表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
23/200

疾風神








 風を起こしながら木刀を横に振って腰に戻したレオ。


『行くぞっ!』


 タッタッと走るレオが自身で起こした風を突き破って進んでくる。


 俺は受け止める構えを取って待った。


 至近距離で振り上げられる木刀を弾いて斬り返す。


 当たり前のように抑えられ、押し飛ばす為に競り合う。


『疾風剣にて』


 レオが一瞬で剣が届かない距離まで下がる。


 既に木刀は腰に添えられた手中に収められ。


 ずっしり腰を落としていた。



『飛べ』



 フッと横に振られた木刀が強い風を横一文字に起こす。


 高速の風に飲まれた俺は大きく飛ばされた。


 この間にレオが素早い足取りで追撃してくる。


 これが疾風ということか!


 空中で受け止めると体制が崩れ、更に押し進められる。


 不安定な暴風の中を駆けるレオが俺の背後に回った。


 木刀を防ぐ為に剣を垂直に構え。



 カンッ。


 フルスイングの一撃を押さえ込むと体が後方に引っ張られる。



 左手で腰の鞘を持ち、地面に突き刺して後退を拒否する。


 レオの追い討ちを寸前で防いだ。


 強い、強すぎる。


「この程度か、貴様」


 攻撃自体は普通なのに、風で体制を崩され。


 唐突に背後を取られて死にかける。


 レオは風すらも避けているように素早い。


「……くっ」


 手が痺れ、剣がシビレを切らして緩む。


「そのような剣を握っているからである」


「なんだと?」


 弾き飛ばし、剣を下ろして斜めに刃を向ける。


『木刀の方がイカれてるだろ!!』


 剣の赤い模様が光を放ち、ゴウゴウと火を宿らせていく。


 踏み込んで一気に切り上げる。



 水平に構えられた木刀が、真ん中から焼き落ちた。



「な、なに!」


 火が消えた剣を下ろして追撃、追撃、追撃。


 素早いレオに当たることはなかった。



『疾風は引く、そして追いつくであろう!』



 木刀を投げ捨てたレオは、とてつもない速度で草原を駆け抜けていった。


「……なんとかなったのか」


 剣を握ったまま座り込む。


 戦った後はドキドキしがちだ。



『エム、見事だ』


 カゲが俺の隣で姿を現した。



「倒せなかったぞ」


「カゲは見事だと思えた」


「そうか……」


「故に見事」


 パチパチと手を叩いて褒めてくれた。


 褒められるのも悪くないな。


「エム、先に進もう」


 カゲの細い手が伸びてくる。


「ああ」


 手を握ると引っ張り上げられ。


 剣を鞘に収めて歩く。


「エムにとって戦うとはなんだ」


「守ること、生きがい、生計」


「それはこだわりか?」


「なるべくしてなった感じだな」





 洞窟に着いて中を覗いた。


 階段の先が暗くて見えない、当たり前か。


「カゲが単独で行こう、暗所こそ任せよ」


 入ろうとするカゲの手を引っ張る。


「危ないだろ」


「火を持って歩くことは勧めれない」


 何かが居るのは間違いない、暗闇から音が聞こえるからな。


「俺も、ついていく」


「では参ろう」


 手を握って消えた俺達は、火を持たずに洞窟に足を踏み入れた。


 カツカツと慎重に降りていく。


 ただでさえ暗いのに、自分の足元が消えている。


 踏み外してしまいそうだ。


「カゲは黒の先が見える」


 二つの足音と他の音が空間に反響する。


「何が居るんだ」


「獣と魔力に憑かれた骨」



 不意に強く右側に引っぱられた。



 腰に温もった手が添えられ、微かに引き寄せられる。



「……あまり離れると、魔物にぶつかる」


「わかった」


 歩きにくいが、カゲに密着しながら歩いた。



 左側から獣の唸り声。


 右側からカゲの匂い。



「本当に大きな空間って事か?」


「そう」


「手を離したら、一斉に襲われるとか?」


「カゲは冗談を嫌う」


 先に進んでいるが、目的は進むことじゃなくて敵の排除。


「どうやって倒すんだ?」


 透明なままで剣を振ることはできても、俺は先が見えない。


「エムがついて来たせいで急所を短剣で突けない」


「……」



 俺が無能だった。



「戻ろう」


「戻らない」


 ドキドキしながら進むウォーキングコース。


 カタカタと骸骨がどこが震えている。


 この手が不意に離れたら。


 俺は一気に襲われて死ぬ。


 唐突に今の状況が怖くなった。



「カゲは、エムが思うように裏切らない」


 不安はバレていた。


「エムが嫌なら、戻らねば」


「悪いな……」


「得意不得意を理解するべき」


 その通りだった。


 苦手なことについて行っても仕方ない。


 しかし、カゲだけでこの洞窟を頼むのは不安で。




 洞窟を出た俺はカゲを見た。


「大丈夫か?」


「大丈夫だと言っている」


 女に頼むというのは慣れない、初めての試みだ。


「だめだ、安心できない」


「大丈夫だと言って……」


 俺はカゲに近づいて腰の剣を鞘ごと外す。


「これを持ってくれ、どんなことに使ってもいいからな」


「取らねば、エムは怒るか」


 嫌そうにしながら受け取ってくれた。


「通りすがりの山賊に出会ったらどう対処する? カゲはエムのことが心配で」


「大丈夫」


『ミスを犯してしまうかもしれない』


 それは大問題だな!


 とりあえず適当に拾った木の棒を腰に差しておく。


「これでいい!」


「エムの為に、頑張ってこよう」


 透明になったカゲは階段を降りていった。



 帰ってくるまで、ゆっくり過ごせるみたいだ。


 獣を見つけて肉で迎えよう。


 木と木を寄り添わせるように組み、バチバチと火を起こす。


 周りは何もいないが、根気よく偵察。


 ガサガサ。


 不意に俺の目の前にある草木が揺れた!


 木の棒を抜いて構える。


 ドンと来い!



 バサァッと勢い良く飛び出してきたのは人間だった。



 緑色の髪をもつ裸の女の子。


 よく見るとモサモサの耳が髪の上でピンと立っている。




『……にゃー!』




 なんだ、猫耳族か。


 握り拳を作って飛び掛ってくる女の子。



 俺は木の棒を腰に収めた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ