座られても
咥えて手を引きながらパンをちぎると口に残った部分をもぐもぐ。
飲み込むと『にゃまーい』と呟いていた。
「良かったな!」
思った以上にルビーはパンの魅力に気づいたらしく、気がついたらなくなっていた。
「にゃーー」
なぜか俺を見て目をキラキラさせている。
「…………」
無言の圧力というのは怖いもので。
「ブランド、おかわりとかって」
「ある」
カタリと届いたパンをルビーに。
「にゃすかる!」
両手で持ちながらしっかり食べている中で、右手を伸ばしてみると。
「シャー!」
威嚇されてしまった。
「そんなにおいしいのか」
両手のパンを離さないと言わんばかりにムギュッと潰れる。
「うーー」
「取らないから安心してくれ」
二人が満足するまで待つことにすると。
特にすることもなく待っているとブランドが呟いた。
「クレア、ツケは溜まっているぞ?」
振り返るとクレアが!
『行ってないのにツケとか意味わからないんだけど』
多分、俺のせいだな。
不満そうに銀髪のテールを揺らすクレアは、俺に近づいてきた。
「……分かった、降りる」
「別にいいから」
手で抑止されて降りる動きを止める。
「あんたに座れば良いでしょ」
「そうなのか?」
「そうよ」
俺の足に座ってきたクレアは軽い。
ホウセンカのエスカレードを平然と頼んでいた。
「男の膝に座る感覚はどうだ?」
ブランドが白い飲み物と一緒に白々しく聞いてくる。
「何もしないのは知ってるから、ある意味安心できるかな」
「それは良い男だな」
「でしょ、それだけだけど」
褒められてるのか、よく分からないな。
「話を切って悪いが」
俺はクレアに聞いてみたいことがあったので、話を切らせて頂く。
「クレアはギルドで何を担っているんだ?」
聞いてみると振り向きざまに甘いエスカレードの残り香を吹いてきた。
「武器作って納品とか?」
「魔法で武器を?」
「うん」
なるほど、魔法に長けている理由が分かった。
「あんたがなくしてきた剣も私が作ったんだから」
誇らしげに言い切るとコップをカタンと置いた。
「それは、大事な剣だな」
「粗悪だから欲しいなら作ってあげる」
「俺はアレが気に入ってる」
「ひと振りを大切にしてくれるのは良いけど、それで死なれたら困るよ」
「大丈夫だ、その前にコノハが倒すに違いない」
「たしかに」
俺の膝で長めに飲んだクレア。
「あ、ごめん」
不意にエスカレードが膝に垂れる。
「……服が満足しただけだ」
「あんたは?」
「俺も喜んでいる」
「変なの」
服を汚されるのも悪くないと気づく。
クレアがもぞもぞ動き、降りてくれるのかと期待すると。
「やっぱり疲れる」
と言って俺の胸に背中を預けてきた。
『そうか!』
まだまだ、クレアの飲みは終わらないらしい!
「なんで嬉しそうなの?」




