九枚で良い
『げっ』
久々に会ったとは思えないほど二人は驚いていた。
「そもそも、お前が悪い!」
男が睨みを利かせて突っかかってくる。
「誰だよ」
「アデル、だ!」
「ああ、そんな奴もいたな」
大きな斧を背負っているから分からなかった。
粉々に片手を粉砕されたはずだが、持てるように訓練したのかもしれない。
「なんだと」
「ソラン、何があった」
アデルに構うくらいなら、ソランに声を掛ける。
「…………」
『お前のせいで、ギルドは解体になった!』
解体とは事実上の消滅を示す。
「俺のせいなのか?」
「突然消えたと思えばこんな街に居やがって、どうしてくれる」
「三人で手を合わせれば、なんとかなる雑務だと思うが」
他のギルドから届く要請に応える代わりとして、その地域の野菜やら酒を貰っていた。
これを無視し続けると信頼が地に落ちたりするが、届く紙で察知してくれていると思っていたんだが。
「それは、お前の、仕事だろ! なんで消えた!?」
そうではないらしい。
「ソランに追放されたからだ」
「なん……だと」
アデルが驚いた様子でソランを見る。
「こいつを、追放した…………?」
「冗談のつもり、だったの」
ソランはシクシクとその場で涙を拭う。
「喜んで出ていくに決まってる、したいわけがない」
なぜかアデルに同情された。
「同情するなら金をくれ」
「やるよ」
本当にお金をくれた!
「助かる、トカゲの皮でも要るか?」
「九枚で良い」
九枚の皮とお金をトレードすると、アデルはソランの手を引く。
「リュウキ、提案がある」
「なんだ?」
「次に会った時は決闘を申し込む」
「良いぞ」
消えて行った二人の後には嵐のような静けさが残った。
「……さて、よくも駄弁ってくれましたね」
「すまない」
「割り込んでくれたことに免じて許します、なんの用でしょう」
大トカゲの話をするとしばらく待てと言われてクエストワークの隅に寄る。
「なんだったの? 腹立つんだけど」
リドルが腕を組んでふわふわ浮いていた。
「旧友だ、あれがアデルとソラン」
「決闘する時、私が邪魔すれば……」
「そんなに怒らなくてもいいぞ」
しばらく待つと確認が取れたと受付に呼ばれた。
「報酬の、女の子です、大切にしてあげてください」
向こうのドアから出てきた女の子は綺麗な足取りで静かに歩み寄ってくる。
薄汚れた薄手の白い服とは対照的に、髪は綺麗な青を放つ。
『奴隷と申します、どんな扱いもあなたなら……』
思った以上に奴隷だった。
「ああ、素足のお前は早速だが荷物に」
「はい、どんな物でもお持ちします」
「尖ったものを踏むと危ない。お前は荷物に成れ」




