表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/293

【五階層五区画】情報系ギルド『オモイカネ』

【五階層五区画】情報系ギルド『オモイカネ』


 ギルドとクラン。これは意外と混同されやすい。一般人に聞いても返答は規模が違うくらいしか上がらない。法的な違いの区分とするならギルドは従業員10名以上で代表取締役が存在する株式会社であり、クランはあくまでも個人事業主であるために代表取締役は存在しない。もちろん代表者はいるがその場合はクランリーダーかリーダーと呼ばれる。


 また、業務内容につてい説明するなら、多くのギルドの共通点としては斡旋した仕事に関する事務作業をクランの代わりに代行し、討伐系ギルドは三級ダンジョンを間引く仕事をメインに斡旋するギルドである。ダンジョンは長期間、半年から一年ほど放置するとモンスターがダンジョンから溢れだす災害『モンスターパレード』を引き起こすため定期的に数を減らさなければならない。他には、場所が住宅街やへき地にあるダンジョンのダンジョンコアを破壊するダンジョンブレイクの斡旋、採取作業時のモンスターからの護衛などの斡旋なども討伐系ギルドの業務となっており、それらに加盟しているクランは戦闘能力を中心でありそういったクランは戦闘系クランと呼称される。採取系ギルドは、個人から企業までダンジョンからの特定のアイテムを入手する仕事を斡旋しているギルドでそれらを請け負うクランを探査クランと呼ばれている。


 業種的には人材派遣会社といっていいギルドではあるが、情報系ギルドだけは少々、毛色が異なる。ダンジョン系の情報を扱うギルドというのは間違いはないが、明確な基準に基づき情報を査定し裏打ちした情報を管理・取引するのが情報ギルドではある。そして、日本で一番最初に、そして現在の最大級の情報ギルドが、ここ『オモイカネ』である。


 情報ギルド『オモイカネ』の業務は忙しい。大手という事もあり知名度も高い為に集まる情報も求められる情報も多岐に及ぶ。


 例えば3級ダンジョンを発見したという情報があるとすれば、場所の情報、報告者の情報、生息するモンスターの情報、深度、マップ、ドロップ品、モンスターの遭遇率これだけの情報と最低限でもここまでの確認をしなければならない。他にもモンスターの特徴や特性、攻撃手段などの情報も買い取り対象だし、スキル・魔法の検証動画、アイテムの有用性なども買い取りをしている。これらの情報は一般人でも買うことができる。


 更に本人が売る場合に限り個人情報も買い取っている。これらの情報は企業やギルドが緊急の事態の人員確保などに活用される。またクランがどのような仕事を受けるか、どのような仕事が発注されたかそういった情報すらも買い取りの対象にできるのは大手情報ギルドの強みといえる。


「倉敷局長、ご報告したいことが…」

「あらなにかしら?」


 倉敷 簪、29歳独身。情報ギルド『オモイカネ』立ち上げ時のメンバーの一人であり、現在は支局長の立場にいる才媛である。


「実はクラン『ヴァルチャーロブ』から情報料の値切りと買い取りの価格の上乗せの交渉がありまして」

「それで?」

「現場判断ではできないと断ったのですがその…」

「そう、判ったわ。今後の取引はしないと伝えておきます」

「よろしいのですか?」

「もともと、インテリ崩れとハングレが手を組んでできたクランだから問題ないわ。どうせ恐喝じみた交渉をしてきたんでしょ」

「はい…その通りです。けど、よろしいのですか? 逆恨みでもされたら…」

「あの手の連中は確かに面子が潰された! とか難癖つけてくるだろうけど問題ないわ。実力行使にでてくれたほうが潰しやすいし、なにより情報屋から値切るなんて論外ね。先は見えない所は早めに縁を切るに限るわ」

「判りました」

「いい? 情報を値切るような組織とは付き合わないというのは結成時からのルールなの。私たちが得ている情報もお金も等しく等価の重さなの。だからギルド名は『重い金』なのよ。あとの処理は私のほうで手配するからあなたは通常業務に戻りなさい」

「はい、局長」


 部下に業務に戻るように指示をだすと一冊のファイルを手に取り目を通して内容を確認する。


「恐喝騒ぎに、恫喝に狩場の独占…やりたい放題ね…普通にやれば稼げるのに…まぁいいわ。それにしても、おバカさんよね。情報ギルドを敵に回すような立ち回りをするなんてね」


 友好的なギルドに事の経緯を簡潔にまとめてメールで送信する。彼女がしたのはそれだけの事ではあったが、数か月後、クラン『ヴァルチャーロブ』が解散したという記事が地方紙の片隅に書かれ元メンバーがその後どうなったのかは誰も知らない。

ご意見・ご感想があればお聞かせください。


情報は大事です。知らないと困ることはあっても知っていて損することは、ほぼないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ