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全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
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譲られて讓る









 クレアが持ち手を握ってくれた。


『そこまで律儀じゃなくていいから』


「どういうことだ?」


 引っ張って起こし、ドラゴンの尻尾に近づく。


「もう、触っていいから……」


 クレアに怒られそうな話をする。


「魔法道具、勝手に使った」


「いいよ、別に」


 怒ってくれなかった。


 チッと心の中で舌打ちする。


「尻尾を届けて倒したことにしよう」


「できるの?」


「嘘でも証拠があれば、真実になる」


 尻尾の断面を火の魔法で焼いて生臭さを抑え。


「装備返して」


 話を聞かなかったことにする。


「持ってるのは辛いでしょ、だから返して」


 辛くないけどな!


 本当は返したくないが、魔法道具をお返しした。


「これはどうする?」


「その荷物は、リュウキの役目だから」


「名前で呼んでくれるのか」


「今のナシ」


 睨まれながら「あんたが持つのは当たり前でしょ?」って言われたかった。


「ああ、そうしてくれ」


「なんかムカつく……」




 ドラゴンの尻尾を担いで草原を歩く。


 途中で現れた魔物はクレアが倒してくれた。


 火の魔法、土の魔法。


 魔法道具を持ったクレアは強い。


「どう?」


「凄い」


 火の魔法は不死鳥を描き、土は全てを奈落に沈める。


 無駄なことだが、無駄をできるほど魔法に()けている。


「当たり前でしょ、ホウセンカ所属なんだから」


 クレアが「マトモな褒め方もできないの」って呟く。


 気持ちが良い。


 街に戻るとすれ違った冒険者が二度見してくる。


 それもそうだ、俺達はドラゴンを倒した証拠を持っている。


「本当に倒したって言う?」


「もちろん」


 お金は少しでも多く貰いたい。


 クエストワークに入って尻尾と依頼の紙を受付に渡す。



『まあ! こんな短時間で!』



 受付の女性がわざとらしく驚き。


「倒したのですか?」


「ああ、そうだ」


「なるほど、誰が倒しました?」


 質問にクレアを指した。


「えっ?」


「ホウセンカ所属の方じゃないですか! さすがです!」


「いや、ちが」


「サービスしておきますねー」


 そのままクレアが報酬を受け取ってクエストワークを後にする。


「ちょっと、あんたはアレでいいの?」


「サービスされて良かった」


「こっちは魔法道具をあんたに渡してて何もできなかったのに……」


 渡そうとしてきたお金を半分だけ受け取る。


「もうちょっと受け取りなさいよ!」


「俺はこれが好きなんだ」


「……きもい」


 きもいは俺でもショックだったりする。



「今度は私が先導するから、ついてきて」


「分かった」


「戦うのは嫌いなのよ……」


 クレアの稼ぎ方を参考にするべく、何も言わずに追った。


 ドラゴンで得たお金で道具を買い、街を出て洞窟に。


 洞窟の中は比較的安全。


 クレアが暗い洞窟を照らす為に、シュボッと指先に炎を灯す。



『……遅れても知らないから』



「いいな、それ」


「何が?」


 一番下まで降りて、広がった穴を進む。


 行き止まりの壁に差し掛かったところで、持たされていた道具を下ろした。


「ここ、掘ってもいいかも」


 ピッケル。土を掻き出して宝を探す採掘道具。


 求めているのは鉱石全般だとクレアから聞いている。


「よいしょ……」


 カンカンと掘っていく作業。


 女の子とやるのは悪くないな!


「むりー」


「休んでくれ」


「風の魔法で空気を入れ替えるね」


 ビューっと冷めた空気が俺達の肌を拭いてくれた。



 カンカン、カンカン。



 特定の色を持った石がポロポロ。


 赤いのはケバス、魔法道具に必要なんだよな。


 青いのはメナス、これも別の魔法道具に必要。


 カランと出てきた銀色の鉱石。


 クレス、これがなきゃ武器が作れない。


 このピッケルもクレスで出来てたりする。


 カンカン。


「そろそろ休んで」


「大丈夫だ」


 カンカン。


「体壊すよ?」


「先に道具が壊れるから安心してくれ」


 振り下ろしたピッケルにクレアがスッと手を添えてきた。


「お願い、心配になるから」


「……分かった」


 こんなこと、ソランとしてた時はなかったな。


 ピッケルを譲って、その場から離れる。



「よいしょ……」


 カン、カン、カン。



 クレアが頑張ってくれたおかげで、ピッケルが壊れる前に大量の鉱石が集まった。


「腰が痛いんだけど」


「よくやったな」


「あんたは?」


「痛くない」


「おかしい……」


 クレアの火を頼りに洞窟を出る。


 自然の風を受けながら街に戻り。


 鉱石を商人に売り捌くことになった。


『売るコツって知ってる?』


「なんだ?」


 クレアが商人に交渉する。


 女ならではの力を使うのか。



『一つ300ヘルでいかがですかい、綺麗な鉱石は加工がしやすいんでね』



「お願い、もう少し」


「うーん、いくらホウセンカの方でも……」


 クレアが指先を空に向けて火の玉を浮かせ。


 腰の装飾品が赤くキラキラ。


「なんとかしないと、これ飛ばすよ? あの家に」


 火の玉が小さな不死鳥に変化し、ガーガーと鳴く。


「や、やめてくだされ、妻と娘が!」


「じゃあなんとかできるよね?」


「ひぃぃ! 600、いや800ヘルで!」


「ありがとー」


 ちょっと商人が羨ましい! いいなあー脅されて!


「どう? 凄い?」


「うらや……ああ、凄いな?」


 そんな売り方をした結果、ドラゴン討伐の数倍以上の利益に膨れ上がった。


 そりゃ稼げる。



『はい、全部あげる』



「そうか」


 お金が詰まった袋の中身を半分だけ自分の袋に注いで返す。


「半分(ゆず)ろう」


「ほとんどあんたが叩き出した鉱石よ?」


 働きと収入が反比例するほど気持ちがいい。


 なんて言えず。


「クレアがいたからこんなに売り捌けたんだ」


「うーん……」


「風の魔法がなかったら、快適に取れなかった」


 そこそこ稼げたのは事実。


 ギルドに戻ることになった。


「これでシンスに許してもらおー」


「何かしたのか」


「シンスは寝酒が好きなんだけど、そのお酒を飲んじゃって」


 それはクレアが悪い。


「荷物、返して」


 持たされていたアイテムを返すと。



 クレアはギルドのドアを開いた。











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