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第13話『お水と食べられたアイツさん』


『はぁいとうちゃーく!』


大きなライオンの姿のアズィールさんがお城の前の噴水近くで着地した。


『ユムル様は若様に降ろしてもらってくださいね!』


「は、はい!」


「よいしょっ」


ティリア様はアズィールさんの背中から軽やかに飛び降りて私に向かって手を突き出して下さる。


「良いわよユムル!おいで!」


「あ、は、はい!」


で、でも少しティリア様と距離があります。

飛ばないと届かなさそう…。

でもそれはアズィールさんを…


『俺の背中だからって気にしないで下さい!

ぴょんっと飛びましょう!』


「ってアズが言うんだから遠慮なく踏み抜いてこっちに来なさい!」


踏み抜きは出来ませんが…


「し、失礼します!」


両足に力を込めてティリア様目掛けて飛んだ。


「あっ!?」


「えっ!?」


急にティリア様が声を上げて…!?

疑問に思いつつもちゃんと抱きとめて下さった。


「よ、良かった受け止めれて…どこも痛くない?」


私を降ろした後、肩に手を置いて目線を合わせて下さる。痛いところは無いので頷きました。


「はい、ありがとうございます。」


「な、ならよかっ…良かったわ!」


…?ティリア様のお顔が赤くて様子がおかしいです!


「ティリア様?様子が…あ、もしかして私が重くてどこか怪我をなされてっ!?」


「そんな訳ないでしょ!貴女はアズの抜け落ちた羽くらい軽いわよ!!寧ろ羽のが重い!!」


「す、すみませんっ!」


圧が凄くてつい謝ってしまいました。すると人型に戻ったアズィールさんがニヤニヤしながら私達を見ています。


「あー分かった。若様…見たんでしょー。」


み、見た?一体何を……ティリア様を見るとお顔がカァッといっそう真っ赤に。


「…」


しかも黙ってしまわれました。

困ってアズィールさんを見ると…


「若様、見ちゃったんですよ。

ユムル様のぱ」


笑顔のアズィールさんのお顔の右側が光速の何かによって歪み、遠くまで吹っ飛んでしまいました。


「ぶへぇええっ!!!」


「あ、アズィールさ…っ!!?」


アズィールさんが吹っ飛んだ理由は…


彼を蹴ったであろう長い足を上げたまま止まっているティリア様が物語っていました。

…ぱ?首を傾げるとティリア様が私の両肩を掴み、お顔を近づけます。


「いい!?アタシは何も見てないわ!!

ユムルの純潔はアタシが護る!!」


「は、はい!…?」


どういうことでしょうか?


「ティリア様、君が飛んだ時に下着を見ちゃったんだってぇ…。」


え?噴水から声が聞こえました。下着?あ、ワンピースが捲れ上がって見えてしまっていたのですね。

いけないいけない。


「ちょっとウェパル!!

乾涸びたいのかしら!?」


「え…やだ…です。」


ティリア様が噴水の中に向けて怒ると、ザパッと音をたてて水面から顔を出す人が。この方がウェパルさん?凄い…御髪がまるで水のような透明度がある水色です。綺麗…。


「こんにちはぁ。」


目が合うとのんびりとしたお声で挨拶して下さいました。


「こ、こんにちは。昨日からお世話になります、ユムルと申します。」


頭を下げるとウェパルさんは腕を出し、噴水から身を乗り出した。


「僕はウェパル。ウェパル=フォカロルって言うのぉ。君がアズの言ってたユムル様かぁ。本当に可愛いねぇ。」


「かわ……そんな、私なんて…」


首を横に振るとティリア様が


「貴女は可愛いわ、自信持ちなさい。可愛いと褒められたらありがとうございます、よ!

はい、リピート!」


と、手をパンッと叩きます。

ので言うしかない…。


「あ、ありがとうございます…。」


「よし!」


「僕、水が好きでティリア様がこの噴水に居ていいよって言ってくれてねぇ。

門番のお仕事してるんですよぉ。」


「も、門番?」


彼が指したのは背後。

振り向くとお水で出来た大きな壁が城を囲んでいました。


「ウェパルは水があるととっても強いのよ。

いくらアタシが魔王だからって全ての魔族がアタシの使用人ではないからね。」


魔界はお城だけではありませんよね…。

お城があるなら民となる方々が居られるのは当然です。


「未だにアタシを狙う同族だっているわ。

ま、返り討ちにしてやるけどアタシが手を汚す前にお帰り願う為ウェパルを置いてるのよ。」


「へ、へぇ…」


ティリア様を狙う方々がいらっしゃるとは…そのような方を相手なさるのは今の凄くのんびりとされていらっしゃる姿からは想像出来ませんね…。


「あ〜ユムル様、疑ってますねぇ。

なら、見せてあげますよお。…そぉれっ」


ウェパルさんが手を挙げると、巨大な水の壁の一部が歪んで立派な城門となりました。


「いつ見ても綺麗ね。美しいわ。」


「えへへぇ!」


ティリア様に褒められてご満悦のようです。


「おぉーい!!ちょっ、ウェパルでしょこれぇ!!

開けて下さぁい!!何でさっきまでなかったはずの水門あるんだよぉおおう!!」


門の向こう側に赤髪、黒い服がボヤけて見える人物が。もしかしてアズィールさんでは?


「アズだぁ。」


「開けなくて良いわよ。

放っておきましょう。」


「はぁい。」


「え、えぇ…??」


「行くわよユムル。」


「で、でも……きゃっ」


そのまま私はティリア様に抱えられ、お城の中へ戻った。またお姫様抱っこでした…。


「お帰りなさいませ、主様!ユムル様!」


扉が開いて直ぐにメイドさんと執事さんが赤いカーペットの両端に並んでいらして、チュチュさんが真ん中の少し先で頭を下げていらした。

チュチュさんはもしかしてメイドさんの中でも上の方なのでしょうか…?


「ただいま、チュチュ。アンタ達。」


「た、ただいま戻りました…!」


ティリア様に降ろして頂き、チュチュさんと向き合う。するとチュチュさんが私を見て目を輝かせました。


「わぁ…!ユムル様超可愛いですぅ!!

主様とお揃い!主様いいなー!

チュチュもユムル様とお揃いにしたーい!です!」


「ティリア様とではなく…わ、私と…?」


「はい!」


眩しい笑顔っ!


「ふっふっふ…いいでしょチュチュ!

アタシの特権よ!!」


チュチュさんに自慢するようにティリア様が私の肩を掴みチュチュさんに身体を向ける。


「むーっ!羨ましいですっ!」


「ま、これからコケる回数減らせばお揃いの服作ってあげるわよ。」


「えっ」


あ、御髪がピンッと重力に逆らって…


「が、頑張らなきゃ…!主様、チュチュの頑張ってる姿を見てて下さいね!」


「えぇ。ちゃんとベルの言うこと聞くのよ。」


「うぎゅ…ぜ、善処しましゅ…。」


あぁ、御髪が下がってしまいました…。


「坊ちゃん。」


噂をすればバアルさんが急に現れました。

それに驚いたチュチュさんは小さく「ひぇ」と声を漏らす。


「あらベル。何かしら?…あ、もしかしてベルもユムルとお揃いを狙って…!?」


「違いますよ、私はこの服を脱ぐ気はありません。

ではなく。ケルベロスの世話係の件についてです。」


「?」


バアルさんは大きな溜息を吐き、


「アイツが喰われました。」


と仰った。た、食べられた??あれ?ケルベロス?ティリア様がもふもふさせて下さるというワンコさんですよね…?

バアルさんの報告を受けたティリア様は額に手を当てた。


「あ〜〜〜…()()ぁ?んもう、その場に居たならベルが助けなさいよ。」


「私は近くの者に報告を受けただけですし、

ケルベロスは私の言うことを聞きませんから。」


「それもそうね。アンタ動物に嫌われてるもんね。

食べられたのは()()?」


「…カロらしいですよ。」


あわわ、バアルさんがムッとしてしまいました…。

それにしても食べられたアイツさんがまた食べられた、という事は何回も食べられているはず…なのに、どれ?とはどういうことでしょうか…?アイツさんは何人もいらっしゃるのでしょうか?


「カロね、はいはい。ユムル、ケルベロスって本当はとっても良い子なの。良かったら一緒に行く?守ってあげるから。」


ケルベロスさん…怖いですが気になります。


「お、お供致します…!」


「分かったわ。じゃあ行きましょ!

チュチュ達も諸々宜しくね!」


「畏まりました!

皆さん、お掃除頑張りましょー!」


チュチュさんの鼓舞の声を背に、ティリア様とケルベロスさんに逢いに行くことにしました。

バアルはオーラや目付きからか蜘蛛以外の動物に嫌われています。本人は動物好きです。

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