そうなのか
満足した俺は着替える為にルビーを連れて、服を置いた場所へ。
『ここで待っててくれ』
「にゃあ?」
両手で語るとルビーのついてくる足が止まった。
影でコソコソ服を手に取り、足を通す。
「劇見てたよー、幽霊になったからこっそり仕組みも見てきちゃった、動く森ってすごいね!」
「リドルか、それは良かったな」
「面白かった! 演じてくれてありがとう」
「ほう、成仏するつもりか」
着替え終えてリドルの最後を眺める。
「え? そんなわけないじゃん」
「そうなのか」
「幽霊が都合よく成仏してくれるなんて、思わないで!」
「都合が悪いことは自覚してるんだな……」
「何か言った?」
「言ってない」
ルビーの近くに戻るといつもの姿でカゲも居た。
カゲは元々美人なのか、服が元に戻っても王女の面影を感じさせる。
「馬車があるといいんだが」
「なかったら、エムを馬車にしよう」
普通に馬車はあった。
「ちっ」
「誰か舌打ちしたな」
「してない」
「いや、ルビーがするとは思えないぞ」
リドルの証言も届いている。
「するつもりはなかったんだ、エム」
したのかよ!
「しかし、リドルとはお別れか」
幽霊はその場に縛られる印象だ、短い付き合いだったな。
「え? 普通について行くよ?」
「そうなのか」
馬車に揺られてホウセンカまで戻る旅路。
振り返ると街がまだ見える。
「エム、座っても……」
「ダメだ」
「立っていろと言うのか」
不安定な馬車の中でカゲは足を開いてソロリと立ち上がる。
「危ないぞ」
「ダメだとエムは」
不意にガタリと揺れ、状況に既視感を抱く。
「きゃあっ」
体制を崩したカゲがあらぬ方向へ倒れようとしていた。
そうなる前にカゲを引き寄せ、強引に両手の中に収めた。
「危なかったな」
「今回は怖かった」
下手したら、馬車の窓から転げ落ちてもおかしくない。
「これに懲りたら変なことはするな」
「エムが最初からこうしておけば……」
「そうする」
ルビーは膝を合わせて正座している、カゲには見習って欲しいな!
「カゲは、寝る」
馬車にしばらく揺られた俺達。
ホウセンカに降りると別の街に向かって馬は走って行った。
「カゲは、眠い」
「だろうな」
ギルドに向かうとカゲは透明になってついてくる。
『全然来なかったコトに関して、言うことはある?』
シンスはいつも通りだ。
「ありません」
「有り金全部」
手のひらをクイクイとされ、全財産をポイ。
……しまった! カゲと半分こしてねえ!
「やっぱり返してください」
「だめー、ある分全部貰う」
まあ、俺が多く稼げばいいか!
『シンス殿、はした金など返しても変わりはしない』
後ろのドアから出てきた人物は、背後からシンスの金袋を取ると俺に直接渡してくれた。
『久しぶり、リュウキよ』
コノハはニヤリと笑っていた。




