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全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
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表裏一体










『騙しやがってえ!』


「盗もうとするやつが悪い」


 文句を垂れながら暴れる少年を抑えて少し。


「くそっ! こんな所でくたばっちまうのか!」


「そもそも、なぜ盗みを働く?」


「貧しいからに決まってる!」


「そうか……」


 あまり住み心地が良い場所ではないだろう。



『離せ!』



「分かった」


 抑えていた手を離して少年を自由にさせる。


「……え? は?」


「どうした?」


「離せと言われて本当に離す奴があるかよ……!」


 少年は駆け足でその場を去っていった。




「エムは、優しすぎる」


「そうか?」


 静かに近づいてきたカゲは背中に飛び乗ろうとしてきた。


「危ないだろ」


「背負え」


「わかったわかった」


 首元を腕に持っていかれては抵抗もできない。


 カゲを背負うことにする。



「……楽だ」


「そうだろうな」


 しばらくして商人に運び終えたと言われ、報酬はクエストワークにあると聞かされる。


『残念だが、明日まで馬車はない、こちらとしては馬を休めたい』


「帰れないというわけか、これは後で怒られるな」


 クレアから加工してもらったドラゴンを貰うつもりだったんだが、今日は諦めるしかない。


「提案するとすれば、我が商店に泊まらせてやるくらいならできる」


「ああ、頼む」


 夜ではないうちは探索も兼ねて辺りをブラブラ。


「舞台みたいなやつはなんだ?」


「知らないのか」



 俺の背中でくつろぐカゲは面倒くさそうに説明はしてくれる。


「ここは昔、演劇で栄えていた。あの場所で一場面を切り抜いたような世界が生まれる奇跡は素晴らしかったと聞いている」


「今は……随分とアレだな」


「栄えの前に廃れあり、世界が劇に飽きれば見放されるのは仕方ない」


「見てみたかったな」


「演じることは誰もがしていることだ、エム」


 そうだなって返して夜まで歩いた。


 知らない場所の探索は何も起きなくても楽しい。


「振り回して悪いな」


「背中は楽だ、文句はない」


 普通についてきてくれたルビーがじーっと見てくる。


「にゃーあー」


「悪いな」


 恨めしそうに俺を睨んでにゃーにゃー言ってくる。


 変なことをしてしまったのかもしれない。


「にゃー」


「む、ここは譲らぬ」



『うにゃあ……』


 頑固な意思を見たルビーがシクシクと目尻を拭う。



「にゃあにゃあ」


「むう……」


「にゃあ」


「お、降りる!」


 カゲは俺から降りるとバツが悪そうに変な方向を向く。


『ルビーを、背負ってあげてくれ』


「優しいな」


「当たり前、だ!」


 そもそも背負う前提がおかしいと思うんだが、聞かないことにする。


「ルビー、来てもいいぞ」


 しゃがんで構えると一向にルビーは乗ってこない。


「にゃあ?」


「どうしたんだ」


 よく分からないといった様子で俺とカゲをじっと見る。


「……単純に腹減って泣いていたのかもしれないな」


 カゲにお菓子をねだって泣いてみたが、ダメだったので諦めたパターンはありそうだ。


 そもそも、ルビーに言葉は分からない。


「どうした、カゲ」


 カゲは顔を覆ってプルプルと震えている。



『え、えむ……背負え……!』



「降りたのが悪いしな」


「くっ!」


 歩くことを再開すると、今にも泣きそうな様子でついてくる。


「おねがい、えむぅ……」


「諦めろ」


「鬼! 悪魔!」


「優しくねえ」









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