にゃあにゃあにゃあ!
二人の会話を盗み聞き。
『足腰の疲れはどうだ』
『特にはありません』
『ほう、若さはすばらしく羨ましいな』
特に喧嘩という様子はなく、姉御肌のようにコノハはタンザを撫でていた。
「若くないんですか?」
「それが若くない、お前が思ってるより私は老け込んでいる」
「まあ!」
本当に老けているのか聞いてみたくなるくらいには美人なコノハ。
「疲れてないならいい、腰周りの貧弱さを少し、憂いていた」
「展示用の武器を運ぶのは大変でしたが、それより辛いことをしていましたから!」
渾身の奴隷ジョークをコノハは笑い飛ばした。
「……なら、他の作業も手伝えるか」
「働けますよ! ルビーもいます!」
ルビーがにゃあと手を上げる。
「その猫さんは待機してもらおう、荷物はちょうど二つしかない」
「そんにゃあ……」
うるうると見つめるルビーに「すぐ戻ってくるね!」と優しく話しかけると二人でギルドを出ていってしまった。
寂しそうなルビー。
ちょっと可哀想なのでカゲに相談する。
「ルビーとお話したいな」
「ルビーは構わん」
カゲの手を離れて声をかけてみる。
『ルビー』
「にゃあ!」
俺に気づくと嬉しそうにしてくれた。
「あまり変わってないんだな」
動くものに気を惹かれてしまうのは本能らしい。
人差し指で十分、ルビーと遊ぶことができてしまった。
「にゃー」
猫耳がピコピコ左右に揺れる。
「触りたいな」
「うにゃうにゃ」
「帰るぞ」
「そんにゃあ!」
にゃあにゃあと泣くふりをしてきた。
それなりに言葉はわかってきているらしい。
「冗談だ、それよりクレアの護衛の時、どうだったんだ」
「にゃ~……にゃあ!」
ルビーは考える素振りをすると、閃いたのか閉じていた猫耳をピンと尖らせる。
「にゃにゃ、にゃにゃにゃ!」
猫語でさっぱりわからねえ!
「そ、そうなのか?」
「にゃあにゃあ」
同意するようにコクリと頷かれる。
「カゲ、助けてくれ」
「分からぬ……」
面白い話が聞けると思ったのに。ちょっと残念。
「え、偉いな!」
俺はルビーを撫でることにした!
「にゃあ~!」
高い声を出すと猫耳が左右にユラユラ。
よし、なんとか誤魔化した。
「にゃ」
ポケットをゴソゴソするルビーが取り出したのは食べかけの棒菓子。
「くれるのか?」
「にゃあ」
大きく頷くと口元に近づけてくれる。
一口では貰いきれないのでパキンと歯で折らせてもらうと、残りをルビーが咥えた。
一口しかあげるつもりはなかったらしい。
「えむ、アレを咥えたらダメだ……」
「咥える? どういうことだ?」
「な、なんでもない」
カゲは分が悪そうに話をちぎった。
よく分からないが、ポリポリと美味しそうに棒菓子を口の中に収めていくルビーに悪意はなさそうだった。




