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全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
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踏みにじられる










 ギルドに入ると美女達が話し合っていた。


 内容は聞こえなくて残念だ。



『どうだった?』


 美女の輪から外れていたコノハが、クレアに声を掛ける。


「他の男よりは良いかな」


「珍しい」


「コイツと出かけたら分かるよ」


 そう言ってクレアは輪に入っていく。


「シンス、寝酒の件はこれで勘弁して」


「彼はどこ?」


「あそこ」


 振り返ったクレアに指で招かれた。


「へえ、近づきなさい」


 シンスがニヤリと笑う。


「はい」


 大きな一歩で近づく。


「どれくらい稼いだ?」


 金が入った袋を渡す。


 膨らんだ袋の底を持ったシンスは、重さを測るようにポンポン浮かせた。


 手のひらに戻る度に袋がチャリンと鳴る。



「……たったこれだけ?」


「はい」


「こんなに時間かけて、たったこれっぽっち?」


「はい」


『呆れた』


 そう言って袋が逆さまにされる。


 人差し指と親指で摘まれた袋が、容易く中身を落としていく。


 ジャラジャラとコインが散らばる。


 流した努力が床に散らばる。




「これじゃあ追放かな」




 かかとで大切なコインをグリグリ踏みつけられ。


 ただでさえ、コインの音で静まった空間。



 惨めな音が大きく響き渡った。



 俺はコインを拾う為にしゃがんで手を伸ばす。


「汚らわしい」


 頭を豪華な靴で突かれても構わない。


 俺は気にせずコインを指で寄せ集める。




『ちょっと待って!』




 声の主はクレア。


「なに?」


「本当はこれも、コイツが稼いだのよ!」


 タッタと駆けて俺に近づくと袋の中身をばらまいた。


 連なるコイン達に周囲の美女が驚きの声を上げる。


「……そう」


 シンスは周囲の声に押されて足を下ろした。


「もう一回稼いできて」


 シッシと左手で払う動き。


「はい」


 俺は集めたコインを握りしめてギルドを出た。



 ちょっと気分が良い、シンスは良い人かもしれないな!



『そんなわけないでしょ』


 振り返るとクレアが。


「聞こえたのか」


「あんた、抵抗しなさいよ」


「女に手を出す男じゃない」


「その通りすぎてきもいわ」


 きもいはつらい!


「クレアの落としたコインは多かった気がするんだが」


 完璧に半分を渡したはずだ。



『……手持ちも全部落としたの!』



 キッと俺を睨みつけてくる。


「もったいない」


「そうね、勿体ないわ! せめて感謝しなさい!」


「ありがとうございますクレア様」


「バカにしてる?」


 してないと首を振ると、クレアはため息をついた。


「……そのお金でどうするつもり?」


「ピッケル買う」


「言っとくけど、私は掘らないから」


「居てくれるだけで明るくなる」


「確かに」


 洞窟が。


 道具屋に寄った俺はピッケルを注文。


『500ヘルねー』


「足りるか」


「490……足りないね」


 マジか!


「どうするんだい」


 クレアを見ると「あるわけないでしょ」って言いたげに首を振る。


 こうなったら……。



「な、なにしてんの?」


 シンスから貰った剣を手放したらなんていわれるんだろう。


 鞘を腰から外してみる。


「それ高いから! ホウセンカでも上位に属する剣だよ!」


「しかし、ピッケル代が」


『私が払うから!』


 そう言って片方のツインテールを解くと。


 髪を纏めていた装飾品をコインに重ねた。




『これ、10ヘルにできない?』




 アイテムを見てからコクリと頷き。


「ピッケル、どうぞ」


 差し出されたピッケルを受け取った。


「いいのか?」


「剣は本当に凄い代物なんだから」


 クレアは片方のテールも解き、大きなポニーテールを作り直した。


「そうか……」



 道具屋を後にして街を出る。


 途中の魔物を切り抜いて草原を歩いた。


 不意に空を見上げると赤い影が一つ。


 ああ、美しいな。美しい――


『ドラゴン居るんだけど』


 クレアの言葉で現実に戻される。


「居るな」


「うん」


 舞い降りたドラゴンに尻尾はない。



『グオオ! グオオオ!』


 少し前に尻尾を切ったことで、お怒りのようだ!


 こうなったらアレしかない!


「ごめんなさい!」



「……えっ、なにしてんの」


「謝るんだよ、クレアも」


「は、はあ?」


 横に並んで二人でペコリと頭を下げる。


「ごめん、なさい」


『グオー』


 ドラゴンは優しく鳴くと立派な羽根を仰いで空に旅立っていく。


「……本当に許してくれるんだ」


「先制攻撃してこない時は、意思疎通する機会がある」


 今回のドラゴンは寝床に無断で立ち入ったせいで、怒らせてしまった。


 反撃として尻尾を断ち切っただけのこと。


「知らなかった」


「攻撃してこないドラゴンは多い、攻撃したから怒られるだけで」


 俺は攻撃されて気持ち良くなってから戦うタイプだったから、ドラゴンと戦う時は苦労した。


「試してみよ」


「怖いドラゴン自体は居るから気をつけてくれ」




 洞窟に入ってピッケルでカンカンする。


 鉱石を持ちすぎて置いていったピッケルは誰かに取られたようだ。


 買ってきて良かったな。



 カンカンカンカン。カンカンカンカン。



「そろそろ辞めない?」


「大丈夫だ」


 カンカンしすぎて耳がおかしくなりそうだ。


 鉱石自体は大量に出てくる。


 カンカン。


 掘り進んで帰りが遠くなる。


「正気じゃない」


「そんなこと分かってる」


 ポロポロと出てくる鉱石達をクレアが袋に詰めていく。


 カンッと振り下ろすと。


 バキッ。


 ピッケルが壊れてしまった。


「本当に壊す人、初めて見た」


「一人でしてた時は三本壊したな」


「一本しかないから帰るよね?」


「ああ」


 クレアは叩かなくていいのに、なんで帰りたがるんだろうか。


 鉱石を集めて洞窟を出た。



 街に戻ってクレアの力を借りる。


 見知らぬ商人に近づいて。


『燃やされたくなかったら、これを言い値で買い取りなさい』


「ひえっ!?」


「一つ1000ヘルでどうかしら」


「それはできませんぞ」


 小さな不死鳥が「グエエー」と自己主張する。


「分かり、ました」


 俺にもして欲しいな。


「賢いわね、ホウセンカ商店を今後もよろしく」


「狂ってる、こんなの……」


 500ヘルのピッケルが100倍以上に変わるって凄いな。



『凄いなクレア!』


「凄いのはあんたよ」


 収入をいつも通り折半。


「ほら、行くわよ」


 もうちょっと少なかったら、気持ちよかったな。


「聞いてる? ついてきて」


「あ、ああ」


 クレアについて行くと小さな店に着いた。


 美味しそうな匂いが漂ってくる。


(おご)ってあげる」


「優しいな」




『可哀想だからおごってあげるだけ!!』




 俺の状況ってそんなに悪いか?










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