【四階層十区画】金山蔵ダンジョン 六
【四階層十区画】金山蔵ダンジョン 六
金山蔵ダンジョン十五階層、そこの光景に豪胆な光太郎すらも、唖然としていた。
なぜなら、そこに広がっていたのはあまりにも場違いであった。
「えっと、なにコレ…」
「ケケケ、そうだな、秘密基地?」
「俺は好きだな」
「……滾る…イイ…実にイイ…」
よくわからない、むき出しの歯車などが岩の中で回転しどこからか蒸気の噴き出す音も聞こえる。まるで、スチームパンクような世界観を醸し出していた。ちなみに、源治は、この手のデザインは好みである。
「こんな情報なかったよな?」
「アハハハ…うん…て、ことは…」
美千代は苦笑いを浮かべると
『エマージェンシー! エマージェンシー! 侵入者! 侵入者!』
サイレンと共に赤いランプが光、機械的な音声が鳴り響き、それと共に地面に巨大な鉄の扉が現れると、スライドして扉が開き、まるで、八〇年代ロボットアニメのような音楽が鳴り響く。
「ケケケケ、なんだこのド派手な登場」
「……素晴らしいな」
そして、地下から床がせりあがり、現れたのは、腕をX字にして装飾が多い黒いロボット…もとい、ゴーレムが姿を現した。
「美千代わかるか?」
「ちょっとまってね。《博識》」
その鑑定結果は…
ユニークボス:スチールゴーレム『カイナックス』
アダマンタイトでコーティングされた複合合金のゴーレム。身長4メートル、重量2トン。
「えっと…やっぱりユニークボスだね」
美千代がそういうと、錬治と光太郎はそれぞれの武器を構えており、源治もチェーンハンマー――鎖付きの鉄球――を構えていた。
そして、向こうも同じだったらしく右腕腕を突き出し拳を握っていた。
『ロケットパーンチ』
機械合成のような声と共に文字通り右こぶしが錬治達めがけて発射された。
「あ、あぶない! 【ソフトボックス】」
アーツ【ソフトボックス】柔軟性に富んだ、その箱は並みの攻撃なら衝撃を吸収する。それどころか弾き返してしまう特性すらある、攻防一体の防御スキルといってもいい。むろん、制限はあるがそれでも防御に対する美千代の信頼は厚い。
(防いだ! このアーツなら防げる)
そう思った次の瞬間、バチーンという音とともにソフトボックスが破裂した。
「うそっ!?」
なんとか軌道は変えられたが、それでも防げなかったという事実に美千代は驚きを隠せない。しかし、攻撃後の隙を逃す事なく、錬治達三人は攻撃を繰り出す。
「…【ブレスト・キャノン】」
「【ライジング・サンシャイン】」
「【瞬閃・一式】隼斗」
エネルギーの奔流と、高熱の閃光、斬鉄の剣閃がカイナックスを襲うも微動だにせず、その表面に僅かな傷をつけた程度だった。
「ちっ、斬れなかったか」
「いやいや、錬治君。君おかしいからね。普通にアダマンタイトに鉄製の刀で傷つけるとか、アダマンタイトてダイヤモンド並みに硬いのに剛性も高い魔法金属だからね?」
「少し刃こぼれしてるが…源治、光太郎いけるか?」
「ケケケケ、ちぃーと気合いれねぇとなぁ」
「……問題ない」
光太郎は駆け出し大斧で斬りつける。普通なら斬れるはずはない。
「ケケケ、斬れないなんてフェアじゃねぇな」
スキル《アンフェア》その本質というか、スキル効果を光太郎は詳しく話したことはない。なので、よくしらない人からは単純な身体能力の強化と思われがちだが、その程度のスキルがユニークスキルはずもない。スキル《アンフェア》の本質というのは、公平性の押し付けにある。数が多いのは不公平。レベルが高いのは不公平。相手の利点全てを不公平と捉え、強制的に公平にする理不尽なスキルが《アンフェア》なのである。もちろん、リスクはある。《アンフェア》は常時発動型のパッシブスキルと呼ばれるタイプのスキルである。その為、OFFにはできない事がリスクになる事がある。それは、相手が自分よりも全てにおいて劣っている場合、逆に相手の強さまで、引き下げられるのである。スキル《アンフェア》とは強者も弱者も関係なく互角の戦いを強要する不公平なスキルなのである。
つまるところ…
ガギィィン
金属同士が擦れ合う嫌な音ともに片足に深い傷を刻む。だが、痛覚を持たないゴーレムは気にすることなく、光太郎を殴り飛ばし壁に叩きつけられ地面に倒れた。
(ぐっ、ガードしたけど片手にヒビがはいったか…ケケケ、いいねぇ。勝負は互角じゃなきゃ面白くない)
生命力も2割近く減少したが、これは《アンフェア》が発動している光太郎だからこの程度に済んでいる。普通なら重症で動けなくなってもおかしくない。それほどの攻撃なのである。
吹き飛ばされた光太郎を源治も錬治も気にはしていたが、立ち上がる姿が見えたのでゴーレムに意識を集中する。
源治は、果敢に懐に潜り込みながら関節部にパイルバンカーを撃ち込んでいく。杭の材料はそこらへんにある岩を材料にしているために硬度は高くない。スキル《カスタマイズ》は鉱物を自身の武装とするスキルであり通常は【ガレージ】というアーツによって格納されておりそれをほぼ使い捨て感覚で使用している。
(硬いな……手持ちも少ないが…)
カイナックスは徐々にダメージが蓄積していき動きがどんどん乱雑になり、さらに隙が生まれ源治は、次々に杭を撃ち込んでいき、錬治も関節部に攻撃を当てていく。
その乱雑な動きが突然ピタリと止まり、カイナックスはだらりと腕を下ろし、一瞬、倒したかと思ったが…
『敵戦力ヲ確認…脅威れべるヲ最大…リミッター解除……』
その音声の後、カイナックスの上半身から蒸気が噴き出し装甲が剥がれ落ち炎とコアが露出した。
『リミットオフ…モード:バーニン』
腕をガンガン打ちならすと腕部が紅蓮の炎で包まれ黒かったカイナックスは
『バーニング・カイナックス、ココニ、爆誕!』
ポージングを決めると、仕切り直しという感じに距離をとる。
バーニング・カイナックスの動きは打って変わって軽快で、アウトボクサーのようにステップを踏む。
「ケケケ、弱点が露出したなら戦いやすいじゃねぇか」
「……大丈夫なのか?」
「腕は動くが肋骨が数本イカれたかな?」
「そうか…」
そういいながら斧をどっしりと構える。
『バーニング・ロケットパーンチ!』
その二人めがけて燃える拳を文字通り飛ばすカイナックス。二人とも左右に飛びのきよけようとするが光太郎は肋骨の痛みでワンテンポ動きが遅れ直撃するかとおもった瞬間…
「《チェンジリング》」
錬治が自分と入れ替り、迫りくる炎の拳に迎え撃つべく刀を構え
「【瞬閃・二式】隼斗十文字斬り!」
炎と突風がぶつかり合いその衝撃だけでもかなりのものだった。その激突に紛れてピキッという音を錬治だけが聞こえたが、そのことを考えずに刀を振り切り拳を弾き飛ばした、
「美千代!」
「お任せ! 【ジャマーボックス】」
黒い箱が飛び回り元の位置に戻ろうとする腕を妨害し、カイナックスの動きも阻害する。
「……動きを封じる<柱の迷宮>」
高さのバラバラな柱が乱立しさらに動きを阻害する。
「……とっておきを使う≪カスタマイズ≫【ドリル】【ロケット】【ロケット】【ロケット】【パイルバンカー】≪フュージョン・カスタマイズ≫【ロケットドリルバンカー】
≪フュージョン・カスタマイズ≫はカスタマイズにより作り出した武装を一まとめに合成するスキル。合成するための武装を予め用意しておくことや、武装を一気に消費してしまう燃費の悪さ、そして一日に一回しか使用できない事から、今まで控えていたとっておきから放たれたドリルは3つ分のロケットの推進力も得て急加速しコアへと発射される。
カイナックスは叩き落そうと残った片腕を振り回すが…
ガコン…
という音とともにロケットが二つハズレると更に加速しすり抜けて飛ぶが加速によるブレでコアに直撃することなく四分の一ほど削り壁へと激突した。
「光太郎、送るから決めろよ」
「ケケケ、借りはもちろん返すさ」
錬治は駆ける。手に持った愛刀との付き合いは一年ほどであったが愛着はある。だからこそ最期に自分が繰り出すことを覚悟する。
コアに損傷を受けて動きが混乱するカイナックス。その破損しためがけて“道”を作り駆ける錬治
「いくぜ相棒…今までありがとうな【瞬閃・三式】閃隼」
最大加速による最速の突き。それが【瞬閃・三式】閃隼である。その突きがカイナックスのコアに突き刺さり半分ほどのところで砕け折れた。度重なる激戦で限界を超えていた。むしろ、ただの鉄の刀がここまで持っていたことは驚嘆に値するだろう。
「あぁ…くそ、やっぱりか…しかたねぇ。光太郎…決めろよ《チェンジリング》」
光太郎と自分の位置を入れ替えると、既に構えていた光太郎は
「任せな、こいつはお返しだぜ。くらいな【レイジング・カウンター】」
斧を横一閃に振り切る。アーツ【レイジング・カウンター】自身の受けたダメージを自分の攻撃力に上乗せして相手に叩きつけるアーツであり、その一撃を受けたカイナックスは壁まで吹き飛び激突すると同時にコアが砕けてその機能を停止した。
「ケケケ、借りはかえした…ぜ…」
満足そうにそういうと光太郎は倒れこみ意識を手放すのだった。
ご意見・ご感想があればお聞かせください。
ボス戦が一番書いてて楽しいです。




