【七階層二区画】黒神自顕流の夏 上編
【七階層二区画】黒神自顕流の夏 上編
錬治は、数か月ぶりに黒神自顕流の道場へときていた。
「いやー、よく来てくれたね。錬治君」
「いえ、それは構いませんけど、てっきり忠常が待ち換えているとおもったんですが、統久おじさん」
「今回は、こちらの頼みで来てもらっているからね。それに、まだ運営に携わらせるには、いろいろと未熟すぎるからね」
「…一応、分家にあたる自分に、そういう話して大丈夫ですか? というか、今回は確か、門下生のダンジョンでのレベル上げの補助ということだったので、その説明だけしてもらえればいいんですけど」
「そうだったね。場所は家の所有するダンジョンの一つ『骨の戦場』スケルトンが徘徊する五階層構成の三級ダンジョンなのだが、そこで三名に付き添いを頼みたいのだが…もちんろん日当は、きちんと支払うよ」
「そういう話でしたら受けますけど、ここなら自分でなくても、いい指導員いるでしょ?」
「そうなんだがな…はぁ…ほら、家のバカ息子いるだろ?」
「えーと…」
「少し、愚痴になるけど、聞いてくれるか?」
錬治は内心、めんどくさいとは思いつつも、こういう時は、比較的常識的対応から、とりあえず聞くことにするのであった。
「いや、家も昔は細々とした道場で、私も昔は普通にサラリーマンしながら、道場経営してたんだ。それが、ダンジョンができてから門下生も増えて道場一本で、生活できるようになったのはいいんだけどね…妻が、それまでの反動なのかはっちゃけて、跡取り跡取りと息子を甘やかしてね…一応、注意はしてたんだけど、周りからもちやほやされて、それで、まぁ、ここらへんの番長みたいになってね…その影響を強く受けたのが、今回、頼みたい三人なんだよ。むろん、年長者からも苦言などをするが、反骨精神と反抗期真っただ中の彼らには、通じなくてね。年長者に鼻っ柱を折らせようとしたが、悪い意味でも負けん気が強くて…年がかなり上の人に負けても、『年上が強いのはあたりまえだろ。俺らよりも5歳は上なんだから~』という感じで、非常に困っているんだよ」
統久は、沈痛な面持ちでため息を吐く。
「やり方は、任せてもらえるならいいですけど。具体的にいうなら、とりあえず心へし折るところから始めますけど?」
「…もうこの際、それでもいいだろう。正直、他所で迷惑かけられても困るし…忠常はその辺は上手くやってるから少々多めにみているが…ちょっと彼らはやり過ぎているからね。うん、それでいいよ」
「忠常も締めといてください。とりあえず、どこまでなら大丈夫ですか?」
「あぁ、それなら回復ポーションは、いろいろあるから気にしなくても大丈夫だよ…能力的には有能だし更生して、活躍してくれればちょっとした出費は安いものだよ。ハハハハ」
「それならやりますか…」
こうして、錬治の更生指導モードが決定されたのであった。
評価や感想、ご意見など時間がありましたらどうかお願いいたします。




