【一階層六区画】ダンジョン夏期講習・座学編
錬治の両親登場
日本ダンジョン戦記 【一階層六区画】ダンジョン夏期講習・座学編
探検者カード授与式が終われば、受験勉強が本格化する。
現在の日本でも高校進学も当たり前の状況だが様相は十年前とはかなり違う。
まず、不良と呼ばれる生徒はいるにはいるが、基本的に学校で問題を起こすことは少ない。なにせイキッてもレベルとステータスという絶対指標があるなかでは、ほぼ無意味であり教師陣のレベルも20以上が当たり前、しかも実戦で鍛えられているのだからイキッても意味がない。
さらに言うなら目的がしっかりと分かりやすい為に「学校の勉強なんて意味がない」ということがない。なにせダンジョンドリームを掴むのなら最低でも高校進学は必須なのである。反抗期でヤンチャしていても、最低限学校では大人しくしている。授業はサボる事はあるが…
そんな訳で高校進学は全員のあたりまえ。公立なら学費などは無料なのだから負担はない。親に進学先で反対されても公立ならダンジョンで稼ぎながらの修学は可能である。
三年になれば夏休みはあるが遊ぶ暇はない。というか自由参加になるが夏期講習が8月17日より1週間の日程で開催される。参加率ほぼ100%と言われる人気の<ダンジョン夏期講習>である。
錬治ももちろん参加申し込みも済ませてあるし、それに向けて夏休みの課題は7割近く終えている。後は自由研究と日々の書き取りくらいなものである。
そんなこんなの出発の朝、珍しく家族三人の朝食をとっている集合は9時に学校なので十二分に余裕のある。なにせ錬治の父の巌は、有名食品メーカーに勤務しており最近はその剣術の腕前も見込まれダンジョンでの食材調達チームの指導員なども務めており、多忙で二週間ぶりに出張から帰ってきたのは三日前。現在は長期休暇中なのだが、まだ疲れているのか少し疲労が見える。線の細めの錬治と異なり名は、体を表す。というその言葉の通りに、まさに巌。筋骨隆々としており厳ついという表現がよく似合う。
その父とは対照的なのが、母親の蘭である。儚げというか、はっきりいって容姿は幼い。巌と並んで歩くと娘と勘違いされるか下手したら通報案件にすらなる。実際過去に数度通報された事があるのだが…実際は巌よりも年上なのである。趣味は料理しかも一般的には、ゲテモノと呼ばれる食材でも美味しく調理してしまう技術がある。
ちなみに二人の馴れ初めは、アマゾンでの希少食材の調達の際に巌を見かけた蘭が一目ぼれ猛アタッタクの末に結婚したという経緯がある。本人いわく完璧な好みだったそうだ。
「じゃ、今日から1週間夏期講習に行ってくる」
「そ、そうか」
「ふふふふふ、気を付けてね。その間新婚気分を味わっているわね」
巌は十日ほどの休暇をもらっている。若干、汗が浮かんでいるが夏だから仕方のないことだろう。
「では、行ってきます」
「はい、いってらっしゃい」
玄関をでるとドアに鍵がかかる音が聞こえ、出かける前の母の目が獲物を狙う獣のような目だった気がしたが錬治は気にしないことにして学校に向かうことにした。
某県合宿所・《青年自然の家》
元々は山中にあるキャンプ施設で、近くに遊泳可能な川がある。人気のスポットではあったが三級迷宮が出現したことにより、政府が教導施設を増築し現在は半民半官の施設となっている。
日程としては、座学が初日と二日目に集中して行われるこれは基礎知識などを含めて将来の進路へと繋ぐための講座となっている。
「では、まずはクラスと呼ばれる機能が解放されるのがレベル10ということは知っていると思うがどの様な機能か詳しく説明するからな」
概要は以下のとおりである。
・クラスについて
レベル10に達すると探検者カードに機能が追加される。クラスにはクラスレベルが存在し、レベル上昇に伴いスキルが派生する。転職はいつでも可能になるがクラス固有スキルと呼ばれるスキルは転職した場合使用できなくなる。また、クラスの系統と合致するスキルにはレベルの補正がある。
また、レベル20に達した場合サブクラスと呼ばれもう一つのクラスを選択が可能になる。ただし、指揮官系のクラスは設定できない。
・指揮官系
パーティーに有効な常時発動型のスキルや育成系スキルなどが派生するクラス【指揮官】【教導官】【軍師】等が代表としてあげられる。希有なクラスで習得条件は不明
・斥候系
探査系のスキルが派生しやすいクラス、敵や罠の発見など地味ながらも難易度の高い迷宮では必須のクラスとされている【盗賊】【忍者】【罠師】【狩人】等が代表としてあげられる。感覚のステータスが高いと出現する傾向がある。
・戦士系
物理系のメインアタッカーとしての役割からタンクとして防御を担当するなど幅広くまた非常にわかりやすいので人気のクラス。実際志望者がもっとも多いクラスである【戦士】【騎士】【侍】【武闘家】などが代表としてあげられる。肉体系のステータスが高いと出現する傾向がある。
・魔法系
魔法を操ることができるクラスとして人気。通常、真理の破片がなければ魔法は覚えられないがクラススキルとして系統事の魔法が習得が可能。【魔術師】【回復師】【付与師】【属性使い】などがある。知力系のステータスが高いと出現する傾向がある。
・生産系
ドロップ率アップやアイテム作成などのスキルが派生するクラス。製薬会社や素材メーカーなどに就職を希望するならほぼ必須とよばれるクラス。アイテム作成などでもレベルアップがおきることが確認されている。【コック】【錬金術師】【裁縫師】【鍛冶師】【絵師】などが代表としてあげられる。器用系のステータスが高いと出現する傾向がある。
・その他
どの分類にも当てはまらないクラス。傾向としてはサポートしての能力が高くクラス固有スキルが使用できる。一芸特化ではあるがその一芸だけでも十二分に活躍が可能である。派生条件が不明【荷物持ち】【占い師】【商人】【学者】などが存在する。
・上位クラスと特殊クラス
クラスレベルが一定に達した場合に派生するクラスを上位クラスといいサブクラスとの組み合わせなどで派生するクラスを特殊クラスと呼ばれている。
要約してしまえばこの程度なのだが、なにせ進路にかかわる。
一般職業に就職するにしてもレベルやクラスが高いといい条件で就職することができる。さらにダンジョンに対しても特定の素材の回収などのために周回する生産者型探検者や新素材などを求めたり、バラエティー系番組に出演したり、はたまた探索をメインにする探検者などと大きく進路に関わるために非常に注力されている。ちなみにDチューバーと呼ばれ動画サイトを利用して様々な企画の動画投稿で生計を立てるものもいる。
座学の二日目も罠とモンスターに対する講義となっていた。
低階層の罠は致死性は低いがそれでも行動阻害などとなるためにある程度の注意しておく必要があるなどと説明された。
「では、次にモンスターについて説明するぞ」
モンスターについては、例えば獣・昆虫・爬虫類系のモンスターは基本的に物理攻撃が中心で、群れを形成して襲うタイプと単独で襲ってくるタイプに分かれる。群れタイプは動きが早く、単独タイプはタフネスが高い傾向がある。
人型のモンスターは武装などである程度判別が可能であるが、リーダー種がいる場合は強さがかなり違うらしい。ゴブリンですらゴブリンチーフや最上位のゴブリンキングなどがいる場合、ノーマルのゴブリンですらレベル20の探検者の脅威になるとのこと。また人型モンスターはコミュニケーション能力がなく問答無用で襲ってくる。現在、確認されているのでゴブリン、オーク、オーガ、トロール、ミノタウロス、ギルマン、ハーピー、コボルトが人型のモンスターとして出現している。
やっかいなのがアンデッド・魔法生物系、アンデッド系はデバフ効果もちや状態異常もちが多く、また物理攻撃耐性などをもつモンスターが多い、有名なアンデッド系はグール、ゾンビやスケルトン、魔法生物系はゴーレムやスライムなどが存在する。
ちなみにこれらの情報は探検者協会のホームページ上にて確認できると最後に告げられた。
そんなこんなで座学二日目は終了となった。
次回、錬治の流派が判明いたします。