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全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
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建前の善し悪し








『……そんなに怒らないでくれ』


 さきほど飛んできたグーの右ストレートが頬に当たって痛い。


「本当にやらかしてくれたわ!」


「そのつもりはない」


「昨日の夜、遠くの街に向かう商人がホウセンカを休憩地点にしたの」


 クレアは身振り手振りで話してくれる。


 どうやら、宿の件をまだ怒っていたらしい。



『その商人は凄く臆病だけど、商人の末裔だから脅せば大金が出たのに!』



「卑怯じゃないか」


「他人に優しくできる立場だと思ってる?」


「できないのか?」


「ギルドに戻ったら分かる……」


 先に行こうとするクレアを呼び止める。


「待て、皮を売りたい」


「早く戻った方が」


 俺は無理を押して道具屋に向かった。


「なんだい」


「この皮を買ってくれ」


「ウルフファングかい! 一枚もなくてねえ、高値で買ってやろう!」


 5000ヘルで買ってくれた!


「助かる」


「こっちも助かったよ……!」



 隣で見ていたクレアが嫌そうな顔をする。



「さっさとして」


「何を怒ってる?」


「別に!」


 早足のクレアを追いかけてギルドに戻ると。


 クレアが「どうなっても知らないから」とシンスに人差し指を向けた。


 美女の視線を集めながらシンスに近づいてみる。


『もちろん、稼いで来たよね?』


 シンスの声が自信に溢れている。


「稼いできました」


「へえ、こんな……あ?」


 昼のピッケルは頑張ったからな!




「たったこれだけ?」


 と思ったら少ないという話が始まった。


「ウルフファングの皮が高値で」


『これのどこが?』


 前よりお金で膨らんでて重いのに、シンスは怒り始めてしまった。


「商人はどうしたの? 宿屋の商人は?」


「……」


「クレア! どうなっているのかしら!!」


 クレアの方に強い言葉が向く。


「そ、それは……伝えたけど」


「本当に?」


「うん……」


 商人の存在は、ついさっき聞いたんだけどな。



「リュウキ、あなただって叱られたくないでしょう?」



 ポイッと投げられた金の袋が俺の胸に当たってチャリンと床に落ちた。


「はい」


「クレアが正しく情報を伝えてないと思うんだけど、あなたはそれを知った上で商人を見逃したっていうわけ?」


「……」


 みんな、俺に優しいな。





『クレアから、宿屋にカモれる商人の末裔が居ると前日に聞いていましたが、無理を言って草原に向かいました』





「あなた、やってくれたわね」


 シンスがカツカツと歩み寄ってくる。


「これさえできたら、100億の件も流したのに」


 俺の肩がパンッと強く押されて数歩下がる。


 清楚な印象とは裏腹に、歯をギリギリ鳴らしながら睨まれた。


「……さっさと稼いできて!」



 出て行けと。


 シンスに腕で払われ、拒絶された。



「はい」


 俺は素直に下がることにした。


 壁に背を預けたコノハを横切りながら、出口の扉に近づく。


『クレア、そんな無能のサポートはもういらない』



 増えていた足音が一つ消え。



 ギルドを出てからピッケル代をどうやって稼ぐか考える。


 シンスは敵意剥き出しで、金の袋を拾える雰囲気じゃなかった。


 殴ってこないなんて、まだ優しいが。


『そんなわけないでしょ』


 振り返るとクレアが!



「無能のサポートは要らないぞ」


「……本当は私が無能だから」


 急に威圧感が減らされると気持ち良くない。


「自己肯定が低いのは良くないぞ、空を見ろ」


「あんたに言われたくない」


 クエストワークに向かおうと歩き始めると、クレアもついてきた。


『庇ってくれて、ありがと』


 怒られたかった、それだけだ!


 なんて言えるわけもなく。


「10ヘルの借りを返した、それだけ」


 仕事に対する対価は安いほど、気持ちが良い!


「これから宿取るでしょ? せめて払わせて」


「取らないぞ」


「え?」


 クエストワークに入って最も稼げそうな依頼を探してみる。



「依頼を受けて休む奴が居ると思うか?」


「わ、私にやらせるのかなって」


「女を口で指示するほど俺は女々しくない」


「へそくりの件は?」


「…………よし、良いのを見つけた」


 都合が悪いことは無視だ無視!


「ちょっと?」


「な、なんだよ」


 へそくりの件だったら答えないぞ!


「その依頼、報酬おかしくない?」


 薬草を集めて欲しいというだけの内容で報酬は5万ヘル。


 普通は2000ヘル辺りだな。


『どこがおかしい? 5万ヘル分の薬草を届けたらいいだろう』


『おかしいのはあんただった』



 受付の人に依頼書を見せると。


『最近、このような依頼で帰ってこない人が多いので気をつけてください』


 美味しい話には裏があると教えてくれた。



「俺も当分帰ってくるつもりはない」


 5万ヘル分の薬草を楽しみに待っている女の子の依頼だからな!


「は、はい?」


「こっちの話よ! さっさと行きましょ!」


 クレアに引っ張られてクエストワークを後にする。


「なんだよ、本当のことだろ」


「薬草ごときで本気にしてたら、体持たないから」


「そうかもしれないが、みんな感謝してくれるぞ」


「もっと自分の為に生きたら?」


 自分の為に、このギルドに入ったんだけどな。


「……そうだな」





 赤いドラゴンの寝床を見つけた方の草原に向かった。


「どうしてこっちなんだ?」


「薬草多いからでしょ、少ない方が良かった?」


「あぁ……」


「何で悲しそうにするの」


 ちっ。心の中で舌打ちする。



 薬草が沢山あるという遠いところに来て採取活動を行う。


「あー触りたくない」


「触らなくていいぞ」


「いや、手伝うから」


 薬草って言うのは特定の花の根っこ、赤い花と黄色い花の根を求めている。


 土を掘る疲れ作業、剣の持ち手でガシガシ掘るのがコツ。



 青い花は花びらに魔力を帯びているらしく、押し花にしてアクセサリーにしている人が居るらしい。


「クレアはどっちだ?」


「なにが」


「青い花は食べる派? 装飾品にする派?」


「食べるやつなんて居んの?」


 変な目で見てくるクレアの為にパクリと青い花を食べて見せる。


「えぇ……?」


「味は悪くないぞ」


『もう触ってこないで』



 それから山の如く花の根を集めた俺達。


「疲れた」


「休んでいい」



 不意に草木がカサカサ揺れ。



 振り返ると四人の男女が現れていた!


「手伝ってくれるのか!」



 相手は肯定するようにシャキッと剣を抜く。



『騙して悪いが』









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