【六階層管理区】池田湖ダンジョンの裏側で
【六階層管理区】池田湖ダンジョンの裏側で
バンッ!
凄い音とともに神議会モンスター研究会と書かれた扉が開き、般若顔で一人の女性が無言でツカツカと、会議室で話をしていた、男の顔を掴み、アイアンクロウをしたまま頭上を高く持ち上げた。
「さて、愚弟。なんでおねえちゃんがここに来たのかわかるわよね?」
「うぅぅんうぐ…べぇばぁん…じょだぁまん」
「はっきりしゃべりなさい。何言ってるかわからないでしょ?」
ミシッミシッ――
骨がきしむ音と、男のくぐもった声、そして女性から発せられる怒気で、室内にいた全員が硬直してしまっていたが、意を決して一人の男が声をかけた。
「あの…」
「なに?」
笑顔ではあるが、目が一切笑っていないその顔に声をかけたことを、公開しながら男は、なんとか声をだした。
「その…口を押えられては、声はだせないかと……」
「あっ………」
ばつが悪そうに、数舜止まると
「ふん!」
その掛け声とともに、地面に投げつけると床全体に亀裂が走る。男が並みの人間であったのなら死んでいるだろうが女は気にすることなく男の背に座った。
「いてぇな、くそアネキ。死ぬかと思ったぞ」
「あんたは、これくらいが丁度いいでしょ」
男はなにもなかったように、その体制のまま話を始める。
「それで、なんのようだよ」
「理由は解らない?」
「あー、いくつか思い当たる節がなくもないかな…」
「インフェルノ・グレート・モスていえばわかるわよね?」
少しの間の後に、男はいい笑顔で
「おぉ、あの特別の化生ことか。どうよアレいいできだったろ?」
「この愚弟が!」
後頭部を思いっきり殴りつける。
「なんなのよ。あのクエストは! 報酬設定とかも破格だけど、どれだけリソース使ってるのよ!」
「お、落ち着け、アネキ。アレは確かにお遊びが過ぎたけど、リソースはオレの手持ちで作った趣味化生だし。ちょうど良さげな連中がいたから、ぶつけてみたかったんだよ。ちゃんと申請もだしてただろ?」
「一級ダンジョン用のかと思って許可出してたのよ! このおバカ!」
「面白いもんが見れたし…なぁ?」
「よし、反省する気がないのね…」
女は、右手に力を集中すると、熱量が上がり、その余波だけでも部屋が灼熱の砂漠のような熱さへと変わっていく。
「ま、待て、それはマジでヤバイ、いくら俺でももたないから…マジでごめんなさい」
「私だって、リアルタイムで見たかったのよ! このバカ弟!」
「そっちかよ!」
怒りを地面をぶつけると床が蒸発した。溶解したとかではなく、蒸発したのである。
「いいもん、いいもん。お姉ちゃんだって、面白い化生作って、みんなビックリさせてやるんだから! 覚えてなさいよ! 一か月くらい引きこもってやるんだから! バーカ、バーカ」
神秘的な女性の立ち振る舞いが、なくなり急に子どもぽい口調になり、マジ泣きしながら走り去っていった。
「待て! ていうか、今の時期に引き籠るなよ! あぁぁ、ちょっ、アネキ!? おい、待てって! あぁ、くそっ、いつもの病気かよ! キレると引き籠る癖なんとかしろよ!」
「やりー、宴会ができるな」
「丁度、いい酒手仕入れてこないと」
「食事の手配とかしないとな」
「観光…じゃなくて視察にきてる方々はどうします? 宴会したの知られたらマズイとは思いますけど」
「お前ら…オレの酒を忘れるんじゃねぇぞ。じゃなくて、緊急事態なんだよ! くそっ、こんなの兄貴に知られたら滅茶苦茶、小言言われるんだぞ! めんどくせぇだよあの人!」
自業自得とはいえ、神議会では、少々の混乱が起きたが、とりあえず、宴会が終わるのは、2週間が経過したのち、引き籠っていた本人は、いい笑顔で出てきたのであった。
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