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第11話『恋愛ドギマギ』

ティリア様の早足に手を引かれ、走る私。

流石、御御足が長い。ティリア様は自室へ私を入れると、彼の全身を映せるほど長い鏡の前に立つよう指示なされた。


「ゆ、ユムル!今から御粧しするわよ!

何が良いとか希望あるかしら??」


顔がまだ赤いティリア様。

もしかしてお風邪を召しているのでは…!?

もしお風邪なら使用人さん達に移ってしまうかもしれない!わ、私が確かめなくては!


「ティリア様!」


「な、何?」


「屈んでください!」


「な、何で?」


「お願い致します!」


「わ、分かったわよ。膝立ちで良い?」


「はい!失礼致します!」


私はティリア様の細く艶やかな御髪を上げ、

自分の額と合わせた。


「びゃっ」


ティリア様から不思議な声が…あ、凄く熱くなって…!!!?これは余程の風邪では!?


「ティリア様!非常にお熱いです!

お風邪を召されているのではないでしょうか!!えっとえっと!!

こういう時は…ば、バアルさん!!」


私はティリア様の机に置いてあった

白銀の呼び鈴を振る。しかし…



バアルさんが来ません…ど、どうして?



「それはアタシが持って鳴らさないとダメなのよ。ベルが()()()()()()()呼び鈴だから。」


後ろからティリア様がそう仰った。


「えっ!そうなのですか!

ど、どうしましょう!?あ、お部屋に戻れば

チュチュさんかアズィールさんを呼べます!」


「アタシは大丈夫よ。最強で美しき魔王様なのだから風邪なんて有り得ないわ!(…のはずなのに何でこんなにも顔だけが熱いの!?ドキドキして胸が苦しいの!?ま、まさか本当に?)」


「で、でも…」


「な、治ったわよ!アタシは本当に平気!

魔族は人間より基礎体温が高いのよ。

(本当は知らないけども!)」


「そ、そうなのですか…?でもお顔が真っ赤っかで…あれ?確かに赤みは引いてますね。

私の思い込みでしたか…!?すみません!」


「アタシを心配してくれたのでしょう?

謝る必要無いわ。寧ろアタシがお礼言わなきゃね、ありがとうユムル。

お陰でアイデア浮かんだわ。えいっ!」


ティリア様が杖を持ち私に振りかざすと、

私の服は主が紺色で、三角形の襟や胴回りが白く、細く綺麗な金色の刺繍、紐が可愛いワンピースに変わりました。ツヤツヤ素材の先が丸い紺色のお靴に踝よりも丈が長い白いフリフリの靴下も履いてました。


「わぁ…こんなに可愛らしい服、

私には勿体ないです…。」


鏡を覗きながらそう言うとティリア様が呆れたように笑いました。


「それはアタシが作った貴女の為のワンピースよ。

貴女以外に着せることは無いし許さない。」


私の為…。


「それに可愛いのは当たり前よ。着ている人が良いのが1番だけど…何よりこの美しき魔王のアタシが貴女の為に考えたのだから!」


屈みながら私の両肩に手を乗せるティリア様。鏡越しでも美しいのですね…このお方は。だから思ってしまう。何故私なのかと。私よりも良い人なんて沢山…沢山居るのに。私が良いと仰って下さったティリア様を疑ってしまう自分が居る…申し訳ない気持ちが溢れてくる。


「……でも…」


「ユムルはカチューシャとバレッタ、どっちが好き?」


「……かちゅーしゃ?ばれった?」


突然ティリア様のお口から知らない言葉が

出てきました。すると後ろから可愛らしい

小物を持った手が伸びてきた。


「こっちがカチューシャで、こっちがバレッタよ。

色は変えられるから形を選んでちょうだい?」


2つとも金色で縁取られているからかキラキラと輝いて凄く可愛らしい小物です…。

バレッタ?は明るい紫色ですが羽根の先端がピンクになっている蝶々の形です。

これが良いかも…。


「この色のば、バレッタ…で。」


「分かったわ。

じゃあハーフアップにしちゃいましょ!」


はーふあっぷ?

ティリア様は丸い椅子を持ってきて下さり、私を座らせ髪を弄り始める。


「ユムルの髪はツヤツヤね。綺麗だわ。」


「洗剤のお陰です…ティリア様の御髪の方が白っぽい金色で…お星様みたいにキラキラしていてお綺麗です。」


「の方が、じゃなくて…“も”よ。

ユムルのもアタシのも綺麗なのだから。」


「!」


「それに洗剤じゃなくてシャンプーね。」


「あ、すみません…。」


「たかが言い方よ。謝らないの。

…よし出来た!ほら、見える?耳ら辺編み込みしてみたの!流石アタシ!ユムルがとぉっても可愛くなった!」


手で顔を上げられ鏡の中の自分と目を合わせる。

そこにはキラキラ眩しい私が居た。


「…きらきら…。」


私、こんな輝いているのですか…?

まるでティリア様と………いやいやいや私なんかと一緒にしてしまうなんて失礼極まりないっ!

私がそんな事を考えていると思っていなさそうなティリア様は私ににっこりと微笑んで下さる。


「気に入った?アタシは気に入った。

だからアタシもユムルと格好似せちゃお。

えいっ!」


杖を振ったティリア様はスーツのような格好に変わりました。紺色、白色、金色の細かい模様……あ、この服と同じ色です…。


「どう?」


周りにキラキラが見えるくらい輝いていらっしゃいます!美しい…!


「とっても素敵です!!」


「んっふふ…ユムルに褒められたらこれはもう完璧ね!じゃあ行こっか!おいでユムル。」


杖を持ちながら手を少し広げるティリア様。

おいで、とは…?


「こっちにいらっしゃい。」


と続いて仰ったのでおずおずとティリア様に近づく。すると背中に手を回され片手で抱き寄せられた形に。


「わっ」


近い…!!し、心臓がバクバク響いて煩いです!身体が揺れてます!!あ、いい匂い…。


「よし!では人間界へ…」


『ふにゃあ〜』


ティリア様の言葉を遮るように赤い猫さんが鳴きながら入ってきました。

あれ?扉は閉めていたはずでは…?

少しだけ開いていたのでしょうか?


『うにゃ』


猫さんはティリア様の足元まで歩いて顔を擦り付ける。


「まぁ。アンタも来てくれるの?」


『にゃーん』


「こ、この猫さんは一体…?」


足元の猫さんを抱っこして肩に乗せるティリア様に伺うと、猫さんの顎を人差し指で撫でながら


「ん?アタシのペットその1。」


と仰った。この子がペットさんですか。

じっと見ると猫さんは目を細めながら


『ふにゃあ』


と鳴いた。か、可愛いです…!


「ユムルが抱っこし……いえ、毛が付いてしまうわね。アンタは定位置此処よ。分かった?」


『にゃ。』


返事をされました。随分と聞き分けが良い猫さんです。真っ赤っかな猫さん…何処かアズィールさんに似てますね。


「ユムル、準備はいいかしら?」


「は、はい!お願い致します!」


「ちゃんとアタシに掴まってなさい!」


背中に回された手に力を込められた刹那、私達は足元に現れた円柱の光の中に包まれました。


「もう良いわよ。」


ティリア様の声に目を開けて辺りを見ると、見覚えのある景色が映りこんだ。


「ここは…」


私がお買い物していた街…!の片隅です!


「人間の往来が頻繁だと目立っちゃうから

此処に来たのよ。」


「な、何故此処に…?」


「ユムルの()()を辿ったのよ。

ほらアタシ、完璧な魔王様だからユムルのお家も分かったわ。迷わず行ける。」


「す、凄いですね…。」


想い、ですか。それを感知するってどんな風に感じるのでしょうか。もしかして辛い想いとかもバレてしまうのでしょうか。


それは…嫌ですね…。


「……なぁに辛気臭い顔してんのよ!

此処に来たのはユムルと回る為だけよ。ほら、アタシに人間の事を教えてちょうだい!」


影が差すこの場所でも眩しいほどの笑顔。

その笑顔を見ると心がふわっと軽くなります。

それが嬉しくて、差し出された手を取った。


「はい!」


『ふにゃ〜!』


人の流れに紛れた瞬間


「ちょっっっっと待ってちょうだい!!」


とティリア様が仰り、壁際まで連れていかれました。そして杖を出した瞬間、それを黒い日傘に変えられました。


「アタシ日光弱いのよ〜。

汗でメイク落ちちゃうし天敵!

ユムルも一緒に入るわよ!日焼けダメ!」


「は、はい!」


肩を抱き寄せられ1つの日傘に2人で入る。


「さ、何処から回ろうかしら!ユムル、

欲しい物があったら何でも言いなさい!」


「あ、いえ…お構いなく…。」


「物凄く構うわ。あ、見てアレ!

不思議な色の布が売ってる!気になる!

行ってみましょ!」


「は、はい!」


ティリア様が目を光らせたのは手芸屋さん。

私もよくそちらの店主さんにお世話になりました。ボタンの付け方から穴の修繕の仕方まで…。お店に入ると


「いらっしゃいま……あら、ユムルちゃん!」


と一つ縛りの女性店主さんがカウンター越しに声を掛けて下さった。


「あ、こ、こんにちは…。お邪魔します…。」


「こんにちは!あら、顔が明るくなった?

良いことあったのかしら!……ってそちらのイケメンさんとご一緒に来店?」


店主さんの目線にはティリア様が。


「こんにちは。綺麗な布が見えたので気になっちゃってユムルと一緒に来ました。

ユムルのお知り合いですか?」


…話し方がまるで違います…。

余所行きスタイルなティリア様なのですね。


「お二人でのご来店ありがとうございます!ユムルちゃんは昔からよく来てくれて仲良くなってるんです!…あの、つかぬ事をお聞きしますが貴方もしかしてユムルちゃんの…」


「「?」」

『にゃー…。』


「旦那さん、ですか!?」


え?ティリア様が…私の…


「…………だ、旦那さんっ!??」


「だ、だって服の色お揃いで仲良さそうだし!

ユムルちゃんとイケメンさんお似合いだなーって思ったから!ち、違った??」


違うも何も私は拾われた身!!私なんかが…!

それにティリア様に失礼です!!


「てぃ、ティリアさ…むぐっ」


『ふにゃ!』


口がぷにぷにの何かに押さえられて話せません!赤い猫さんの手です!

いつの間にか私の肩に乗っています!


「ゆ、ユムルとは()()ふっふふ夫婦じゃないんですよ!あ、アハハ…!勿論な、仲はとっても良いんですけどね!?」


ティリア様、後半何故かキレているようにも見えます。店主さんはそれを聞いて両手を合わせて微笑んだ。


「あら、そうだったのですね。

そっかぁ…ユムルちゃんにも想い人が出来たんだねぇ…お姉さん嬉しいよ…。遠慮なく見てって下さいね!オーダーメイドも承っておりますのでお気軽にご相談を!」


そう言って頭を下げた店主さんは業務に戻ってしまった。


「じ、じゃあユムル、み、見て回りましょうか!」


「は、はいぃ!」


お互い顔が赤く、ギクシャクしているのは私の気の所為だと思うことにします。

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