為さるだろうからな。」


「か、畏まりました!!」


「では私はこれで失礼致します。」


顔を恐怖で引き攣らせるアズィールさんの敬礼を見て、ティリア様の元へ戻られるのか扉に向かって

足を動かします。


「あ、ありがとうございました!が、頑張ります!」


そう言うとバアルさんは足を止め、目線だけこちらに向けて


「えぇ、坊ちゃんを納得させられるよう精進なさい。

やるからにはくれぐれも仕事を増やさないように。」


と仰って霧のように消えました。


「は、はい!!」


もう聞こえてないですかね…。


「いやぁ…怖かったぁ…。」


「アズィールさん。」


彼は後頭部をガシガシと掻きながらこちらへ来てくださった。


「でもユムル様宜しいのですか?掃除とかやるなんて。普通に寝転んでいて下さって良いのですよ?」


「うーん…私は常に動いていたからか何もしていないと落ち着かなくて…それに趣味とかもありませんし…。」


「本とか読みます??持ってきますよ?」


「こちらの文字は読めないので…………

あ、こちらの文字お勉強しなきゃ!」


「へ?」


「よ、読めないと皆さんに迷惑かけてしまいます!

アズィールさん、教えて頂けませんか?」


「えっ!ユムル様と言語通じてるしてっきり読めるかと…分かりました。このアズィール=ヴァプラ、恐れながらユムル様にお勉強をご享受させて頂きます!」


「ありがとうございます!助かります!」


「っ!ひゃい…。」


?アズィールさんが心臓を押さえています。

ティリア様も偶にやられてましたね。…魔族の皆さんは私と同じ身体の作りなのでしょうか?


「アズィールさん?だ、大丈夫ですか?」


「は、はい!だっ大丈夫です!」


御髪ほどではありませんが顔が赤いです…。

アズィールさんも風邪ですか…?


「そうですか?どうかご無理なさらずに…。」


「ありがとうございます。大丈夫ですよ!

俺ヤワじゃないんで!元気です!がおーっ!」


あ、笑顔になられました。


「良かったです!」


「ぅぉぉ…」


今度は顔を手で覆って唸られました。

だ、大丈夫でしょうか…。


「ユムル様ー!入室してもよろしいでしょうかー!」


扉越しの声はチュチュさんです!


「はい!どうぞ!」


扉を開けて入って来たチュチュさんの手には綺麗に折りたたまれた黒い服と白いフリルが見える布が。


「失礼致します!あれ?アズ君まだいたの?」


「お、おう!」


「まぁいいや。ユムル様、こちら新品の服です!

チュチュとお揃いですよ!」


にこやかに差し出してくださった物を受け取る。


「お揃い…。」


「ささ!お着替えタイムです!アズ君出てって!」


「へぇーい。では終わり次第またお呼びください。」


「は、はい!」


「では着方をご説明致しますね!」


「お、お願い致します!」



なんとか着れました。フリフリで可愛いです。

けれどスカート丈が少し短い気が…膝より上なのは初めて着ました。

わ、私に似合ってるか不安でたまりません!



「きゃー!ユムル様可愛いですぅっ!

アーズくーん!はいってきてぇー!」


「あーい、てか何でチュチュが言うんだ…よ…。」


アズィールさんと目が合いました。


「ど、どうでしょうか…?変ですか?」


何となく聞いてみると赤面したアズィールさんは首と手を勢いよく左右に振る。


「へ、へへへ変な訳御座いません!!

とっっってもお似合いですよ!!」


「あ、ありがとうございます…。」


またお顔が真っ赤です。心配ですね。


「さ、さて!

ではお掃除道具を持ってレッツゴー!です!」


「も、持ってきます!」


隠し場所へ向かおうとするとアズィールさんが手を

挙げ止める。


「お、俺が持ちますから!チュチュ、先に廊下へ!」


「はぁーい!行きましょーユムル様!」


「え、あの掃除道具くらい」


「まーまーまー。

アズ君が持ってくれるって言うなら甘えましょー!」


背中を押され何も持たずに退出してしまった。

後からアズィールさんも掃除道具を全て持って出てこられ私に話しかけてくださる。


「よっし…じゃあ…

あー…ユムル様、何処を掃除なさいます?」


何処…お城の構造はよく分かりませんが…


「お役に立てるように動く為には…

皆さんが掃除を嫌がるような所…ですかね。」


「「却下です!」」


チュチュさんとアズィールさんの息ぴったりな言葉で提案を却下されました…。

その勢いでアズィールさんに捲し立てられます。


「皆が嫌がるような所ほど貴女が掃除してはならんのですよ!!もっと簡単に掃除出来る所にして下さい!例えば廊下とか!窓の下の枠を拭くとか屈まず、変な匂いも付かないところでお願い致します!」


「で、でも皆さんがやられている場所なら綺麗ですから…」


「掃除したのは少し前なのでもう汚れてますよ!!」


「えぇ…?」


「あ、じゃあ階段はどうかな?

主様以外ほぼ飛ばないから汚れてるよ!」


「ダメ!万が一転げ落ちたりでもしたらどうする!?更には若様とのエンカウント率が高くなる!」


「えーー!」


チュチュさんの提案も却下されてしまいました。

それに不満があったチュチュさんは頬を膨らませた。


「じゃあアズ君は何処が良いと思うのさ!」


「お、俺!?俺は…エントランスホールの拭き掃除かな。それと大理石をモップで。」


「ユムル様、それならどです?」


良かった、そこならよろしいのですね。


「それが許されるのなら是非やらせて下さい。」


「分かりました。さ、行きましょー!」


「「おー!」」


掃除道具を持ってくださるアズィールさんの後を

チュチュさんと追った。



お家1個分ありそうな広いホールに着きました。

アズィールさんが空のバケツから布と白いボトルを

取り出しました。


「じゃあー…ユムル様はドアノブや手が届く範囲の金装飾をこの布と、この研磨剤を使って磨いて下さい。人間の手によろしくないかもなのでちゃんと手袋してくださいね。」


「わ、分かりました!」


白い手袋を付けて準備万端です!

研磨剤を付けて…っと……。わぁ、磨いてもあまり

変わらないほど磨かれてます。皆さん流石ですね。

でもよく見たら細かいところが磨けてませんね。

ここもあそこもあっちも。よし、頑張りますよ…!


30分後…


「ふう…うん、大分綺麗になりましたね。」


「「…」」


チュチュさんとアズィールさんが固まってます。

どうなさったのでしょう?…ハッもしや私は何かやってはならないことをしたのでしょうか!


「あ、あのぉ…」


「すっごーい!!」 「すっげぇえ!!」


「へ?」


目を輝かせたお2人が私に詰め寄ってくる。


「ど、どうしてこんなピカピカなんですか!?

チュチュ、コツとか知りたいです!」


「俺も!!

同じ研磨剤使ってんのにおかしいですもん!」


反応を見るにいけないことをしている訳では無かったのですね。良かった…。


「コツというか私はですね…こうして…」


と1番大きな扉のドアノブを拭いて見せようとしたその時、勝手に扉が開かれる。


え、私何もしてません!!


驚いて開かれた外を見ると


大きな黒い翼を携え、豪華な黒と金糸の着物を身にまとった色素の薄い綺麗な男性が立っていました。

男性は眉間に皺を寄せながら私を見てゆっくりと口を開いた。


「貴様は…」


するとチュチュさんとアズィールさんが私と男性の

間に割って入ってくださる。


「(ウェパルめ…門番のくせにユムル様の部屋に行ったっきりで目的忘れたのかサボったな…!)

えー…本日訪問の予定を伺っておりませんが…どうかなさいましたか?瑀璢うるさん。」


うる…さん?は腕を組み、アズィールさんを鋭い眼光で見ます。


「我が主から偵察して来いとのご命令だったので来た。」


彼は大真面目な顔でそう仰った。

偵察?偵察ってこっそりとやるものでは…。

と考える私とは違いアズィールさんは溜息を吐く。


「はぁ…。瑀璢さん、テーサツの意味をお分かりでないのですか?」


「?相手の様子を探ることだろう。

何も間違っちゃいない。」


「結構間違ってんすよ!!偵察っつーのはね、確かに相手の様子を探ることですが普通はこっっっそりとやるものなんです!!真正面のドアから入ってくるなんておかしすぎるんすよ分かります?!!」


またまた捲し立てたアズィールさん。

肩で息をしています。


「はぁーー…っ…はぁーーっ…」


「…?」


瑀璢さんは涼しい顔で首を傾げていらっしゃいます…!全く通じてない…!!

アズィールさんは頭を抱えてしまいます。


「うがぁーーっ!!

ホントにアンタのそういうところがぁあっ!!」


「アズ君どうどう!」


「おい、そこの小娘。」


ご自分の頭をグシャグシャして荒ぶるアズィールさんと宥めるチュチュさんを無視した瑀璢さんに指を差されました!


「は、はい。」


「我が主の仰る通りだな。…うちへ来い。」


「へ?」

ティリア様のライバルが増える予感…?

(๑° ꒳ °๑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ