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第2話「ヒトは空を飛びません」③

「だ、だったら…尚更……俺になんて………。」


 できることなんて何もない。

 何を期待しているかは分からないけれど、人知を超えたものとの争いなんて。


「それは、できることがあるならしてやりたいけど……。」


 悪いことなど何もしていないのに、気まずくなって目を逸らした。

 それを見た人形は大きくため息を吐く。


「———ま、当然あなたのような一般人にどうこうできるような問題ではないでしょう。思いあがらないことですね。」

「え?」

「世界の危機だからと言ったって、結局は響さんの言う通り私たちの問題です。できることなら私たちだけで解決するのが望ましいでしょう。」

「な、なんだよ。だったらどういう……。」

「だから、“協力”していただきたいのです。私たちだけで解決できるようにね。」


 要領を得ない。

 理解が及ばなくて、話が二転三転しているようにも思えてくる。


「協力って……?」

「敵対生物——呼称“トゥトゥーリ”。奴らは別に横並びに一斉に向かってきているわけではありません。疎らに、接触予想時間にはズレがあります。それらが先の大爆発と同威力と仮定して計算した結果、防衛機能が耐え切れるのは約3ヶ月。今は反撃の手段がないだけであって、フィドゥキアの技術ならばその間にそれを整えることは不可能ではありません。」

「そう、なのか。」

「はい。ですが大きな問題として、足りないものがひとつ。」


 そこまで言うと、人形はふわりと再び机の上に飛んで戻った。


「ズバリ、開発資金です!」


 そして腰に手を当てて、「バシッ」っと擬音が聞こえてきそうなほどキレのある動きでこちらを指差した。


「世界規模、いぃえ宇宙規模!3ヶ月の猶予の中で、殲滅装置開発に発生する莫大な費用は借金でどうなるものではありませぇん!未曾有の危機とはいえそこには生命があり、生活があり、営みがあります。そのバランスを、そうやすやすと破壊するわけにはいかないのですよ!なので簡潔に言ってしまうとあなた方地球人には我々を援助していただきたい!」

「は、資金…援助だぁ……?」

「しかし、そのためにこちらの世界の経済バランスを崩すなんてことはできません!なので各国——196あると言われる世界中の国々の選ばれた代表者10人から毎週金曜日に5000円!合わせておよそ毎週1000万円!我々フィドゥキアの世界政府に援助していただくのです!毎週金曜日に5000円振り込むだけであら簡単、世界は救われるのですよ!」


 生々しい話というか、なんというか。

 詐欺のようにも聞こえうるその言葉に響は顔をしかめた。


 しかし国の代表者がそれぞれ10人いるのなら、自分以外にも9人同じ被害者がこの日本のどこかにいることになる。

 それを思うとどこか同情的な気持ちになる。


「五千円って……つまりあのお前の出てきたガチャマシーンか。」

「そうです!あれぞまさしく世界間を繋ぐパイプ。危機と戦うためのFMファイナルミッションであり、世界間初のFMファーストミッション。なんと言ったか……そう、ここ日本に定着する文化、『Flower(花の) Friday(金曜日)』に現れるATM的な集金装置。それが“FMゴリラ”の正体なのです!」

「い、いやいやいや……。」


 ただの興味本位で回した一回のガチャ。

 それが地球の、まだ見ぬもうひとつの星の命運を左右するなど誰が予想できるものか。


「これは、回り回ってあなた方の未来を守るための先行投資にもなります。そうであればたかが五千円、安いものでしょう。」

「ば、馬鹿いえ!俺をなんだと思ってる、さっきも言っただろ!こっちは生活費だけで精一杯の貧乏生活だって!毎週五千円が安いだと……毎月4回金曜があれば月2万だぞ!?そんだけありゃどれほどうまい飯が食えると思ってる!?」

「そう、そこなんですよ問題は。私だってこんなうまやみたいな家に住む人間と契約するなんて思っていませんでした。予想外中の予想外です。それに、五千円という規格外な値段設定。その全てを小銭で要求してくる手間。金持ちの道楽でもなければ引かないものとばかり。」

「馬鹿にしてんのかテメェ!」


 響は距離を詰めて人形をつかもうと右手を振りかぶるが、人形は宙に即座に浮いてひらりとそれをかわした。


「くっ……そ…!逃げんなコラ!」

「バーカバーカ!当たりませんよー!やーいビンボー!」


 何度挑戦しても人形には指先ひとつ触れることができず、小学生のような罵声を浴びせられ、遂にはその手を握りしめて怒りのまま机を叩く。


「あぁ、そうかい!危機かなんか知らんけどな、一切金なんて払ってやるもんかよ!地球が滅びる?知ったこっちゃないね!こちとら人生ずっと滅び続けてんだよ!」

「うわぁ……開き直りですか…おかわいそうに。」

「うっせぇ、性悪人形が!協力を頼む気あんのか!?たかが五千円ってならなぁ、一人払わなくたって一緒だろうな!俺は払わねぇぞ!お前だってクーリングオフだクーリングオフ!」


 クーリングオフ。一定の期間内であれば無条件に契約の撤回ができる制度。

 異世界相手にそれが通じるかどうかは分からないが、しかしこれは昨日の今日の話だ。真っ当な相手、あるいは世界であるならこれを受け入れないことはないはずだ。


「はぁ、仕方ないですね。ここまでしたくはなかったのですが。」


 人形はこちらを一瞥してため息を吐くと、右手の掌を上にしてこちらに差し出す。

 そして「ピッ」という何かしらの起動音をどこからか鳴らすと、掌の上に小さなモニターが現れた。


「な、なんだよこれ………数字……————ッ!お前…っ、これ……!」


 そこにあったのは数桁の数字。長めのと短めのふたつの数字の羅列。

 どこか見覚えがあるなと不思議に思っていると、いつしか響はひとつの答えにたどり着く。


 そして即座に人形の顔を見ると、人形はにやりと悪意のある笑顔を浮かべた。


「ふふふ、見覚えがあるでしょう。これはあなたの口座番号とその暗証番号です。たいした額ではありませんでしたが、あなたの全財産がこの中にあることも確認済みです。」

「ふざけんな、お前マジで、これはやりすぎだろ!何が神だ、とんだ悪魔じゃねぇか!?」

「我々の事情を知ったからには協力をしていただかなければ“困ります”。そもそも私は監視者である前にヒトとヒトとを繋ぐ架け橋。“協力”を仰ぐために造られたモノ。全てを救い、その結果の繁栄を願って製造されたヒトのためのマシーン。その46号機なのです。」

「はぁ!?何言って……!」

「私はこの重大任務を完遂することだけをプログラムされた存在。言ったでしょう、未曾有の危機と。経済バランスを崩すなんてことはしません。しかし、一人の人間がどれだけ世界に影響を及ぼすものか。両世界のためなら、一人の人間くらいいなくなっても平気だと思いませんか?」


 背筋がぞわりとした。

 言っている意味を一瞬で理解した。

 要するにこの人形は、協力だ何だとのたまいながら、一切その相手を見ていないのだ。


「協力していただけないのであれば、無理やりにでも協力させるまでです。いえ、”協力していただいた結果“だけ貰うまでです。そのほうが建設的だと思いませんか、響さん?」

「お、前。」

「もちろんこれは一例に過ぎません。他にも方法はいくらでもあります。ね、だから潔く協力してください。お互いのためにも、未来のためにも。」


 人形は掌に浮かんだ映像を消すと、その手をそのままこちらへと伸ばす。

 室内灯を背に微笑んで見下ろすそれは確かに、その瞬間はまるで神か天使のようにも見えた。


「……協、力。そうか、そうしないと、ダメなんだよな。」


 響は恐る恐る手を伸ばす。

 行き倒れが意味もなく太陽に救いを求めるように。


「ええ、そうです。その方がいいに決まってます。短い間ですが、よろしくお願いしますね?」


 太陽は笑う。

 慈愛をもってその手に応えるべく響へと近づく。


 そうして指さきが触れ合おうとするその瞬間。

 響の手は人形の手を掴むことなく瞬時に加速して通り過ぎ、小さな体を鷲掴みにした。


「グエェェェェェエ!!ゴホッ、何するんですか!」

「三文芝居が……!分からないとでも思ったのか?」

「え、え、何の話です?」


 露骨に人形の目が泳ぎ始める。

 響の想像が的を射ているかはこれから確認するところだが、何か隠しているのは間違いないようだ。


「そんなことできるならなんで契約の中にお前だけでなく、俺もお前の監視者になることが含まれる?答えはひとつ、俺たちは互いにフェアだからだ。どちらか一方が優位ではなく、同じヒト同士対等に。それがフィドゥキアの考えだからだ。」

「い、痛いです響さん!力入れ過ぎィ!ギブ!ギブですぅ!」

「監視者というものが相手に対してどういう権利を行使できるかは分からない。分からないが、きっとそれはお互いの世界の関係を良好に保つためのモノだ。いや、保つために相手を抑制できるモノだと俺は思う。なら、どうして自分達の不利益にもなりかねない権利を、自分達だけではなく見ず知らずの他人にも与えるのか。」


 バタバタともがきながら手の中を暴れている人形の表情が青くなっている。

 どことなく口の端から泡が吹き出しているように見えて、響は咄嗟に手を離した。


「ゴホッ、ガッハァッ!!ひ、ひどいじゃないですか……!」

「……お前は言ったな。フィドゥキアで起きたことがこちらでも何らかの形で起きてしまうと。逆もまた、然りだ。こちらで起きたことはフィドゥキアでも起きる。フィドゥキアはそれを恐れているわけだ。」

「な、なんの話かさっぱり分かりませんね……。」

「196の国に10人ずつの代表。つまり、お前達人形も1960体今地球上に存在することになる。お前は自分のことをマシーンだと言った。今、人と同じ体の作りをしていても、実際はフィドゥキアで造られた生命だと言った。そういう風にプログラムされたってなロボ言語も吐いてたなぁ。」


 人形は無言で視線を顔ごと逸らす。

 それを見て響の口端がにやりと上がった。


「それがもし、何かの不具合があって一斉に暴れ出したらどうなる?今、この大事な時期に国家を揺るがすほどの大事件が起きたなら、フィドゥキアでは一体どうなるんだ?これはあくまでも予想に過ぎないが、俺たちにそんな大層な権利があるのはそういったことを防ぐ意味もあるんじゃないのか?」

「アーアーキコエナーイ。」


 人形は両手で耳を塞いでそれ以上の会話を終えようとしている。

 響はそれを見ると、人形の細い腕を両手で掴んで無理やり引き離した。


「反感を買うようなことをして信用を失って、都市伝説のような話だが、世間に悪評が知れ渡って、いずれは世界中がお前達に対策をする……。無茶なように聞こえるけど、なくはないんじゃないか?お前がマシーンだって言うなら、出会って一日でこんな“成果”を挙げるマシーンをフィドゥキアはどう思うんだろうな?もしかしたら、最悪廃棄処分ってこともあるんじゃないのか。」

「は、廃棄処分………!?」


 両腕の自由を奪われた状態で青ざめて、人形は細かく震えだす。


「それはお前も望むところじゃないだろう、ゴリラ46号。口座を押さえたからいくらでも引き出せる、か?いいぜぇ、やれるもんならやってみろよ。」

「アワ、アワワワワ………。」


 随分古い表現の仕方で怯える人形。

 しかし、人形がヤケになって本気で口座から全てを引き出したらどうしようと響も内心気が気でなかった。


 心の中で、ただ諦めてくれと祈ることしかできない。

 だから、正直これ以上切り返す言葉もなく、人形が何か言い出す前に響は続けて口を開いた。


「ま、お前のさっきまでの顔見てりゃあ必死だってことはさすがに分かる。粗探ししてたわけじゃないけど、きっとお前の言う通り本当に世界の危機ってやつなんだろう。こんな人形が平気で居るんだ。もうなにが普通かも分かりゃしねぇよ。」


 素直じゃないけれど、信じていると。

 遠回りに不器用ながら響はそう言った。


「だから、まぁ。全部に納得したわけじゃないけどさ、協力はしてやる。直接俺が何かするわけじゃないんだ。だから、それくらい。ああは言ったけど、本当に滅びが来るんだとしたら……死んで欲しくない奴くらい、俺にだっているんだ。そのためだったら、五千円くらい、安いものかもな。」


 言葉は尻すぼみになって、次第に声は小さくなった。


 思い描いたのは母。そして父、もうずっと話もしていないかつての友人達。

 自分はさて置き、彼らの未来までも奪われるのは、何かが違う気がした。


「……響さん……私は信じていましたよ………!そしてそれが全て私の計算ずくだったということは見抜けなかったようですね!言質はとりましたよ!」

「は、はぁ?」


 急激に元気を取り戻した人形は、風を切る音を立てるほどに勢いよく顔を上げる。

 そして、再び先ほどのように掌の上に映像を出現させると、そこには口座番号ではなく動画サイトで見るような、再生マークの三角形が浮かび上がっていた。

 空いたもうひとつの手で人形は再生マークに触れると、聞き覚えの声がリピートで流れる。


『———得したわけじゃないけどさ、協力はしてやる。』


 何度かリピートして、満足気な表情でそれを停止すると、「ピコン」という小気味のいい機械音が流れる。

 そうして人形は強く手を合わせて一度叩くと、元気よく響の周りを飛び回った。


「ふっふふー!これで契約は成立ですね!」

「ど、どういうことなんだ?何が起きたんだ…?」

「私は一度嘘をつきました。まぁ、細かい嘘は省いて大きな嘘をひとつ。それは一方的に契約をフィドゥキアが結ぶということです。実際は、相手側の協力の意思がなければ契約は結べません。」

「な、何だと……!?」

「フィドゥキアはあくまでもホワイトな世界です。こちらから行くときに相手は選べませんし、その相手が悪人かもしれない。それなのに一方的になんて悪手だと思いませんか?」


 しまった、そこまで頭が回らなかった。

 響は唸りながら頭を抱えて、肩を落とした。


 ならば先ほどの機械音は、契約成立を知らせる通知音なのだろう。


「相手を調査し、それが別段悪人でないのならば後はこちらの交渉次第。上手くいかなければそれこそ廃棄処分とされかねませんし、そうでなくともゴリラという型番の沽券に関わります。どうしたのです響さん…紛いなりにもあなたはゴリラを救ったのですよ……!これは名誉なことだと知るべきです。」

「………知らねぇよ、もう……はぁ。」


 口に出すほどに大きなため息をひとつ。


 ならば、もう一体どこまでが本当なのか分からない。

 元々の分からないを分からなくされたのだから、わけが分からない。


 とにかく、何だか分からないけれど毎週五千円払うことになった。

 ただその事実だけが脳の中を駆け回った。


「はぁ、もういい。もう寝る。そうだ、明日もまた仕事なんだ、さっさと寝るぞ。」


 もうどうでもいい。

 うなだれる響の頬に「照れるな照れるなー?」と言いながら肘でグリグリと押し続ける人形を手で払うと、響はずっと隣に鎮座していた巨大な箱を袋から取り出した。


「……ん、何なんです、それ?」

「何って、お前の家だよ。朝お前が言ったんだろ。『プライベート空間がない。見目麗しい乙女なんだから、おとこと同室はどうかと思う』ってさ。置く場所がねぇし今日は色々どかすのも面倒だから、机の上に置くけど。別に一日くらいいいだろ?」


 興味深そうに覗き込む人形に響はぶっきら棒に言う。

 すると、みるみるうちに目を輝かせた人形は、響の顔の周りを3周高速で飛び回ると、最後に人差し指で響の額を軽く突いた。


「んもーぅ!響さんたら照・れ・屋・さ・ん♡そうならそうと先に言ってくださいよーぅ!」

「ええい、鬱陶しい!蝿かお前は、離れろ!」


 人形は響の肩に座ると、ピットりと響の頬に体を預ける。

 謎の喜びの表現に鬱陶しく思いながらも、響は目の前の箱、“キルマフィアファミリーDX『洋館抗争編』”を開封して組み立てていく。




 次第に手持ち無沙汰になって、人形は響の手元を覗き込むように浮遊し始める。

 それを視界の隅に捉えて、響は視線をそちらに移さずに、作業を進めながら兼ねてからの疑問を投げかけた。


「……そういやさ、今更だけど。」

「はい?」

「お前って色々トンデモなのにさ、自分で空は飛べねぇんだな。」

「はぁ、当たり前じゃないですか。“ヒト”は空を飛びません。そんなの常識でしょう?」

「……ああ、そうかい。」


 当たり前のことを、当たり前だと返答された。

 しかし、当たり前なのではあるが、それがコレの発言だと思うとどこかおかしいようにも感じた。


「———あぁ、えっと。」


 カチカチと組み立てる音だけがこだまする四畳半。

 数秒の間。わざわざ人形を黙らせたというのに、響は落ち着かなくなって再び口を開いた。


「何ていうか、納得なんて一切してないけど、さ。これからしばらく一緒に暮らすわけだろ?だからさ、その。」


 手を止めて、歯切れ悪く、ぎこちなく話し始めた響きを見て、人形は首を傾げる。


「……よろしくな、ヨンロク。」


 照れ臭そうに頭をかいて、一言そう言うと照れ隠しのようにいそいそと再び響は組み立て作業に戻る。


「よん、ろく?」

「何だよ、46号だからヨンロク。別にいいだろ?ゴリラだのゴリちゃんだの勘弁してくれよ。そっちでは神聖なんだか知らんけど。」

「よん、ろく。ヨンロク。へへ、ヨンロクですか。」


 咀嚼するように何度か人形——ヨンロクは呟くと、「うん」と一言。言葉を飲み込んで、ぱっと花が咲いたように笑った。


「えへへ、ヨンロク。いいじゃないですか。」


 本当に嬉しそうに、そう言ったヨンロクはひらりと響の眼前に再び浮遊する。


「こちらこそ、よろしくお願いしますね、響さん!」


 右の掌をこちらに向けて、何かを期待するかのように待つ。


「このサイズ差で、ハイタッチは無理があるだろ。」


 皮肉を言いながらも響は手の汚れをズボンで拭う。

 そして、苦笑しながら満更でもなさそうな表情で、左手の人差し指でそっとヨンロクの掌を押した。



 これから三ヶ月この騒がしい人形、ヨンロクと過ごさなければならないと思うと頭が痛くなる。

 それでもずっと、これからもずっと一人で生きていかなければならないのだと。

 これ以上の繋がりはきっとないのだと、そう感じていた響にとって、この出来事は既に奇跡以上のものだった。


 —————だから。だから。

 誰かと馬鹿騒ぎしたり、罵りあったり、ふざけあったり。時間が有限であったとしても、こんな些細なことが自分にとって救いになっているのだと。

 調子のいい人形に、そんなこと口が裂けても言えるはずもなく。

 これからどうなったって言ってやるものかと、ヨンロクの後ろ姿を横目で見ながら、響は密かに口角を上げたのだった。

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