【五階層十六区画】吹上浜ダンジョン その7
【五階層十六区画】吹上浜ダンジョン その7
ヴェステ・ガルムは、完全に押されていた。
一芽は、空を蹴って翔けていた。その姿は獅子。漆黒の獅子の姿は《ワービースト:モード・黒獅子》による変化であり髪の量も大きく増えている。
避けたはずなのに、なぜか吹き飛ばされているヴェステ・ガルムは混乱し、態勢を直そうとする瞬間、今度は水の礫が命中していた。いつの間にという思いも、一芽による攻撃で中断される。
「テンションアゲアゲ↑↑MAX。猛きこと獅子の如く~翔けること稲妻の如し~我が一撃は、雷鳴の轟き~【モード:金獅子】」
一芽の攻撃は更に苛烈になる。雷光を身に纏ったその姿は、まさに金色の獅子。放たれる拳も蹴りも音速を越えて生み出される衝撃波だけでもヴェステ・ガルムを圧倒していく。
「いけませんわね。わたくしもやりませんとね<ウォーター・ボール>八連…」
一瞬で八つの水球が浮かぶ。
「《ネガティブ》」
佐江が扇を振ると、八つの水球は掻き消えたかと思うとヴェステ・ガルムに命中していた。
タネを明かせば、佐江がしたのは過程の否定。命中した結果だけが残った。あまりにもでたらめで理不尽な攻撃。一芽と佐江が相手となったヴェステ・ガルムは圧倒されていた。
場面は変わって岬と美穂はヴェステ・ガルムを蹂躙をしていた。圧倒でもなく、蹂躙。
「【時騙しの舞】」
緩やかな岬の動きにヴェステ・ガルムが反応し、一瞬動きを止めた瞬間。
「……<ウォーター・ワールド>……」
大量の水に包まれたヴェステ・ガルムは動きは鈍化し
「【血気集鎧】」
漆黒の鎧に身を包んだ戦乙女の姿となった美穂は、大鎌を構える。
「【断罪ノ断首刀】」
大鎌は更に巨大化し遠心力を増しながら足首を切り落とす。
「【血鎖ノ斬劇】」
赤黒い鎖がヴェステ・ガルムを縛り付け鎖は刃となって這いまわり、体表をズタズタに切り裂いていく。
ヴェステ・ガルムにとって美穂はまさに天敵といっていいレベルで相性が悪い。さらに、岬の存在がどうしても動きをワンテンポ遅らせるために隙の多い大技も簡単に受けてしまう。じりじりと追い詰められながら打開策を求めるヴェステ・ガルムに、一芽によって吹き飛ばされた別のヴェステ・ガルムに巻き込まれて、充希たちが戦っているヴェステ・ガルムに激突する。しかし、ヴェステ・ガルムはチャンスと《融合》を開始するも…
「今です! 美穂さん、一芽さん」
それは、ぼたんの計算通り
「OK~じゃーいくよ↑↑【ウルフヘッド】【ペアアーム】【フォックスレッグ】【キメラスタイル:雹獣銀牙】」
「了……血の雨は流れて川となりけり…川は血の大河とその姿をかえん」
「静寂なる白銀世界~全て白へといざなうその力と~我と力をあわせれば~」
二人は同時に詠唱を開始する。ヴェステ・ガルムも融合を始めるがダメージ量が多く融合に手間取る。
「……顕現するは今世の地獄……【血河衆合】」
「敵を討たん【青蓮満開】」
融合中のヴェステ・ガルムの足元から血でできた木が生え刃の幹が全身を貫いた血の大木は凍り始めて青白い蓮の花を満開にしながらあたりを白く染めていく。その光景はあまりにも恐ろしいほどに美しく幻想的であったと後に語られることになる。
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