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【七階層四区画】黒神自顕流の夏 後編

【七階層四区画】黒神自顕流の夏 後編


 黒神自顕流は、いくつかの三級ダンジョンを保持・管理している。その一つが『骨の戦場』、出現するモンスターは、スケルトン系となっており、広い平野のようなダンジョンである。


「おら!」

「くたばれ!」

「かてぇ」


 そんなダンジョンで新人三人組、鷹治、功史朗、兵助の三人は、苦戦していた。


 出現モンスターは足軽スケルトン。陣笠を被ったスケルトンで短槍や投石などで攻撃してくるのもだが、スケルトン系のモンスターは総じて、刃物などに対して耐性をもっており、三人組の武器は刀と相性最悪ともいえる状態である。


「はぁ…しょうがねぇか…次は、俺がやるから()()()()()見とけ」

「HA? どういうことだZE?」

「まぁ、直ぐにわかるよ。ここはワンサカくるタイプみたいだしな」

「はぁ? なに言って…うわぁ、本当にきた」


 20mほど離れた地面から、足軽スケルトンがもぞもぞと姿を現し空ろな眼窩をこちらへと向けてカタカタと笑い出した。


「じゃーやるから見てな<コーティング>」


 錬治は木刀を強化すると同時に地面を蹴る。


 ダッ、ダッ、ダン!!!


 三人組がその音を認識した瞬間。スケルトンの頭部が三体とも消えており、スケルトンの背後には木刀を振り下ろした錬治の姿を目にするのであった。


「スケルトンてのは、斬撃には強いけど、打撃には弱いんだよ。お前ら、刀抜かずに、鞘にひもで固定して殴れよ。そうすりゃ楽になるぞ」

「はぁ? いや、その前に何したんDAYO。あんた…」

「なにって、ちょっと走って木刀で頭を殴り飛ばしただけだ」

「オレ、音が聞こえただけだった」

「功史朗もか、マジであんた何者だよ」

「うーん、何者て言われてもな。ごく普通の高校生だな」

「「「絶対うそだ!!!」」」


 普通という概念が、揺らぎそうになりながらも、錬治のアドバイスを受けて鞘で殴り飛ばしていいくと確かに今までと比べて大分戦いやすくなった。


「ほら、こんどは投石が来てるぞ」


 錬治は後方に控えて、流れ弾の石礫を、ピッチャー返しの要領で打ち返し、スケルトンの頭を打ちぬいたりしたが、もう、誰も何も言わず、戦いに専念し、三人組は、だんだんと慣れてきたのか、何とか戦えるようになっていた。


「よし、次にいきましょう」

「そうだな」

「楽勝、DA、ZE!」


 スケルトンの骨が散らばり、三人は軽口を叩くくらいの余裕が生まれていたが、それと同時に生まれたのが油断。倒せるようになり、何度も戦闘で自信がつきレベルも上がり高揚した気持ちが、油断という落とし穴となって大きな口を開いていた。


 スケルトンは同格のゴブリンやコボルド、ウルフ、ギルマンと比べて耐久力は、低い。しかし、もっともタフなモンスターでもある。


 それは《再構築》というスキルがあり、コアを破壊されない限り何度でも復活するスキルを有しているからであり、つまり…


「カラァァァ」


 骨に紛れて、破壊されていなかったスケルトンが、鷹治へと短槍で襲いかかった。


「うわぁぁぁ」


 咄嗟の事で《念動力》が使えず、他二人も、油断していたために、間に合わないと思った瞬間。カンッと木と木がぶつかり合う音がし短槍を、木刀で弾いた錬治がいた。


「お前ら、油断しすぎだろ。残心を忘れるなよな」


 そういうと、右ハイキックで、あっさりとスケルトンの頭部を破壊した。


「な、なぁ今のって…転移系のスキル?」

「正確にいうなら【キャスリング】というアーツだがな。ほら、油断しないでいくぞ」


 少々危ない場面もありながら、三人組はなんとかボスの足軽小頭スケルトンとの戦いわ終え無事に帰還することができた。


「一つ教えて欲しんだけどよ。あんたの…()()()()のスキルてなんなんだ?」

「うーん、教えてもいいけど、人にスキルを聞くのはマナー違反だからな。俺のスキルは《チェンジリング》、取り換えるスキルだな。あぁ、そうだ兵助だっけ? 最後に、一つ、俺の取って置き見せてやるよ」

「なんで?」

「まぁ、お前のスキルなら、参考になると思うから見ておけよ。あぁ、お前らも見ておけよ」


 そういって、錬治は一抱えある太さの丸太を地面に置き、10mほど距離をとる。


「一度だけだから、よく見とけよ。【瞬閃・二式】隼斗十文字斬り」


 そうして、三人組が目にしたのは、木刀で×の字に切り裂かれた丸太の残骸だった。


「ざっと、こんなものだが、参考になったか?」


 錬治の問いかけに、ただ頷く三人を残して錬治はその場を後にした。


  ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 道場にもどった錬治は、近くにいた人に声をかけ、戻ってきたことを伝えると客間に通され、お茶を飲んでいると直ぐに統久が姿を見せた。


「やぁお帰り。どうだったかな?」

「とりあえず、無事に帰ってきましたよ。ダンジョンでは、比較的おとなしかったと思いますし」

「そうか。それはありがとう」

「いいえ、一応、報酬貰ってますからね」

「ハハハハ、そうだったね。口座には、直ぐに振り込んでおくよ」

「あぁ、それと、すみませんが、ウナギ買いませんか?」

「うなぎ? なんでかね?」

「いえ、友人たちが、池田湖ダンジョンでウナギを大量に手に入れたそうなんですが、少々量が多いらしいので買い取って貰えると助かります」

「ふむ…構わんよ。門下生たちに、振舞おうと思っていたしね」

「それは、助かります」

「近くにいる門弟に取りに行かせよう」

「ありがとうございます。では、これで失礼します」


 こうして、錬治は無事に依頼を終え、帰路へとつくのだった。

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